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未来を創るニッポンの現場
「岐阜 明宝・飛騨高山」編 Part1
13世帯からスタートした地域づくり。

KAI presents EARTH RADIO
vol.025 StoryG-01

posted:2012.11.9  from:岐阜県郡上市・高山市  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

かつて冠婚葬祭すべてが行われてきた、ある日本家屋。
そんな古民家再生から、里山の復興が始まる。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
岐阜編の第1回は、郡上市の明宝地区から。小さな小さな集落から始まった話。

「この床の板材は栃の木なんですが、丸太の半割りなんです。
反対側は丸いまま。これも山から切り出してきたもの。
このように昔は山と暮らしが密接に結びついていました」と語るのは、
過疎に悩む場所に、かつての里山の姿を取り戻そうと活動している
「ふるさと栃尾里山倶楽部」事務局の置田優一さん。
郡上市にある明宝地区、二間手下組という場所は
16世帯が暮らしているが、このエリアのなかでも過疎化がすすんだ地域。
ここに、ある古民家があった。おばあちゃんが一人暮らししていたが、
数年前に引っ越してしまって以来、長らく放置されていた。
どんどんひとが流出していき、地域から元気が失われていく。
築100年をこえるような素晴らしい古民家も、
朽ちていくのを見ているだけの現状。
これに歯止めをかけるためには、
自分たちで行動を起こさないといけないと二間手下組の住民たちは決意し、
地域づくりのための古民家再生に立ち上がる。
古民家は家主の先祖の名前にちなんで
「源右衛門(げんねもん)」と名付けられた。
この活動をきっかけとして、「ふるさと栃尾里山倶楽部」が生まれた。
16世帯のうち13世帯が参加するという、
もっとも地元発生密着型の地域づくり団体といえるだろう。

「源右衛門(げんねもん)」と名付けられた古民家

源右衛門では、自然エネルギーを積極的に取り入れている。
太陽光パネル、小水力発電、燃料電池、蓄電池などを組み合わせて
エネルギーを自給することが可能だ。
幹線道路が一本しかないような山間地域では、
災害などでインフラがストップし、集落が孤立する可能性がある。
そんなときでも困らないように、
自立したエネルギーの必要性を考えていかなくてはならない。
100年をこえる古民家に設置された、最先端のエネルギー設備。
あるものを利用していくという、
未来のハイブリッドなカタチなのかもしれない。
「とはいえ、ふるさと栃尾里山倶楽部のみなさんは
エネルギーを意識して活動しているわけではありません。
里の暮らしのなかで、エネルギーはどう必要かを考えることのほうが大事」
と語るのは、ふるさと郡上会の小林謙一さん。

古民家の横に設置してある小水力発電の水車

古民家の横に設置してある小水力発電の水車。出力は0.5kW。

エネルギーというとどうしても電力を思い浮かべてしまうが、
森のなかにあるこの集落では、冬は薪ストーブが有効である。
これはもっともプリミティブな自然エネルギー。
「自分たちがどのような用途で、どれだけのエネルギーを使っているか、
ということに立ち返ることができます」と小林さんが言うように、
“見える化”が最大のメリットなのだ。
「森や水の恵みは、お金では買えない。
しかも、それをつくってきてくれた前の世代がいて、
その恩恵にあずかっている状態です。
だから次はわたしたちがその担い手にならないといけません」という
小林さんの言葉は、すごく当たり前なのに、忘れがちなこと。
そういったことが、源右衛門で自然エネルギーを使って過ごしていると
見えてくるようだ。

パソコンのモニターで電力の使用状況を確認

パソコンのモニターで、電力の使用状況などを確認。常にエネルギーへの意識が高まる。

集落一体となったことで実現したこと。

かつては家ですべての冠婚葬祭が行われていた。
生まれてから死ぬまでが近い場所で行われており、
地域コミュニケーションの中心は家だった。
しかしそれらは、今では商業ベースで行われるようになってしまった。
「昔の家で行われていた大切なことが失われてしまっています。
でもせめて、思いだけは伝えたい」と置田優一さん。
田舎の大きな古民家が持っていた機能を、
現代によみがえらせることになるのが、源右衛門ということだ。
まさにここを交流の拠点として、明宝地区が元気を取り戻してきた。

