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未来を創るニッポンの現場
「神奈川 藤野」編 Part2
地産地消の家づくりとは。

KAI presents EARTH RADIO
vol.030 StoryH-02

posted:2012.12.14  from:神奈川県相模原市  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

エコ長屋で暮らす、4世帯の里山ライフ。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
神奈川県の藤野編第2回は、4世帯が暮らす「里山長屋」を訪れた。

取材を始めようとすると、大きなベルが鳴り響いた。
この里山長屋はシュタイナー学園のすぐ裏にあるため、
学園用のベルが家の中にいても大きく聞こえてくる。
「学校だけでなく、地域全体の生活を刻むベルになっていますね」
というのは建築士の山田貴宏さん。
今回訪れた里山長屋を設計し、実際にみずからも住んでいる。

山田さんは、環境建築に関わってきた。
しかし「ハードだけではデザインは終わりではなく、まだ半分。
そこで住まい手がどう関わるかが重要」であり、
そうしないとエコロジカルな暮らしとはいえない。
「どんなに環境にやさしい家を建て、エコな暮らしをしていても、
閉じこもってエゴな暮らしをしていては広がりがありません」

人間同士のつながりやコミュニティも一緒に生みだしていくのが、
これからの環境建築である。
そこにはパーマカルチャーの考え方がベースにあった。
山田さんは藤野にあるパーマカルチャーセンタージャパンの設立初期から関わり、
同センターの建築分野で講師もしている。
自分の暮らしすべてを生態系の仕組みに即して考えていくパーマカルチャーを
「建築にフィードバックできたら素晴らしいと思っていました」という。

瓦が看板代わり

そんなとき、現在、長屋に住んでいる小林一紀・恵里奈夫妻が、
この土地を購入し、家を建てる計画が持ち上がった。
同時期に土地を探していた池竹則夫さんは、
小林さんと情報を共有しているうちに、
隣の空いている土地に家を建てることに。
その設計・建築を受けた山田さんは、
どうせならと、二世帯がつながったミニミニエコビレッジを提案する。
「海外なら、広い土地をドンと買って“ここをエコビレッジにする”
と決められるけど、日本は立地的にも難しい。
だから少しずつ寄せ集まってエコビレッジになっていくのが
日本型だと思うんです」という山田さんの計画。
これには結局、自分たちも巻き込まれることになり、
結果的に山田夫妻を含めた4世帯が集まって住む長屋となった。
ここでエコロジカルかつコミュニティのある暮らしを実現していくことになる。

雨水を貯める樽

雨水を貯める樽。外にあるので、畑の水やりに便利。

ポストとインターホンは各家庭にわかれている

ポストとインターホンは各家庭にわかれている。下はコモンハウス用。

自然と対話する伝統的工法でつくり上げる。

この里山長屋には、いくつかの伝統的な工法がとられている。
現在は、産業的な家づくりが主流で、パッケージ型の住環境が普及している。
しかし「家づくりの原点は、風土を把握して土地のポテンシャルを活かすこと」であると、
藤野やその周辺の木材を調達し、金物をなるべく使わない工法で、
藤野の大工に組み上げてもらった。
原点に立ち戻ってみると、そこにもちゃんとつながりがあった。

家の壁は、伝統的な土壁のつくり。
土壁は、熱をためてくれるので冬はあたたかく、
夏は夜の冷気で壁を冷やしてくれるという。
「装置型の仕組みではなく、建物と自然との間でやりとりが行われます。
これは隠れた自然エネルギーですね」

土壁の中は竹が下地に組まれている。
住民みんなで地元の竹を山に切りに行って、割って、編んだ。
ワークショップ形式で、
数か月にわたってのべ300〜400人に手伝ってもらった。
家を建てる段階から地域と連携し、地産地消を完成させる。

壁のサンプル

壁のサンプル。竹で編まれたうえに、何重にも重ねられていることがわかる。

こうした木組みを生かした工法や土壁づくりなど、
伝統的なつくり方はどんどん失われてしまっている。
地元の環境や気候にあった家づくりは、地元の大工が一番知っているはずだ。
山田さんは、地元の資源やひとと深く関わりながらいう。
「それも地産地消だし、つながりだったと思います」

里山長屋の一番の特長といえるのが、
それぞれのお宅のほかにある共有スペース、コモンハウスだろう。
敷地内に入ると一番手前にあり、このコモンハウスの前を通って行き来する。
誰もが自由に使っていい。
共有のキッチンがあり、お風呂があり、ゲストルームもある。
南向きの大きな窓からは、太陽の光がさんさんと差し込む居心地のいい空間。
普段は長屋内での打ち合わせに使ったり、
飲み会やワークショップが開催されたりと、
コミュニケーションの場として機能している。

コモンハウスの奥の客室

コモンハウスの奥には客人用の部屋。宿泊も可能だ。

ハードの面では環境へと配慮した。
それを活用し最後のピースを埋めるのは住まい手たち。
コミュニケーションのためのコモンハウスにおける
プライバシーとパブリックの中間というほどよい距離感は、
長屋暮らしの生活を象徴しているようだ。
そんな暮らしぶりは、また次回。

コモンハウスの入り口

profile

TAKAHIRO YAMADA 
山田貴宏

1966年、神奈川生まれ。一級建築士。2005年から「ビオフォルム環境デザイン室」代表。建物とそれを取り巻く自然まで含めた幅広い環境と場づくりがテーマ。主に国産材と自然素材を中心とした、地産地消でかつ伝統的な木の家造りを中心とした建築/環境設計を行う。パーマカルチャーのデザイン手法・哲学を背景とした住環境づくりをめざす。NPO法人「パーマカルチャーセンタージャパン」理事、「職人がつくる木の家・木の家ネット」会員、「東京の木で家を造る会」賛助会員、日本大学生物資源科学部 非常勤講師。

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