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特別編 未来を創る世界の現場
「チリ・パタゴニア」編 Part4
日本の優れた技術を
パタゴニアでも。

KAI presents EARTH RADIO
vol.040 StoryJ-04

posted:2013.3.1  from:チリ・パタゴニア  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影(メイン・本文内・プロフィール):Suzu(fresco)

パタゴニアと日本の架け橋となって、地球規模で発信。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。

中渓宏一さんが現在住んでいるのは借家で、
この裏に2ヘクタールの土地を購入した。
その北向きの斜面(チリは南半球なので、日本でいえば南向き)に
マイホームを建てようとしている。

まずは敷地を囲う柵が必要だ。牛が入らないようにしなくてはならない。
パタゴニアの男の結婚の条件というのが
「柵が作れて、家が建てられること」というから、
柵づくりはパタゴニアンにとってこなれたこと。
このエリアは、リアルカウボーイが残っている土地としても知られており、
牛をコントロールするのは、男の重要な仕事なのだ。

家はアースバックハウスを予定している。
ポール・コールマンさんのアースバックハウスの建設を手伝ったとき、
土を掘ることの気持ちよさを感じていた。
土を掘ることも、木を植えて歩くという根源的な活動と似ていて、
「自分のなかで何かが変わっていく感覚」があり、
それがモチベーションとなっている。
そこに土地があって、自分の手で土を掘って、
袋に詰めて積み上げていけば、家ができる。
その作業自体は何も特別なことはない。
「僕も、日本でマイホームを建てるのは、
難しいことだし別世界だと思っていたけど、
アースバックハウスなら誰でもできる」
そしてこれができるようになれば、またひとつ「自由」になれる。
「だからやってみたい」

ただ快適なハウスが出来あがればいいというものではなく、
つくれるようになること、そしてその過程にこそ意味がある。
自分の手作業でできるシンプルなアースバックハウスだからこそ意味があり、
そこからのリターンが必ずある。
日本にいては、得ることは難しい実感かもしれない。

五右衛門風呂と薪とろうそく。そんなライフスタイル。

朝起きると、まずは100mほど坂を下った場所にある川に、
1日分の飲み水を汲みに行く。約40リットル。
そして薪に火をつけ、お湯をわかし、朝食の準備。

1日のうち、3〜4割の時間は、薪割りをしている。
森に入って倒木をチェーンソーで切り出し、持ち帰った木を斧で割る。暖房や調理など、エネルギーの多くを薪から得ているからだ。
あとは家づくり、柵づくりをする。

その間、4歳と2歳のふたりの息子たちは、大自然のなかを飛び回る。
家の中と外の区別がまったくない。どこでも裸足。
まちに出るとき、お母さんの亜衣さんから
「危ないから靴をはきなさい」と注意されているのが印象的だった。
中渓家にとって、まちに出るときが靴を履くとき。
ふだん裸足で生活していたら、きっと靴が気持ち悪いことだろう。

薪オーブンで、亜衣さんがパンを焼いてくれた。

小さな畑には、葉物からじゃがいも、人参、ズッキーニなどを植えている。
肥料は事欠かない、牛フンだ。
しかし、一度、牛に柵を倒されて、すべて食べられてしまったことも。
「柵をつくれるのがいい男」という結婚条件、あながち嘘じゃない。

お風呂は中渓さんお手製ドラム缶風呂。もちろん薪で沸かす。
川沿いにこしらえた五右衛門風呂は、大自然という最高のロケーションで、
今まで入ったどの露天風呂よりもナイスビューだった。
「風呂から出て、すぐドボンと川に入るまでがワンセット」と
中渓さんはいうが、川の水はあまりにも冷たい。
それでもガッツを出して川に入ってみると、
じんわりと身体が内側から温まってくるので不思議だ。

伊勢谷友介も納得の気持ち良さ、最高の景色で入るドラム缶風呂。

電気もないので、夜はろうそく生活。
太陽光パネルもあり、おもにパソコンの電力として使用している。
夜に、映画を観るのが、家族団らんの時間だ。

太陽光パネルは一番日が当たる場所に設置。

こうして、与えられたライフラインはなくても、
自然にあるもので、十分生活ができている。
何かあれば、下山できない状況も考えられる。
日本の中山間地でも、道路が1本しかないため、
がけ崩れなどでそこが封鎖されてしまう事態に備えて、
エネルギー自給は急務だ。
「何かあっても、しばらくは生活ができるという安心感があります。
だから住めているんです」と中渓さんも、土地の強さを強調する。
逆に、そのような土地を探しだすことが重要なのかもしれない。

中渓家の建設予定地に、中渓宏一さんと伊勢谷友介さんで、最初の“ワンスコップ”を入れる。新しい夢がはじまる第一歩。

将来的には、この場所に「サステナブルライフセンターをつくりたい」という。
サステナブルな知恵や商品をモニターする場所だ。
取材陣が日本から持ち込んだ発電鍋がある。
これは、調理している最中の熱を電気に変換してくれるもの。
この鍋は見事に携帯音楽プレイヤーから音楽を鳴らしてくれた。
日本ではキャンプ以外にマーケットがあるとは思えないが、
世界を見渡せば、便利に思う土地がたくさんある。
中渓家でもすごく“使える”逸品だ。
このような日本の企業が開発した商品を実際に使ってモニターし、
素晴らしさを伝えていく。
「それはチリのひとのためにもなるし、そういった貢献をしたい」と意義を語る。
他にも小水力発電や、建築など、
日本の技術をデベロップして、提供していく。
そうすることで日本とチリの掛け橋となることが、
これからの中渓さんの役割となるだろう。
日本の優れた技術を、その土地に合わせていく知恵の交換。
それは日本から世界の裏側へ、そしてまた裏側の日本へと戻ってくる。
世界規模の知恵の交換を、中渓さんが可能にしてくれる。

薪を使ったオーブンでの料理も手慣れたもの。

profile

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KOICHI NAKATANI
中渓宏一

1971年シアトル生まれの鎌倉育ち。「地球上のどこにいても生きて行ける人間になりたい」と、6年間勤めていた三菱商事を辞め、転職後に世界放浪の旅に出る。途上、南アフリカのラスラーズバレーにてアースウォーカーことポール・コールマン氏に出会い、師事。以降「地球を歩いて木を植える男」となって、旅を続ける。

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