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地方によって漁の時期は異なるのですが、
下田で貝の漁が盛んに行われるのは5月から9月初旬頃まで。
その時期のうち数日間だけ漁が口開け(解禁)になります。
口開けのタイミングは潮の満ち引きや天候、
貝の生育具合によって各地区で判断されます。
私がよく撮影をさせてもらっている須崎地区の場合、
漁の手法は3種類、時期によって分かれています。
5月にまず岡磯(おかいそ)が口開けし、
そのあと潜り漁が9月初旬まで、冬から春先まではつきん棒。
岡磯というのは水中眼鏡とウェイトの装着不可、
つまり潜っちゃダメということ。
箱メガネという道具を使って、潜らずに手が届く範囲だけで行う漁です。
潜り漁は水中眼鏡とウェイトの装着がOKなので、
海底の貝までとることができる、漁獲高が一番望める手法です。
つきん棒というのは竹竿の先にするどい銛(もり)をつけた道具を使い、
船上から貝類や魚などを突いてとる方法。
伊豆でもこの漁は珍しく、須崎地区でも行っているのは数隻程度だそう。
サザエは一年中漁が許可されているのですが、
アワビに関しては産卵期となる10月から12月は
禁漁と決められています(静岡県の条例)。
そうした漁の手法や禁漁の期間などが決められているのは、
海洋資源を持続させるためです。
効率よい方法だけで一気にとってしまうことのないように。
昨年は、ちょうど岡磯を行っている写真を撮影させてもらいました。
白波が立つなか、勇しく挑む姿に感動し、
限られたその日に立ち会えたことがすごくうれしかった。
そして今年。
友人の漁師さんが潜り漁をしている姿をSNSにアップしていました。
潜り漁の様子を見たのはそれが初めてで、
「こんな風に漁をしていたのか!?」と衝撃を受けたのです。
いままでも陸や船上では漁の写真を撮らせてもらっていたのですが、
海中で撮影することは考えてもいませんでした。その写真を見て、
「自分もこんな写真を撮影してみたい!」
と熱い気持ちが湧き上がり、漁師さんに撮影させてもらえないか
お願いしてみました。すると、
「波が荒いからな~、難しいんじゃない? 潜れないでしょ?」と。
アワビなどの貝類は水のきれいなところで生育するため、
漁が行われるのはたいてい波の荒い場所なのだそう。
正直潜れない……、けど撮影してみたい! ので、
「邪魔にならないようにするので……」とお願いをしてみる。
漁師さんによると今年は例年に比べて波が穏やかだから、
危険じゃない場所での漁ならと承諾してもらいました。
そうして、潜り漁の口開けの日を迎えたのです。