そのひとつが平成22年からスタートした栃尾里人塾。
「森」「農」「自然エネルギー」をテーマに里山の課題を見つめ、
都会からひとを迎えてともに考え、作り上げていく活動である。
森を再生して豊かな山を取り戻したり、水の循環する仕組みを考えたり。
20〜30年先の集落のかたちを想像してゆっくりとアクションしていく。
「里づくりは、結局ひとづくりだと思います。
だから都会のひとに来てもらって、
一緒に考えていきたい」と大きな目的を語る置田優一さん。

山のなかに建つ源右衛門

自給自足型のエネルギーシステムを設置しているとは思えない、山のなかに建つ源右衛門。

一方でひとづくりとしてのもうひとつの活動が子ども寺子屋エコキャンプだ。
通常の子ども向けキャンプは指導者がプログラムに沿って面倒をみるが、
このキャンプでは地域のおじいちゃんおばあちゃんたちが
さまざまな場面で登場する。
「昔あったように、田舎の親戚やおじいちゃんの家に
遊びに行く感覚のイベントです。
地域のお年寄りが持っている知恵とか技術を次世代に伝えていきたい」
キャンプにひとが集まっていると、
近くのお年寄りたちが野菜を持ってきてくれたり、
何かと世話してくれるという。キャンプに参加しているんだけど、
まるで親戚のうちに遊びに来たような感覚を味わうことができる。

ふるさと栃尾里山倶楽部の活動によって、
“外からひとを呼ぶ、外に認知させる”という目的に向かいながらも、
集落内では月に何回も集まるようになったことが大きいという。
「ひととの関わりあいが増していくなかで、
新しい考え方が経験できたし、成長できました。
今までは挨拶程度だった立ち話も、やることが定まっているので、
“コレをどうやる? 次は何をする?”という積極的な会話へと変化しています」
とふるさと栃尾里山倶楽部代表の置田憲治さんも今までにない密なつながりと、
地域が明るくなったことを実感している。

「結成当初に書き出したやりたいことは、すでに90%以上を実現し、
新たな目標がどんどん出てきています」というように、
集落一体となったコミュニケーションの濃密さが感じ取れる。
“ニッポンの里山”らしさが残る明宝の、
ほんの13世帯からスタートした地域づくり。
それは崇高な理念でもなく、
またコミュニケーションという横文字では歯がゆいような、
もっと素朴なひとのつながり。
何だか大きな家族みたいだった。

profile

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YUICHI OKIDA 
置田優一

2009年5月、郡上市明宝二間手の下組という16世帯の小さな集落で「ふるさと栃尾里山倶楽部」を仲間とともに結成。築107年の古民家「源右衛門(げんねもん)」の再生を皮切りに、栃尾里人塾、子ども寺子屋エコキャンプ、おときご飯、地域おこし応援隊事業、岐阜県が環境省の事業として源右衛門に導入した「チャレンジ25地域づくり実証事業」などの実現を裏方として支える。これらはすべてプライベートの活動であり、本職は郡上市役所職員。

ふるさと栃尾里山倶楽部:http://www.musublog.jp/blog/tocyo/

郡上市:http://www.city.gujo.gifu.jp/

profile

KENICHI KOBAYASHI 
小林謙一

埼玉県生まれ栃木県育ち。現在の本籍である千葉県で高校を卒業後、東京に住み約20年間プロデューサー、ディレクターとしてコンピューター・グラフィックスを中心に映像制作に関わる。40歳での退職を目指して林業講座、自然農、先住民族の教えなどを学びながら、森に関わる暮らしを目指す。2008年、県立森林文化アカデミーに入学するため岐阜県に移住。地域づくりに関心を持ち、2009年より郡上市交流・移住推進協議会の職員として従事。移住相談窓口の業務をしながら、郡上のさまざまな地域活動に参加する日々。

ふるさと郡上会:http://www.furusato-gujo.jp/

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