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未来を創るニッポンの現場
「長野 安曇野」編 Part2
ゲストハウス「シャンティクティ」
が取り組むパーマカルチャーとは

KAI presents EARTH RADIO
vol.006 StoryB-02

posted:2012.6.15  from:長野県安曇野市  genre:活性化と創生

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

たくさんの自然素材と、
ちょっとの科学がつまったシャンティクティの秘密。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
長野・安曇野シリーズ第2回は、
安曇野のゲストハウス「シャンティクティ」が取り組んでいる
パーマカルチャーとはどんなものか?
その具体的な内容を教えてもらった。

「シャンティクティ」はさまざまなセルフビルドの設備や、
一見草むらにしか見えない畑など、
ワクワクどきどきするゲストハウスだ。
ただ単に宿泊施設として利用するのではなく、
パーマカルチャーを学びたいという目的で訪れる宿泊客も多い。
その要望に応えるように、シャンティクティでは、
この施設のパーマカルチャー的取り組み、自然農のやり方、
サステナブルな生き方などを丁寧に説明する朝のエコツアーを開催している。
そこで臼井健二さんと一緒に、
シャンティクティ1周エコツアーに出かけた。

まずはゲストハウスの正面からスタート。屋根の上に注目だ。

「屋根の上というのは一番使われていないスペースなんですね。
そこを畑や田んぼにしました。屋根の面積分、失われた緑を復元できるし、
断熱効果もあります。打ち水と同じですね」

屋根の上に畑や田んぼ

まさか屋根の上に畑や田んぼがあるとは! 稲が育ったときには、どんな屋根になるのだろうか。

次はエントランスへ。

「表面は漆喰、中味は藁と土でできた、ストローベイルという工法です。
断熱性を兼ね備え、防水性や防火性、強固さが生まれますね。
また再生可能で土に還ります。
この藁と土と漆喰のつながりがとても大切なんです。
つながりを切っているのが現代のくらし。
分断して競争してマーケットを置く。これが資本主義の生き方です。
短期的にはいいけど、長期的には問題点が現れます。
それより、つながりを持ってお互いを生かし合うほうがいいですよね」

エントランスには家を持って移動するかたつむり模様が施されていて、
自立とスローライフの象徴的デザインだ。

玄関

元々のロッジを半分以上セルフビルドによって改築。玄関も付け加えられた。

さて次はどちらでしょう?

「ここは薪でご飯が炊ける、未来型の薪のシステムキッチンです。
2連になっているので、ご飯を炊くと同時に隣でみそ汁がつくれますね。
その横にはピザやパンを焼くことができるアースオーブン。
お湯も沸き、薫製もできる優れものです。
土でできているので、レンガよりも自由に形をつくれます。
電気やガスがなくなっても、
サブシステムとして使えるものをつくっておくことは大事ですね」

優れたシステムキッチン

雨水がたまったり、水が温まる仕組みなど優れたシステムキッチン。かたちもヨーロッパ風でかわいい。

次はゲストハウスの前に広がる畑で自然農の種まきを教えくれた。
しかしこの畑、どれが“植えたもの”かわからないほど多種多様な草が生い茂っている。

「この草も敵ではありません、問題児も生かしてあげます。
まず植えたいところの草を刈ります。その草は横に置く。
すると、そこは日が当たらなくなるので草が育たなくなります。
さあ、土が出てきました。でも耕してはいけない。
耕すと土がいい条件になって、
そこに残っている草の種が一斉に芽を出します。
だから表土をかいて、それを横にずらすだけ。
これだけで、草と闘わなくてすみます。
今日はチンゲン菜をまきましょう。種をまいたら、よく踏んであげます。
すると種に土がよく密着して、水分が下からあがってきます。
これだけで、発芽率が2割はあがりますよ。
日本は五日に1回風が吹き、十日に1回雨が降る国。
それほど恵まれているのが日本です。
だからほとんど水をあげる必要はありません。
耕す必要もなく、草も生き、横で堆肥もつくれる。
こんなに簡単でいい農法はないと思います」

