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この冬の西和賀は、
演劇とアートがアツい!
〈ギンガク〉企画委員
髙野由茉さん

岩手県西和賀町・ユキノチカラプロジェクト
vol.016

posted:2017.12.21  from:岩手県西和賀町  genre:暮らしと移住 / アート・デザイン・建築

PR 西和賀町

〈 この連載・企画は… 〉  岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000 人の小さなまちです。
住民にとって厄介者である「雪」をブランドに掲げ、
まちをあげて動き出したプロジェクトのいまをご紹介します。

writer profile

Tamaki Akasaka

赤坂 環

あかさか・たまき●フリーライター。岩手県盛岡市在住。「食」分野を中心に、県内各地を取材・原稿執筆。各種冊子・パンフレットの企画・構成・編集も行うほか、〈まちの編集室〉メンバーとして雑誌『てくり』なども発行。岩手県食文化研究会会員。

credit

撮影:奥山淳志

西和賀にんげん図鑑vol.8 髙野由茉さん(ギンガク企画委員)

「西和賀にんげん図鑑」vol.1の小堀陽平さんが運営に携わっている、
演劇専用の〈ギンガク(銀河ホール学生演劇合宿事業)〉は、来年の冬、7年目に突入する。
その企画委員として小堀さんとともに活動しているのが、髙野由茉さんだ。
日本大学芸術学部3年の時にギンガクに参加し、
その後、企画運営に関わって実家のある東京と行き来しているうちに、
「西和賀に住んだほうが、運営がスムーズかも」と、今年7月に移住。
11月中旬にはさっそく「豪雪」の洗礼を受けながらも、
これまでの経験や大学での学びを生かし、充実した日々を送っている。

「町内の人たちからはお米や野菜をいただくなど、本当にお世話になっています。町内産の野菜は味が濃くておいしいんですよ」と、西和賀の暮らしにすっかりなじんだ様子。

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髙野さんのお仕事拝見

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ギンガクに参加を決めたきっかけは、大学の掲示板に貼られた参加募集のチラシだ。
美術学科絵画コースを専攻していた髙野さんは、
その頃「地方での美術」ということに興味を持っていた時期だった。
美術界では「美術は都市で生産され、消費されるもの」という認識が一般的。
そんななかで、「美術は地方で何ができるのだろうか」
「地方だからこそできる美術はないのだろうか」と思い巡らしていた髙野さんは、
「ギンガクは、“地方での美術”を経験しながら考えることができる絶好の機会」
と捉えたという。
そして美術合宿〈湯田温泉峡風呂美術大学(通称「風呂美」)〉に参加し、
「地方でもできる美術がある」ことを確信。半年後の夏の企画にも参加した。

その後は、卒業・就職によりしばらく遠ざかったものの、2015年秋にまた西和賀に。
しかも、参加者ではなく、企画委員として、戻ってきたのである。
「ギンガクでは企画委員が参加学生にテーマを提示し、
その範囲内で学生から企画を提案してもらいます。
時には、提案企画がテーマにおさまるよう、企画委員が誘導することもあります。
作品制作は参加者に任せていますが、
そういう意味では、運営側の私たち企画委員もつくり手のひとり。
このスタイルがギンガクの特徴だと思います。
あとは、企画が実現するよう調整したりサポートしたりするのも私の仕事で、
具体的には、宿泊・食事の手配やとりまとめ、
町内のサポーター(ボランティア)とのやりとりなどです」

もともと表現者としてギンガクに参加して楽しんだ髙野さんが、
今は「つくり手」のひとりとはいえ、参加者をサポートする「黒子」としても活動している。
しかも、東京から西和賀町に移住して。
髙野さんをそこまでかき立てるギンガク企画委員の活動の魅力とは、何なのだろうか。
「ギンガクは設立してからほぼ6年ですが、まだ決まったかたちがあるわけではないので、
自分たちのアイデア次第でどんどん新しいことができる。そこに惹かれています。
それと、私自身が『ギンガクに参加して良かった!』と感じた喜びを、
ひとりでも多くの学生に味わってほしいという想いもありますね」
でも、もっとも大きな理由は、
参加学生たちと交流が自分の作品づくりの刺激になっていることだ。
「仕事や活動の合間に、学生時代に専攻していた絵やデッサンを描いています。
ギンガク企画委員として演劇にも関わって初めて、
絵を描くことと演劇をつくることは、『考えていることをかたちにする』という点で
同じだと気づきました。
演劇学生たちの制作・上演現場を見て、『ああ、こんな表現方法もあるのだなあ』と、
新しい発見があるんですよ」と、「表現者」の顔をのぞかせる。

ところで、気になるのは「雪国での暮らし」だ。
東京出身の髙野さんにとって、雪かき、雪道での車の運転……と初めてのことばかりに違いない。
「今の住まいを仲介してくれたおばあさんに、『冬は大変だよぉ』と脅かされましたが(笑)、
覚悟はしていたので、やるしかない! という感じです。
まずは先日から、雪かきが始まりました」
でもそれ以外は、特に不安はないと言い切る。
むしろ、移住前から、一面の雪景色はもちろん春の新緑、夏の深緑、秋の紅葉と
四季折々の風景に魅せられ、それが作品づくりのインスピレーションになることも経験していた。
また、ギンガクで知り合った町民が皆、やさしくあたたかい人柄だったので、
「困った時は相談すれば良い」と考えていたそうだ。

移住前、唯一困っていたのは働き口だったが、
それも今年5月、ギンガクの活動で西和賀町を訪れた際に、
町の生涯学習課のアルバイトとして採用が決まった。
以来同課で、町立川村美術館・デッサン館の運営、美術作品のデータ管理などを担当している。

西和賀町出身の洋画家・川村勇の作品を展示している町立川村美術館。その施設や収蔵作品の管理という仕事には、大学での学びが生かされている。

また週2~3日は、西和賀高校美術部の外部講師としても活動。
美術部では、移住前にも小堀さんと一緒に「一日デッサン教室」などを行っていたが、
現在は作品づくりのアドバイスがほとんどだ。
特に今は高校生たちが、ギンガクの企画〈放課後のちいさな芸術家〉の一環で
短編アニメーション制作に取り組んでいるため、もっぱらそのサポートをしている。
「高校生たちがやりたいことに対して、お手伝いをする」というスタンスは、
ギンガク企画委員のそれと共通する。

西和賀高校美術部で外部講師をしている髙野さん。きっかけは、移住前に実施した「一日デッサン教室」だったという。

来年2月末には、銀河ホールで新規事業〈いわて銀河ホール高校演劇アワード〉が開催される。
またその少し前からは、3週間にわたる〈湯田温泉峡風呂美術大学2018冬〉もスタート。
今シーズンの冬の西和賀は、演劇・美術活動に携わる若者と、
それを支える髙野さんの熱気で、熱くなりそうだ。

profile

髙野由茉さん

1991年、東京生まれ。2013年冬に初めてギンガクに参加する。2014年に日本大学芸術学部美術学科を卒業後、香川県の美術館に就職し、2015年秋に退職。東京の実家に戻ったあと、西和賀町に通いながらギンガク企画委員として活動し、2017年7月に西和賀町に移住。同町生涯学習課でアルバイトをしながら、ギンガク企画委員、西和賀高校美術部の外部講師として活動する。

◎あなたにとって「ユキノチカラ」とは?

福島県の祖父母の家で雪遊びをした思い出へと、記憶をつなげてくれるもの。

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