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未来を創るニッポンの現場
「神奈川 藤野」編 Part3
4世帯が住まう、
コモンハウスでの生活とは。

KAI presents EARTH RADIO
vol.031 StoryH-03

posted:2012.12.21  from:神奈川県相模原市  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

ルールなし。コミュニケーションで成り立つ4世帯暮らし。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
神奈川県の藤野編第3回は、前回に引き続き「里山長屋」の4世帯の暮らしについて。

サステナブルな社会を目指す企業に対するコンサルタントをしている
小林一紀・恵里奈夫妻は、前回紹介したコモンハウス(長屋の共有スペース)を
最大限に活用している。
ここには冷蔵庫も洗濯機もお風呂もあって、誰が使ってもいい。
小林家にはシャワールームはあるが浴槽はなく、コモンハウスのお風呂を使う。
洗濯機も冷蔵庫もコモンハウスのものをシェアして使用。
小林恵里奈さんは「パジャマ姿を見られることは
まったく恥ずかしくなくなりましたね。朝起きて冷蔵庫に行くときに、
いちいち着替えてられませんから」と笑う。

池竹則夫さんは、環境コンサルタントで植物の専門家。
家で仕事をしているため、事務所兼住居となっている。
だから自宅には大きな本棚と仕事スペースをオーダー。
「家でひとりで仕事をしていると、どうしてもこもりがちになってしまうけど、
長屋だと周りに必ず誰かがいるので、気がラクです」
駅からの行き来も、助け合い精神。
「タクシーが3台あるようなものですよ。
ただの友達よりも親近感があって頼みやすい」と池竹さんは笑う。

長屋の外観

コモンハウスの前を通って、各家庭へ。

そのようなちょっとした助け合いは、日常的に行われている。
「私がこの2日間、仕事で留守にしていたんですけど、
その間に生協から商品の配達があって、コモンハウスに届いていたんです。
それを恵里奈さんが冷蔵庫に入れておいてくれました」
というのは山田貴宏さんの奥さん、愛さん。
大したことないようにも思えるが、
都心のマンション暮らしだったら、やはりあり得ないこと。

共同生活には決まりごとが必要だと思ってしまうが、
ルールはほとんどないらしい。

「問題が起きたら、その都度、話し合います」と小林恵里奈さん。
「ルールがないと誰かにいうと、結構驚かれますね。
もちろん常識というものは、ひとによって違うので、
ルールがない共同生活は意外と難しいということを
ここで暮らす1年10か月で学びました」と山田愛さん。

コモンハウスはキッチンも完備

お茶を淹れてくれる山田貴宏さん。コモンハウスはキッチンも完備。

お隣さんが帰ってきたことが、すぐわかる距離感。

この現代的な長屋はある種の実証実験。
知り合い同士が集まった長屋ではあるが、
今まで都会でマンション暮らしなどをしていたひとたちだ。
問題点もいろいろ出てくるし、
ときとしてわずらわしいと感じることもあるが、
「ひとの気配がして、それが知っているひとで、
困ったことがあればすぐに話ができる状況はすごくいい」と、
山田貴宏さんはメリットのほうを強く感じる。
そして、ルールがないというのが、この長屋コミュニティの一番の特徴。
共同生活はルールがないとできないというのが普通の感覚だったが、
ここにいるとルールというものは窮屈で、破綻の原因とも思えてくる。

長屋の生活を覗いていると、
現代の地域コミュニケーションに足りないものが見えてくるのかもしれない。
「コミュニケーションの勉強になりますね。
通常は、プライベートの自分と、
仕事をしているパブリックな自分のふたつだけど、長屋はその中間。
家族ではないけど、仕事でもない。
こういう関係って大切なんじゃないかなと思います」と語る
山田愛さんの言葉から、地域という存在のあるべき姿が透けて見えてくる。

「コミュニケーション能力が高くなる」と、
小さな子どものママである小林恵里奈さんもいう。
「子どもにとって、親や親戚以外で
“近い大人”という存在がいることはいいことだと思います。
うちの子は私に怒られると『もう、いいっ!』とかいって、
山田家にプチ家出に行くんですよ」と笑い話にするが、
これができる環境はとても素晴らしいことだ。

コモンハウスで奥様同士が談笑中

山田愛さん(写真左)と小林恵里奈さん(写真右)の井戸端会議 in コモンハウス。

この長屋は、長屋暮らしがしたいとか、
田舎暮らしに憧れているというひとたちが集まったものではなく、
自然発生的に生まれたもの。
「できちゃった長屋」と池竹さんもいう。
だからこそ日常的なコミュニケーションが重要だし、
それで不安を取り除いていく。それは本来の地域の姿に似ている。

「暮らしはひととともにある。不安を共有したいという気持ちは、
人間の本質だと思うんですよね」と山田貴宏さん。

取材の日、みんなは、翌日に控える「コモンミール」という
久しぶりの飲み会の計画を話し合っていた。
きっと今日も「お隣さん、帰ってきたね」という気配を感じて、
ひとがいる安心感を感じているのだろう。

profile

TAKAHIRO YAMADA 
山田貴宏

1966年、神奈川生まれ。一級建築士。2005年から「ビオフォルム環境デザイン室」代表。建物とそれを取り巻く自然まで含めた幅広い環境と場づくりがテーマ。主に国産材と自然素材を中心とした、地産地消でかつ伝統的な木の家造りを中心とした建築/環境設計を行う。パーマカルチャーのデザイン手法・哲学を背景とした住環境づくりをめざす。NPO法人「パーマカルチャーセンタージャパン」理事、「職人がつくる木の家・木の家ネット」会員、「東京の木で家を造る会」賛助会員、日本大学生物資源科学部 非常勤講師。

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