menu

沖縄県・竹富島

 027

|156

朝が来れば、地平線と水平線が重なって見えるほど、
小さくてどこまでも平らな島で、見えてきたもの。

平線と水平線が重なって見える。人の暮らしは、まるで島の中央部に寄せ集められたようにかたまっている。ビルやマンションはおろか、2階建ての家さえほとんど存在しないので、「なごみの塔」と呼ばれる展望塔から見下ろせば、みんなのぜんぶがお見通し、のような気分になる。
家々は赤瓦屋根の平屋建てで、玄関といえるものはなく、大きく開いた居間の窓から出入りする。石垣に囲われているとはいえ、その石垣は、小学生の子どもの背丈くらいしかなかったりもするので、目隠しとしてはあまり機能していないような。みんなの暮らしは、なんとなくみんなの目線の高さでひとつにつながっている感じだ。

今、集落を囲む土地の大半は、ジャングルと牧草地帯になっている。昔は、ほとんどが畑だった。もはや当時を知る人は少なく、ジャングルに足を踏み入れる人もいない。1時間もあればぐるっと回れるくらい小さな3つの集落の中で、350人あまりが、つかず離れず、目の届く限りの範囲で生きている。

しかし、何度か朝を迎えるうちに、このぺらっと平坦な島のあちこちで、よく見えないが絶えずいろんなことがうごめいているということが、何となくにおってくるようになる。朝7時半。島の行事など一切を取り仕切る大山榮一公民館長(2012年度)の、ちょっと眠そうなアナウンスが島じゅうに響き渡って、少し経てばもう日帰りの観光客が石垣島から押し寄せる。
それまでの間は、島人だけの静かな時間。今日はこれからどこで何が始まるのか。
耳を澄ますと四方八方からいろんな気配が漂ってくる。