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未来を創るニッポンの現場
「高知 梼原・土佐山」編 Part4
ひととひとが出会うところは、
すべて学びの場。

KAI presents EARTH RADIO
vol.036 StoryI-04

posted:2013.2.1  from:高知県高知市土佐山桑尾  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

自然に抗わない、ホクレアの航海と土佐山での生き方。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
高知編の最終回は、
土佐山アカデミーのディレクターである内野加奈子さんに話を伺った。
内野加奈子さんは、土佐山アカデミーに参加する前は、
伝統航海カヌー“ホクレア”の日本人初のクルーだった。

ホクレアとは、動力をまったく使わずに航海するカヌーで、
1975年に建造された。
海図も方位磁石もない時代に、
ハワイにどうやって最初の人類がたどりついたのか、実証したカヌーだ。
星や波、風、海鳥などを頼りに、
地平線の向こうの見えない島を見いだしていく。

2007年、このホクレアが、
ハワイから日本へと向けた航海に旅立つことになり、
そのクルーとして内野さんが参加することになった。
計5か月かけて、ハワイから日本への航海に成功。
このときの経験は、内野さんの人生観に大きく影響を与えている。

「相手にしているのが大自然なので、戦おうとしても負けるしかない。
だからいかに自然のリズムやパターンに寄り添うか。
例えば、舵も力任せにやらなければいけないときは、
何か間違えたことをしているとき。
帆をギュウギュウに絞めているときも、
同じく間違えたことをしてしまっている。
戦わずに適切なかたちに直していけば、女性の力でも十分できる」
という自然に抗わない姿勢とやり方を、実体験として感じ取り、
「変えられるものと、変えられないもの」を学んだ。
風の向きは変えられないが、帆の向きは変えられる。
ただ自然に任せて漂流するのでもないし、自然と戦うのでもない。

土佐山の里山風景

土佐山のひとは、里山ではなく山に住んでいるという意識を持っている。林さんいわく「自然に飛び込んで住んでいる」。

ホクレアの航海方法のひとつとして、
星がのぼってくる位置と順序から方角などを導き出す
スターナビゲーションが有名だ。
例えばオリオン座の中央の三ツ星は、真東からのぼって真西に沈む。
このようなパターンをいくつも覚えていて、天体の全体図が頭に入っている。
ポイントとなる星が見えれば、他の星の位置を知ることもできるのだ。

しかし星は天気が悪いと見えないし、当然夜間しか見ることができない。
だから海をわたる鳥の習性や風の方向、
波のうねりなどを基準にすることのほうが多いという。
波や風は、スターナビゲーションのように体系化できるものではない。
これはやはり経験値。
ホクレアの航海士であるナイノア・トンプソンを見て、
内野さんは「人間はここまで自然を理解する力を持っていたのか」と
感動したと言う。
「私たちがいま拠点としている土佐山のような場所を見て、
“何もない”と言うひともいるかもしれません。
でも、自然はすべてを持っているんです。
私たちがそれを見い出す力や、つなげる力を
眠らせてしまっているだけだと思うんです」

スターナビゲーションを図で解説中

スターナビゲーションについて図に描いてていねいに説明してくれた。地球という大きなコンパスの中央に自分がいるというイメージ。

自分を生かしてくれているものは何か。

「カヌーはせまいので、外に出て一歩間違えたらそこは死。
自分の命が何に支えられているかすごくわかりやすい」と語る内野さん。
それは土佐山でも同じことだと気がついた。
「ホクレアでの、
“この水があるから、この食べ物があるから、
この空間があるから、アナタがいるから生きている”という感覚は、
土佐山にも通じるところがあります」
ともにシンプルな生き方。
目の前にあるものが、自分を支えているという感覚。

それは自然豊かな土佐山だから感じやすいのかもしれないが、
実は都会だって同様だ。
都会でも空気がなければ生きていけないし、
水や太陽がなければ生きていけない。誰だって自然とつながっている。
「自然とつながって生きているという意識をみんなに持ってもらいたい」と、
実は当たり前のことに気がつくことができるのが
土佐山というフィールドなのだ。

それに個人個人で気がついていくこと。それができると強さになる。
「あなたにはすごく可能性があって、すごく力がある」と、
内野さんはたくさんのひとに伝えたいと言う。
そうなったときに、つながりがすごく大切だ。
個でいいのではなくて、個が強くなって、集まったときに、
個がつながって、いろいろなものをすくい上げていく。

土佐山というピンポイントにいても、「狭いところにいる感覚はない」と言う。
全国各地、世界各地、さまざまなところにいる個が集まってきてくれる。
人間交差点を土佐山に定めつつも、
ハワイから、そして海から日本を見た内野さんの意識は一点に留まらない。
土佐山アカデミーにとって、
ひととひとが出会うところは、すべて学びの場となるのだ。

土佐山に伝わる炭焼き

土佐山に伝わる炭焼きは、土佐山アカデミーの3か月プログラムの授業のひとつとしても体験できる。

profile

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KANAKO UCHINO 
内野加奈子

土佐山アカデミー ディレクター。ハワイ大学院で海洋学を学びつつ、海図やコンパスを使うことなく自然を読み航海する伝統航海カヌー〈ホクレア〉の日本人初クルーとなる。歴史的航海となったハワイー日本航海をはじめ、数多くの航海に参加。10年以上に渡り、日米の教育機関と連携しつつ、自然をベースにした学びの場づくりに携わる。著書に『ホクレア 星が教えてくれる道』(小学館)。

土佐山アカデミー:http://tosayamaacademy.org/

Facebook:http://www.facebook.com/tosayamaacademy

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