沖縄県・竹富島
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島に伝わる民具づくりの名人とおしゃべりしながらの数時間。リゾートと島の暮らしが少し近づくひとときは、星のやならではのサービスだ。
松竹昇助さんほど美しい民具をつくれる人はいないと島の人たちは口々に言う。島に自生する植物を採取して乾燥させ、繊維を細くほぐし、糸をとって紡ぎ、あるいは縄をない、カゴやゴザを編み、ほうきをつくる。使う植物は苧麻(ちょま/ブー)や阿檀(あだん/タコ)、月桃(げっとう)、クロツグ(マーニ)など。ビロウ(クバ)の葉は乾燥させて平たく伸ばし、傘のほか扇子や柄杓にもする。
おじいの生まれは1929年(昭和4年)。畑作業のかたわら母や祖母を見て覚えた手業は、やがて島の誰も真似することのできない熟練の域に。一方で、近代化する島で民具づくりは衰廃していった。しかしこのごろは、島のお母さんたちもおじいを見て技を覚え、後に続いている。星のやでも、手づくりのものの温かみや古くからの手仕事を大切にしていこうという考えで、おじいたちの作品を客室の備品などに積極的に取り入れている。
いつでも誰に対しても分け隔てなく、そのとき持てるものすべてを与え共有しようとするおじいの生き方、生きる姿勢は、星のやのスタッフに対しても観光客に対しても変わることはなく、外から入ってくる人たちにとって、おじいは島を知るための大きな窓のようである。
実は民宿の主でもあり、星のやで手業体験の申し込みがあると、自宅そばの作業場にストックしておいた素材を袋に詰め、おしゃれをしてバイクで出張していく。
「こないだ小さい孫に縄をなわせてみたんだよ。ひとりはあんまり好きじゃないね。もうひとりは一回でちゃんとできたよ。あの子は筋がいいんだな。今度はカゴを編むのをやらせてみようと思ってるさ」
扇子はビロウの葉で、コースターとテーブルセンターは月桃の茎などを使用してつくったもの。体験では主にテーブルセンターづくりに挑戦する。