滋賀県長浜市・米原市(湖北地域)
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極上の日本酒、七本鎗を生み落とす、
本気同士のぶつかり合い。
滋賀県長浜市木之本町で470年続く歴史ある酒蔵、冨田酒造。
現在の蔵元、冨田泰伸さんは15代目だ。
地元への思いを、地酒「七本鎗」ブランドに込めて展開している。
もちろんそこで原料となるのは、滋賀のお米であり、
konefa samuraiのお米だ。
konefa samuraiのメンバーのなかでは、
今年は家倉さん、立見さん、清水さんのお米を使用している。
「七本鎗」の原料として協力してもらっている篤農家は
5社だということなので、
そのうち3社をkonefa samuraiが占めていることになる。
日本酒はお米が大切であることはいうまでもない。
しかし冨田さんが重要視しているのは、品質の良さはもちろん、
その先にある。
「長く付きあっていけるかということも見ています。
なかには商売ベースでしか考えない人もいますからね。
酒米よりも儲けのいい話が出てきたら、
すぐそっちに移ってしまう都合のいい人とか。
それよりも、自分のつくったお米がお酒になって
市場に流れるということにやりがいや魅力を感じて、
一緒にやっていこうという気持ちがないと続けていくのは難しいです」
そういう意味でkonefa samuraiとは年齢も近く
「向こう30年一緒にやっていくことが今から見える」という。
彼らの田んぼに行き、稲穂を見て、来年の栽培の展望を一緒に話す。
そんな熱心なコミュニケーションが良好な関係を築いている。
組合から買う場合、滋賀県産のお米ということはわかっても、
誰が作ったお米かはわからない。
でも今は完全にトレーサビリティが保証される。
冨田さんは、konefa samuraiにとって、良き兄貴分のような存在だ。
しかしただの慣れ合いの仲良しグループということではなく、
ときにその行動に叱咤激励が含まれているように思える。
「僕は、自分から“酒米をぜひつくってくれ”というアプローチはしませんね。
向こうからの想いもないと長続きしないので。
家倉くん、立見くん、清水くんは、そういう意味で出てきた3人です」
ちなみに家倉さんの無農薬米を使い、名前がパッケージに載った
いわゆるシグネチャーモデルの「七本鎗」はあるが、
立見さんと清水さんのお酒はまだない。
「清水くんは、まだちょっとテスト段階なんです。
酒米をつくって、売れる前からウチに売り先が決まっているなんて
ラクな商売ですけど、そうは甘くない。
だから少ない量で品種を見ながら、始めてくれました。
そういうのはうれしいんですよ。その慎重さに本気さを感じますからね」
一方、立見さんのお米は「米こうじ」となり、
“みたて農園のアキタコマチ”とネーミングされている。
農家としても、名前が出るのはうれしいだろうし、誇りにもなるだろう。
そこにも冨田さんなりの行動で示す愛情が込められている。
「去年は、家倉くんのお米で麹をつくったんです。
酒米の生産量は家倉くんの方が多い。
でも“うちのお酒をつくりたい”という立見くんの強い思いに、
何かやってあげたくて(笑)、まずは麹から。すごく喜んでくれました。
逆に言えば、もっとロットを増やして品質を上げていけば、
新米による“しぼりたて”にすることもできる、
という激励メッセージのつもりです」
それは当たり前のことなのだ。
konefa samuraiはみな専業農家であり、
冨田さんもまた冨田酒造を支えている。それで飯を食っている。
いい米をつくる、これをはずしては本末転倒。
モノを仕入れて売る人には、発信力があるのは当然だが、
彼らはつくり手なので、それが決して得意とはいえない。
自分たちですべてを処理していくことは難しいかもしれない。
だが、冨田さんは言う。
「作り手としての部分をめちゃくちゃしっかりやっているから、
めちゃくちゃパーフェクトな発信の仕方ではなくても、
何か伝わるんじゃないですか」
彼らのものづくりの一生懸命な姿勢に惚れて、サポートしたくなる。
そしてまたkonefa samuraiもその期待に応えていく。
そんないい循環を、冨田さんは自分のお酒という命を使って生み出している。