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未来を創るニッポンの現場
「神奈川 藤野」編 Part4
藤野電力の提唱する、
電気との向き合い方。

KAI presents EARTH RADIO
vol.032 StoryH-04

posted:2012.12.27  from:神奈川県相模原市  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

藤野電力が提唱する、電気を自分たちで生み出す自由。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」は、神奈川県の藤野編最終回。

藤野にある牧郷ラボは、2003年に廃校になってしまった牧郷小学校を、
アーティストたちがアトリエとして再利用している施設。
緑のなかに建っている築50年の木造校舎で、清々しい気分になれる。
現在、8組ほどが利用しており、音楽やペインティングなど、
さまざまなジャンルのアーティストが活動している。

藤野電力の教室内に飾られていた作品

藤野電力の教室内に飾られていた作品。トイレや廊下など、至る所に作品が飾られている。

そのなかの一組に、藤野電力の小田嶋電哲さんがいる。
学校の入り口をはいってすぐ右手の教室が、藤野電力のオフィス。
校舎の前の校庭には、大きな太陽光パネルが並べられている。
これらを設置したのは藤野電力だ。電力会社のような名前だが、
会社でもNPOでもなく市民活動である。

昨年、2011年5月からスタートした。きっかけは東日本大震災。
藤野は計画停電などの影響が大きかったという。
井戸水を電動ポンプで汲み上げて利用する地域などは、
停電によって水も断たれてしまう。
「トランジションタウン活動(第1回参照)のなかで、
エネルギーについて話していこうという呼びかけがありました」
と小田嶋さんはいう。
電気が止まると水も使えない。
だからこそ、地域のエネルギーをつくる必要性を感じ、
自分たちでできることを確認していった。

それが、「ひかり祭り」が開催される時期と重なった。
牧郷ラボで9年前から夏に行われていたお祭りで、
“廃校に希望の光を灯す芸術祭”というキャッチフレーズで開催されている、
音楽、アートなどのお祭りである。
このお祭りは、かつてより天ぷら油を利用したバイオディーゼル発電を
使用していたが、第9回からはすべての電力を自家発電する方針となり、
各種電源の調達・配置などを藤野電力として協力する流れとなった。

「戦略的にやってきたわけではなく、
目の前のことにひとつひとつ取り組んできた」結果、
現在ではミニ太陽光発電システムのワークショップ開催が主力となっている。
太陽光パネル、バッテリー、コントローラー、インバーターなどの機器を
配線でつないでいくだけのシンプルな仕組み。
太陽光発電というと、太陽光パネルを屋根に敷き詰めて、設置費用も高く、
“何年で元が取れるか”なんて計算しながら購入するという印象だった。
しかし、これなら数時間で簡単にできてしまう。そしてそのまま持って帰れる。
「仕掛け自体は特にオリジナリティのあるものではないし、
昔からみんながやっていることです。
実際にこのような発電システムで暮らしているひとも
世界中にたくさんいるんです」というお手軽さがポイントだ。
エネルギーシフトを自宅から、自分の手で始めるには、
最適のワークショップかもしれない。

これらのワークショップをいままでに計50回以上も開催してきた。
全国へ出張ワークショップもやっている。
おおむね好評で、みんな電気がついて、わぁっと喜ぶ。
でもその先に壁がある。
そのミニ太陽光発電システムを持ち帰って、どう使うか。
家にきちんと設置するには、配線を引き込む必要がある。
「それを施工するサービスも少しずつ始めています。
ただし簡単な作業ではないから、
いまのところ地域で信頼関係のできているひと限定になります。
コンセントのひとつだけ太陽光発電からきているとか、
電灯のひとつだけは太陽光発電からきているとか、
独立型の太陽光発電を意識しやすい施工をしています」

牧郷ラボの廊下

牧郷ラボの廊下には、それぞれのアーティストが手がけた作品が並べられている。一番手前は、今年行われた「ひかり祭り」の看板。

藤野を市民発電所に!

こうしてみんなが家庭に独立した太陽光発電システムを持つことで、
個人使用だけではなく、地域全体がエネルギー発電所のようになる。
小田嶋さんは、そんな地域を思い描いている。
「市民発電所を建設したいんです。各家庭で発電できるようになったら、
手づくりEVステーションタウンにすることができます。
EVスクーターを持っていれば、
駅に行って充電、カフェに行って充電、友達の家で充電。
藤野に住んでいれば移動時のガソリンはもちろん使わず、
電気代もかからない、というまちが理想です。
観光としても、EVスクーターを貸し出して、
電気代はタダで陶芸に行ったり、森に行ったりできます」

たしかに、藤野電力の入り口には「ケータイ充電できます」の看板が。
これが発展して藤野全体で行われれば、
いつでもどこでもケータイ充電可能、EVスクーター充電可能になる。
電気代を払うという概念がなくなっていくのかもしれない。

教室の目の前に置かれている太陽光パネル

ちょうど藤野電力の教室の目の前に、角度をつけて置かれている太陽光パネル。

しかし、電力自給100%にしていくなんてことは簡単な課題ではない。
だが、それも気持ちの問題。小田嶋さんの活動の目標は、
もちろん持続可能なコミュニティの実現であるが、
もっと根本には「自由」というテーマがある。
「食べ物を買う、電気を買う、何をするにもお金が必要ですよね。
そのお金を得るためには働かなくてはならない。とにかくお金に依存した社会。
そうやって何かに依存していると、必ず制約を受けるわけです。
もちろん社会生活で完全に何からも制約を受けないで
生活していくことは難しい。しかし自由を得る手段を知っていれば、
“自分も、この地域も、どうなっても生きていける“
という気持ちが芽生えてきます」

芸術のまちとして知られる藤野。
そしてアーティストのアトリエである牧郷ラボには、
自由を求めるひとたちが集まる。
いまやアートという力は、単なる自己表現ではなく、
サステナブルな社会の実現という方向へ舵を切っているようだ。
これが現在のオルタナティブな生き方であり、
藤野という芸術のまちから発信されている。

子ども用机。太陽光で発電した電気で勉強できる

牧郷ラボの山本元朝さんというアーティストとつくった子ども用机。太陽光で発電した電気で勉強できる。キャスター付きなので、日当たりのいいところを探して勉強!

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DENTETSU ODAJIMA 
小田嶋電哲

藤野電力エネルギー戦略企画室室長。2011年3月11日の東日本大震災を受けて、トランジション藤野を母体に結成された藤野電力に設立当初より参加。自分の電気は自分でつくる。地域の電気は地域でつくることを目標に、いま、ここから、自分たちにできることに取り組むべく、太陽光発電システムのワークショップの開催、各種イベントへの自然エネルギーによる電力供給、市民発電所の建設などの活動を展開している。

Web:http://fujinodenryoku.jimdo.com/

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