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沖縄県・竹富島

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小さくて、近いから、なんだかんだといろいろあるけれど、
なんだかんだ言っても、みんなが大事。

じゅうの人が島じゅうの人のことを知っている。ひとり子どもが誕生すれば、島じゅうでその子を見守り育てていく。死ぬまで誰もひとりぼっちにはならない。どこの誰がいつ何をしたとかしないとか、みんながみんなのことをだいたい分かっている。老いていく人、育っていく人、出て行こうとする人、外から入ってきた人、ややこしい人、慎重な人、無鉄砲な人、一生懸命な人、やさしい人、弱い人、強い人、分からずやの人、器用な人、要領の悪い人……。350人の中に、たぶん全部の種類の人間がいる。小さいから近い。少ないから見えやすい。面倒なこともいっぱいありそうだけど、みんながみんなを無視しない。ひとりぼっちにならなくて済む。忘れられてしまうようなことがない。ひとりひとりの人生を、みんなが知っているということ。

そこに、2012年に入って“内地”からある家族が移住してきた。「星のや 竹富島」の総支配人、澤田裕一さん一家だ。若い夫婦と、小学2年生と4歳の男の子。さらに、もうすぐ3人目の子も生まれる予定だ。家族そろっての移住を、島人たちは歓迎した。高齢者だけでなく、若い人だけでなく、子どもがたくさん増えてこそ、島は発展していくと考えられているからだ。

沖縄の人は、内地(本州・四国・九州)出身者を“ナイチャー”と呼ぶ。この島でも例外でないが、観光が主たる産業になってからは、島外から転入し、定住するナイチャーが増えている。いわゆるIターンだ。一方で、進学や就職のために島を離れていた島出身者が、内地出身のお嫁さんを連れてUターンしてくることも多い。小さな島でも中にいる人の物語はそれぞれで、ひとりひとり抱えているものがありながら、おそらくただひとつ同じなのは、この島で生きていくということが、その人にとっていったい何を意味するのかが、とても強く意識されていることである。島にしばらくいると、その意味がなんとなく分かってくる。