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そして移住先探しの旅は続く。
心機一転、新たな旅へ|Page 2

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.011

Page 2

山深い美杉から東京へ。これが僕と妻の故郷の景色です。娘の故郷はどんな景色になるのか?

仮住まい物件の期限が迫る

の年始に、三重での新しい生活に向けて、
それまで住んでいた妻の実家の荷物を片づけて
必要なものを車にぱんぱんに詰めこんで意気揚々と出発しました。
でも、前回お伝えしたような事情により、
いったん東京に戻ることにしたのです。

半月もせずに戻ることに気恥ずかしい思いもありますが、
何をもってしても大事なのは家族の気持ちだ、と
半ば無理矢理、意気揚々と帰ってきました。
とにかく落ち着いて今後のことを考えよう。
時間が解決することもあるはずです。

妻の実家ではこんなわが家をあたたかく迎えてくれました。

戻るところがあるというのは本当にありがたいことです。
でも、考えてみるとそんな「戻るところがある」というありがたい状況が、
わが家の移住をなかなか進められない弱さをつくっているのかもしれません。

この移住先探しの旅で知り合った移住者の中には
東日本大震災の原発事故の影響により
移住を余儀なくされた人が何人もいました。

ある日突然、いままで住んでいた土地に住めなくなる。
家族や親せき、友人がばらばらになる。それはどんなに辛いことだったのか。

家族で移住することの難しさを身をもって知り、
原発事故の影響でやむを得ず移住をした方々のはかり知れない苦労について
あらためて考えてしまいます。

(こんなこと二度とあってはならないですよね……)

それに対して、このわが家の一時撤退は簡潔に言ってしまえば
「娘に泣かれたから引き上げる」ということです。なんとも情けない……。

親がここだと決めた場所なら子どもはすぐに馴れるもんだよ、
とアドバイスを多くいただきました。
ただ、同居しているいとことと離れて住むことになるという
わが家ならではの状況、娘の性格、そして前回、妻が書いた
美杉での夜の出来事を考えると、すぐに馴れるからと
無理に続けようという気にはどうしてもなれないのです。

これが自分たちのやり方なんだ、事情があっての移住ではなく
家族で丁寧に暮らすことを目指しての移住としては、
この決断こそが大切なのだ、そう自分に言い聞かせました。

そして、この2月には美杉の仮住まいを借り始めて3か月となります。
この物件は家主さんのご好意で、とりあえず3か月住んでみて
気に入ったら長く住むもよし、3か月の間にほかに気に入った物件があれば
引き払うもよしという事になっております(詳しくはvol.6)。
今後の方向性を決断しなければならないタイミングが迫ってきました。

2016年11月より借り始め、あっという間に3か月。3か月の間にこの土地であれやってこれやってと妄想していたのですが、思うように進まずに月日が過ぎていきました……。そして借り始めたときには予想もしなかった展開になっていることを考えると、この「とりあえずの期間」があってよかったと感じます。「お試し移住」とても大事です。

この物件を借り続けるのか? 
美杉でほかの物件を探すのか? 
ほかの土地を探すのか? 
それとも移住をあきらめるべきのか? 
娘にとって、家族にとってどのように進めるのがよいのか? 
東京ではできない暮らしって? 丁寧な暮らしって? 
考えれば考えるほどこんがらがってしまうのです。

東京での生活が始まりました。フリーのフォトグラファーである妻は依頼が入れば撮影に出かけています。対して昨年夏に会社をやめて以来、無職の僕。日中は娘と過ごし主夫してます。ずっと無職、主夫でいるつもりではなく、移住先が決まったら、その地、その家にふさわしい仕事をみつけるつもりです。ところが、なかなか移住先が見つからない……。こんなとき、焦ってもしょうがない。娘との時間を楽しむしかないですね。

いとこたちと遠く離れて暮らすと僕と妻が決めたことは
娘の心に少なからず傷を残してしまったようです。
美杉の話をするとそれまでの笑顔が硬い表情になってしまう。
その小さな体にどれほどの不安な気持ちを抱えこんでいたのか、
それを思うといい歳こいたおじさんの僕が泣けてきてしまいます。

(妻と同じで涙もろいのです……)

妻とは今後のことを毎日毎日、明けても暮れても、
飲んでも飲まなくても話しました。

そして、これは時間が解決する問題ではない、
娘に大きな負担を背負わせない決断をしよう、
ふたりともそう考えました。

美杉への移住はあきらめる。
けれど、移住はあきらめない。
東京に近い移住先を探して、しばらくは毎週末東京に戻り、
いとこたちと過ごす時間をつくる、そして徐々にそのペースを開け、
いとこたちと別々に暮らせるようにしていこう。
それでもだめならそれはそのときに考えるしかない。

年始には美杉の大自然のなかで遊びまわっていた3人。東京に戻ってきても3人一緒にいることがあたり前のように過ごしています。

娘がここで暮らしたい! と思える移住先を探そう。

美杉の風土に惹かれ、出会う人々に惹かれ、
この地への移住を試みたのですが、
それだけでは足らなかったということなのでしょう。

心機一転、ふり出しに戻ります。