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特別編 未来を創る世界の現場
「チリ・パタゴニア」編 Part1
日本のローカル、海外のローカル。
未来志向への一致を探しに。

KAI presents EARTH RADIO
vol.037 StoryJ-01

posted:2013.2.8  from:チリ・パタゴニア  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

シャベル1本、ポール・コールマンの人生哲学。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
これまで日本のさまざまな“未来へつながる現場”をめぐってきたが、
今月は海外特別編のチリ・パタゴニアへ。
都市生活と、周縁的な場所での暮らしや思考、
地球の未来を意識したライフスタイルや活動
社会のシステムやコミュニティとの関わり方に、
どのような共通点や相違や意識の違いがあるのかを、
解き明かす旅となりそう。
伊勢谷友介、アースラジオ&コロカルスタッフ5名のスタッフは
成田→ミネアポリス(アメリカ)→アトランタ(アメリカ)
→サンティアゴ(チリの首都)→バルマセダ(パタゴニア)と空を渡った。

世界中に木を植えて歩いた男、
アースウォーカーことポール・コールマンさんは、
現在パタゴニア地方に居を構えている。
チリの首都サンティアゴから国内線で3時間ほど飛んだバルマセダ空港から、
車で7時間ほど走るとラフンタという村に到着する。
その中心地から徒歩で20分ほど離れた丘の上に、
奥さんの菊池木乃実さんとともに手作りハウスに住んでいる。

ラフンタという村の風景

雪山と豊かな緑が同居している風景。

39か国、5万キロを歩き、100万本以上の木を植えてきた。
元気の「元」という漢字が描かれた
ハチマキ(木乃実さんお手製)がチャームポイント。
世界中の素晴らしい場所を知っているはずのポールさんが、
ここを住居と定めたのは、
やはり「水、空気、森がとにかくきれい」だから。
その言葉の通り、ポールさんの家がある丘の上から見渡すと、
濃い緑、透き通った川、岩山と雪山が、
青空のもと、ひとつの視界にまとまって入ってくる。
すべてが揃っていて、絵に描いたように完璧。
この景色を見たら、たしかに納得してしまう。
「ここなら自分たちなりの持続可能な暮らしができると思った」という。

また「パタゴニアで土地を探していたけど、ラフンタは一番ひとがオープンだった」
というのは木乃実さん。
最初は地元のひとに“観光をやるのか? キャビンを経営するのか?”と
問われたが、「畑をつくって住む」と答えると、
“そういうひとが増えるのはうれしい。家族が増えた!”と喜ばれた。

ここでの暮らしはシンプルそのもの。
0.7ヘクタールの広い敷地に家やビニールハウス、畑があり、
まだまだ増殖を続けている。ゲストハウスも建設中。
毎日、農作業し、あらたに敷地を整備していく。
それらはポールさんいわく
「ひとから見たら仕事かもしれないが、
私たちは、ただ動き回って楽しんでいるだけ(笑)」。
家事ともいえるし、ものづくりともいえる。
「つくりたいものがエンドレスにある」のだ。

ポールさんの家へ丘をのぼる伊勢谷さんと中渓宏一さん

ポールさんの家へ丘をのぼる伊勢谷さんと中渓宏一さん(Part3、Part4のインタビューに登場)。

エイリアン的視点で社会を外から見つめる。

彼は何年もシャベル1本で世界中の土を掘り、木を植えてきた。
だからこそ彼の哲学は、ずっと使い続けたシャベルに象徴されている。
人生をサバイブしていくには
「まず自分のシャベルを持つ」ことから始まるという。
「いい土地を探してシャベルで掘り始めよう。
シャベルがあれば、畑をつくれるし、家を建てることもできる。
そして自分の人生をつくることもできる。
シャベルを土に入れて立ち止まって考えてみることも大切だ」
とポールさんは哲学的に語るが、ベースとなる土いじりから始めることは、
プラクティカルな意味でも、まさに実践の第一歩であり、
日々の労働のかたちを表す言葉でもある。

マイ・シャベルをもつポールさん

マイ・シャベルが一番大切。

だから“余計なこと”は必要なくなってくる。
「ただここにいて、毎日の生活をしていくだけで、
楽しくて、他に何もいらない」ということがわかった。
仕事や政治システムなど、
みんなが当たり前に必要と思っていることが本当はいらなくて、
「それとは全然関係ないところで生きていける」ということがわかった。
「社会の歯車のひとつとなっている限りは何も変わらない。
そこから離れて自然のなかで自分の生活をつくり、
地球とつながりを持ち始めると、
自分の目の前に見えてくる現実を自分で変えることができる」という
距離感を大事にしている。

ポール家の自給率は高いが、
もちろん村のひととコミュニケーションはあるし、
必要なものは村で買っている。
それでも、社会システムから一歩踏み出す勇気がなければ、
何も始まらないということを教えてくれる。

いまあるシステムを使わないということは、
“やみくもに社会から逸脱せよ”という教えではなく、
結果的にそれが
「個人個人の強さや考え方、生き方などに返ってくる」という意味だ。
「自分が取るに足らない人間だ、
何者にもなれない人間だと思っているひとが多い。
だから自分を見つめる時間をつくらないのではないか。
でもそんなことはないとわかってほしい」とポールさんは力を込める。

丸太を渡しただけのプリミティブな橋

丸太を渡しただけのプリミティブな橋を渡ってポールさんがあらたに購入した土地へ向かう。

もっと広い視野で見れば、既存のシステム以外にも何かあるはずだ。
そういう視点のもと、より良いものを探すことから始めてみる。
「まずは地球や自然に対して、視野を広げていくことから始めるべきだ。
私たちは“人類である”ということを、
一旦横に置くことができなくなってしまった。
本当は私たちも地球の一部、自然の一部なのであって、
対地球、対自然という考え方は間違えている」

まずはシャベルを手に取って、自分の足下を掘り起こす。
ある意味“前近代的”な労働のかたちが、現代に与える示唆や影響というものは、
あながち小さくないのかもしれない。

ポール・コールマンさんの新しい土地

「ここからがうちの新しい土地です!」ポール・コールマンさんと木之実さんがウエルカム。

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PAUL COLEMAN 
ポール・コールマン

1954年、イギリス、マンチェスター生まれ。作家、ジャーナリスト、講演者。日本人の妻(菊池木乃実)とチリのパタゴニアにあるラフンタ村に住み、とてもユニークな「土と草の家」を作っている。これまでに、5万キロ、世界39か国を歩いて、木を植えてきた環境活動家でもあり、「アースウォーカー」としても知られている。1994年から、国連ピース・メッセンジャー・イニシアチブ「カルチャー・オブ・ピース」の大使も務める。おとぎ話を書くことをこよなく愛し、おとぎ話を現実にすることも得意。

関連書籍:「木を植える男 ポール・コールマン」菊池木乃実著(角川書店)、「感動ストーリーズ 第10巻 終わりなき夢」(学習研究社)、「地球を歩き、木を植える人 ポール・コールマン」(グルムコ社・韓国語訳のみ)

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