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未来を創るニッポンの現場
「神奈川 藤野」編 Part1
トランジション・タウンで
「楽しく、つながる」。

KAI presents EARTH RADIO
vol.029 StoryH-01

posted:2012.12.7  from:神奈川県相模原市  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

住んでいるひとたちが、土地の一番の資源。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
今週から神奈川県の藤野編をお届けする。

藤野には、不思議な地場がある。
以前からは芸術のまちと知られ、「芸術の道」という通りには巨大なアート作品が並び、
「ふじのアートヴィレッジ」ではギャラリーの見学やものづくりを体験できる。
さらにはパーマカルチャーセンタージャパン本部や、シュタイナー学園もあり、
ナチュラルに自分らしく生きたいというひとたちが
自然に集まってくる土地柄だ。
そんな藤野で、2008年、「トランジション藤野」が立ち上がった。
その中心となったのが榎本英剛さんだ。

トランジションとは移行するという意味で、
化石燃料を湯水のように使う暮らしから、
もともと地域にある資源を有効活用する暮らしへの移行を目指すというもの。
パーマカルチャーを実践していた
イギリスのロブ・ホプキンスが2006年に立ち上げた
トランジション・タウン運動は、瞬く間に世界へと広まった。
その頃、イギリスに住んでいた榎本さんは、その話に共感し、
日本に戻り、その運動を仲間たちと立ち上げるに到った。
「最終的な目標は地域のレジリエンスを高めること」だと榎本さんはいう。
それは変化に柔軟に対応できる力のこと。
「僕たちはシンプルに“底力”と訳しています。
リーマンショックやユーロショックなどが起こっても、
その変化とともに倒れてしまうのではなく、自立してやっていける力です」

榎本さんは、藤野に暮らしているひとびとに
トランジション・タウンの活動を理解してもらうために、
地道に説明会などを開き、賛同してくれる人数を増やしてきた。
「トランジション活動というのは、地域にある資源を活かすこと。
そして、ひとが持っている関心とか創造力、自発性も、その土地の資源なんです。
だから、それぞれのまちで、起こってくることは変わってきます」
と榎本さんはいう。
トランジション活動は、食、経済、環境などジャンルもさまざま。
本人が興味あるテーマに取り組むのがこの活動の特徴でもある。
例えばトランジション藤野では、
豊かな自然を活かすための「森部」というワーキンググループが立ち上がり、
森を整備し、その材を有効に活かす方法を模索している。
ほかにも、ミニ太陽光発電システムづくりのワークショップなどを行う
「藤野電力」や、地産の農業から食を考える「お百姓クラブ」などの
ワーキンググループも立ち上がった。
「当初は限られたメンバーがすべての活動に顔を出していたんですが、
いまでは関わるひとも増えて、
それぞれのワーキンググループが自立して活動していけるようになりました」
住民が自らの住む土地への意識を高めて自立していく姿もまた、
大きなトランジションといえる。

里山長屋で育てられていた種たち

榎本さんのパーマカルチャー仲間、そして藤野の仲間たちである里山長屋で育てられていた種たち。

貨幣を介さない地域通貨が交流のベースとなる。

藤野のトランジション活動を大きく進めることになったシステムのひとつとして、
「萬(よろづ)」と呼ばれる地域通貨がある。
利用するには、会員登録し自分が提供できるサービスや、やって欲しいことを申告。
それに応えられるひとと交渉して「萬」をやり取りする。
「萬」は貨幣ではなく、通帳型と呼ばれるシステム。
通帳にそれぞれの収支を書き込んでいく。
サービス内容は、駅からの送迎や子どもの一時預かり、
手づくりパンの販売などの気軽なものから、
整体や通訳など、仕事といってもよさそうなものまで。
「トランジション活動は、大きなテーマとして掲げているエネルギーの話だと、
わかりにくくて、なかなか多くのひとを巻き込むことができませんでした。
しかし地域通貨を始めてから、その馴染みやすさも手伝って
地域のつながりが以前よりできやすくなったんです。
これは貯めるのが目的でなく、つながるためのツールになっています」
お隣さんに醤油を借りる文化は、都市部ではほぼ絶滅したといってもいいが、
そのご近所の助け合い精神の関係性を再構築しようとする。
いまでは約170世帯が加入し、コミュニケーションの土台となっているのだ。

軒先に並べられた薪

森では、薪も重要なエネルギー。

トランジション・タウン、略してTT。
これを榎本さんたちは「楽しく、つながる」であると再翻訳する。
その地域によって、活動のかたちはまちまちでも、
トランジション・タウンであるという意識を共有できるから、
それこそ地球の裏側のまちとだってつながることもできる。
活動は地域レベルでも、意識は地球レベル。そんな新しい連帯。
「結局は、そこにいるひとたちが元気になること。
自分ひとりではどうにもできないと思っていたことも、地域みんなでつながれば、
なんとかできるかもしれないと思えるようになること。
市民力の向上と言い換えてもいいかもしれません」
地域のみんなで楽しくつながれば、きっとできる。
まずはアナタのまちで、トランジション・タウンに手を上げてみては?

profile

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HIDETAKE ENOMOTO 
榎本英剛

神奈川県と山梨県の県境にある人口1万人の町、藤野に在住。2005年から3年ほどスコットランドのフィンドホーンという世界的なエコビレッジに住み、持続可能な暮らしについて研究中に、トランジション・タウンの活動に出合う。帰国後、かつてパーマカルチャーをともに学んだ仲間たちとNPO法人トランジション・ジャパンを立ち上げ、地元・藤野でもトランジション藤野としての活動を始める。もともとはひとの可能性を引き出すコミュニケーション手法であるコーチングを専門としており、日本を代表するコーチ養成機関である株式会社シーティーアイ・ジャパンの創設者(現在は取締役相談役)でもある。

トランジション・ジャパン:http://www.transition-japan.net/

トランジション藤野:http://blog.canpan.info/team-80/

Facebook:https://www.facebook.com/ttfujino

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