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文化財建築とねぶたの競演!
「昭和の竜宮城」を
日本の色彩とかたちが照らし出す
『和のあかり×百段階段2018』

コロカルニュース

posted:2018.6.26   from:東京都目黒区  genre:アート・デザイン・建築 / エンタメ・お楽しみ

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Jun Kanazawa

金澤 淳

かなざわ・じゅん●青森市在住。東京の編プロ、青森の広告代理店勤務を経てフリーに。地元発行の建築雑誌 の編集を担当した後、現在、ローカルマガジンの取材記事、広告記事を中心に執筆しています。

贅をつくした建築と、破格ともいえる豪華な装飾で
“昭和の竜宮城”ともいわれた〈目黒雅叙園〉(現・ホテル雅叙園東京)。
同館の夏の恒例イベント『和のあかり×百段階段』展が、
今年も7月7日から開催されます。

会場となるのは、”竜宮城”のなかでも、ひときわ濃密な装飾で彩られた旧3号館。
昭和10年の建築で、99段の長い階段廊下が、おもむきの異なる7つの部屋を結ぶ
そのつくりから、通称「百段階段」と呼ばれています。
各部屋の壁や欄間を埋めつくす装飾は、いずれも当時の著名な画家や
彫刻家の手によるもので、同館は、東京都有形文化財に指定されています。

7つの部屋を結ぶ「百段階段」

7つの部屋を結ぶ「百段階段」

ねぶたが展示される「漁樵(ぎょしょう)の間」

ねぶたが展示される「漁樵(ぎょしょう)の間」

この豪華絢爛な文化財建築を、祭りや伝統工芸品、アート作品など、
全国から集めたさまざまな「あかり」が照らし出す『和のあかり×百段階段』展。
今年4回目となる人気イベントですが、そのメイン展示として、
第1回から連続出展しているのが、青森のねぶたです。

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流派の異なる「ねぶた師」の合作

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今年の展示を担当したのは、北村春一さん、立田龍宝さん、手塚茂樹さんの3人。
それぞれ別の師匠をもつ、流派の異なる「ねぶた師」たちです。
第1回の同展にも参加した3人ですが、実は、ねぶた師の合作というのは、
本場青森ではまず見られません。

左から、立田さん、北村さん、手塚さん

左から、立田さん、北村さん、手塚さん

ねぶた師と呼ばれる青森ねぶたの制作者は、師匠のもとで修業を重ねたのち、
力をみとめられた者だけがひとり立ちし、祭本番の大型ねぶたをまかせられます。

ねぶた師にとって、ねぶた祭は、個々の想像力と技術を競う場。
賞を取り、評判が上がれば、制作するねぶたの台数も増えていきます。
したがって、本来、ねぶた師は一匹狼。お互いにライバル関係にあり、
共同でひとつの作品に取り組むのは、長いねぶたの歴史のなかでも
異例のことなのです。

『和のあかり×百段階段』での共作が実現したのは、3人のなかで、
もっとも早くねぶた師デビューした北村さんの呼びかけによるもの。
かねてから、ねぶた文化の保存・継承のため、また、それぞれの技術をもっと
高めていくためには、流派を超えた交流が必要と考えてきた北村さんは、
2014年、若手ねぶた師のグループ「ねぶた屋」を結成します。

その後デビューした立田さん、手塚さんもその趣旨に賛同し、
作品展や後継者育成のための講習会、ねぶたづくり体験教室など、
一匹狼ではできない活動に、ともに取り組んできました。
2015年の第1回『和のあかり×百段階段』展に参加したのも、こうした活動の一環。
また、同年、全国的に話題となった「スター・ウォーズねぶた」も、
彼ら「ねぶた屋」が手がけたもの。この3人を含む4人のねぶた師が、
それぞれ1台ずつ制作を担当しました。

今回、再び3人が結集して取り組んだのは、この展示のためのオリジナル作品。
前回の出展は、祭本番用のねぶたを再利用したものだったので、
今回は、初の3流派共同による新作ということになります。

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今年のテーマは竹取物語

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テーマは「竹取物語」。
かつて、目黒の地が、多くの竹林がある竹の子の産地だったこと、
会場となる「漁樵の間」の装飾が、平安貴族の雅な姿を描いていることなどから
着想を得たもので、3人とホテル雅叙園東京がアイデアを出しあい決定。
「かぐや姫」を北村さん、「武士」を立田さん、「帝」を手塚さんが担当しました。

立田さん制作「武士」

立田さん制作「武士」

北村さん制作「かぐや姫」

北村さん制作「かぐや姫」

手塚さん制作「帝」

手塚さん制作「帝」

水面に見たてた漆黒の床のうえ、「満月」を囲むように配された3つのねぶたに
あかりが灯ると、その姿が、まるで逆さ富士のように床に映り込みます。

これは、ねぶた祭の最終日に行われる「海上運行」をイメージしたもの。
実と虚、ふたつの「竹取物語」が、壁に描かれた絵画と呼応し、
幻想的な平安の世界がつくり出されています。

前回(2017年)「和のあかり×百段階段」展より

前回(2017年)『和のあかり×百段階段』展より

昭和初期の日本屈指の芸術家たちとねぶたの競演、そして、
「スター・ウォーズねぶた」以来となる3人のねぶた師の共同作業、
3流派による初の合作。ワクワクするのは、青森の人間だけではないはず。

同展では、このほかにも、過去最多63団体によるさまざまな「あかり」が、
それぞれの部屋の装飾に合わせて展示されます。
ふだんはNGの写真撮影もOKとのこと。
夏の一日、”昭和の竜宮城”で、日常を忘れるひとときを、ぜひ。

information

map

和のあかり×百段階段 2018 〜日本の色彩、日本のかたち〜

場所・会場:ホテル雅叙園東京(東京都目黒区下目黒 1−8−1)

TEL:03-5434-3140(10時〜18 時)

開催期間・時間:2018年7月7日(土)〜9月2日(日) 月曜〜木曜 10:00〜17:00(最終入館 16:30) 金曜・土曜・日曜・祝および8月13〜17日 10:00〜20:00(最終入館 19:30)

入場料:当日券 1,500円、館内前売り 1,000円(7月6日まで)、前売り券 1,200円 学生800円 小学生以下無料 ※すべて税込み

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