たしかに見ているとすごく簡単。
家にちょっとした庭があれば、真似できそうだ。
たくさんは採れないが、それを良しとする。

「実際は有機農法に比べても、6割くらいしか採れません。
残り4割は大地に残っていると考える。
その残ったものが太陽エネルギーを吸収して、土に還ることで10割に戻ります。
そしてまた、6割いただくという持続可能な採り方です。
採りすぎてはいけないんです」

他にも、放射冷却を利用した非電化冷蔵庫、
もみ殻をバイオマスとして燃料にしている籾殻ボイラー、
土のうを積み上げて小屋を建てたアースバックハウス、
ひとりでも建てられるティピ型温室、
ぬかや落ち葉が便を堆肥化してくれるコンポストトイレなど、
パーマカルチャーとアイデアの宝庫となっている。

ティピ型ビニールハウス

こんなのは見たことがない、と臼井さん自身も誇らしげなティピ型ビニールハウスはつくりもシンプル。

みんなでつくるから楽しいし、ユニークなものができる。

これらの設備は、ワークキャンプなどを開催し、
参加者たちと共同でつくっている。
だからひとつひとつユニークで斬新。
プロの大工さんや建設業者ではできないようなアイデアにあふれている。
それが何だかわくわくする理由だろう。

「ワークキャンプなどみんなが協力してつくっているので、
実は人件費がほとんどかかっていません。
お互いが“やりながら学べる場”があることはいいですね。
他にもここを会場にして、いろいろな勉強会やイベントを開催しています。
そんななかから学ぶこともたくさんありますね。
宿泊されるゲストも千差万別。
大学教授や専門家みたいなひともたくさんいらっしゃいますので、
逆に教えてもらうことも多いですね。
聴く耳さえあれば、学ぶことはたくさんあるんです。
普通は出かけて行って吸収してこなければならないのに、
来てもらって教えてもらって、宿泊代まで置いていってくれる(笑)」

なるほど、臼井さんのジャンル問わず豊富な知識は、
こうしたリアルな活動から得たもののようだ。
まさに趣味と実益を兼ねたゲストハウス。
ひとが集まるコミュニティ。みんなで生み出し、大切に育てていく。
資本主義とは正反対に向かうかもしれないけど、
臼井さんが思い描くパートナーシップの時代には、
ひとを幸せにしていくヒントが隠されているのかもしれない。

「自分ですべてできるひとはすごい。
でもそれはつながりを生みません、欠けているからつながり合える。
それぞれは60点でいいんじゃないかと思うんです。
ふたつ集まれば120点になるじゃないですか。
すべてを100点取ろうとすると、失うものもたくさんある気がします。
パーマカルチャーもそう。
私はひとつひとつ専門ではないし、
林業、農業、工業、いろいろなものの寄せ集め。
これからは、つながりを大切にして融合していく、
そういう生き方がいいんだと思います」

ワインの瓶を利用した自動ドア

ごつごつした壁に愛嬌があるアースバックハウス。ワインの瓶を利用した自動ドアです!

information

map

ゲストハウス シャンティクティ

住所:長野県北安曇郡池田町会染552-1

TEL・FAX:0261-62-0638

Web:http://www.ultraman.gr.jp/shantikuthi/

profile

KENJI USUI 
臼井健二

1949年生まれ。大学卒業後、商社に1年勤めて退社。穂高町経営の山小屋の管理人として5年間過ごす。1977年に大天井岳の山小屋の管理人をやめ、1979年舎爐夢ヒュッテを立ち上げる。長野県内有数の稼働率を誇る人気の宿となり、自然農、シュタイナ-教育、マクロビオティック、地域通貨、共同体、パーマカルチャーなど、21世紀の循環型社会に必要なキーワードを包み込んだエココミュニティとして注目を浴びている。2006年には、シャンティクティもオープンし、最小コミュニティである家族で運営。現在は拠点を移して活動中。

臼井さんインタビュー動画:http://youtu.be/1eAIUw1OSn0

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