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連載

ユキノチカラの主役たち(3)
“雪の力”の恩恵を受けた、
西和賀の農作物で新商品づくり

岩手県西和賀町・ユキノチカラプロジェクト
vol.011

posted:2017.3.31  from:岩手県西和賀町  genre:ものづくり / 食・グルメ

sponsored by 西和賀町

〈 この連載・企画は… 〉  岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000 人の小さなまちです。
住民にとって厄介者である「雪」をブランドに掲げ、
まちをあげて動き出したプロジェクトのいまをご紹介します。

writer profile

Tamaki Akasaka

赤坂 環

あかさか・たまき●フリーライター。岩手県盛岡市在住。「食」分野を中心に、県内各地を取材・原稿執筆。各種冊子・パンフレットの企画・構成・編集も行うほか、〈まちの編集室〉メンバーとして雑誌『てくり』なども発行。岩手県食文化研究会会員。

credit

撮影:奥山淳志

岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000人の小さなまちです。
雪がもたらす西和賀町の魅力あるコンテンツを、
全国へ発信していくためのブランドコンセプト〈ユキノチカラ〉。
西和賀の風景をつくりだし、土地の個性をかたちづくってきた雪を、
しっかりタカラモノとしてアピールしていくプロジェクトです。
昨年度の第1弾に続き、今年度も第2弾として4事業所による新商品が誕生しました。
西和賀ならではの気候や自然、食文化がぎゅっと詰まった味わいです。

「地元の野菜や特産品の西わらびをもっと活用したい!」 そんな熱い想いをカタチに

2月半ばのその日は、西和賀の冬では珍しい雨模様の天気だった。
アスファルトの道路は、所どころがシャーベット状。
でも脇の田畑には、厚い雪がこんもりと積もっている。
「昨年の12月中旬から1か月間ほど、この雪の下に人参や大根、
白菜などの野菜を保存していたんですよ」と説明するのは、
〈西和賀産業公社〉の副部長兼生産加工課長の廣瀬稔さんだ。

〈西和賀産業公社〉の廣瀬稔さん。

昨年度にどぶろく〈ユキノチカラ〉を開発した同社では、
今年度は地元の野菜を使って、
漬け物以外の、付加価値の高い加工品をつくりたいと考えていた。
そこで着目したのが、「雪」。
野菜を雪の中に保存して糖度を高め、「雪下野菜」として差別化し、
さらにその風味を生かしたドレッシングをつくることを思いついたのだ。

12月中旬から1月中旬の雪の中の温度は0度前後。ここに保存されることで、野菜の甘みは増す。

このドレッシング〈ユキノチカラ 生ドレ〉は、
〈雪下ばっけ〉〈山ぐるみ〉〈雪下人参〉〈雪下野菜〉の4種類。
「ばっけ」とは「ふきのとう」の方言で、
〈山ぐるみ〉には県内で採れたくるみを使っている。
4種類ともそれぞれの素材の味を生かすため、
化学調味料を使っていない点もこだわりだ。

〈ユキノチカラ 生ドレ〉4種。どれもとろみがあるので、ドレッシングとしてはもちろん、ディップや肉料理のソースとしてもおすすめ。

今年度開発したもうひとつの商品が、〈西わらびピクルス〉。
「当社ではすでに、西わらびの加工品として
〈西わらび水煮〉を製造・販売していますが、
年々生産量が増えている西わらびの用途を拡大するためにも、
西わらびを使って別の加工品をつくれないだろうかと考えていました。
水煮はおひたしなど和風のイメージなので、
今回は洋風のピクルスに決まったんです」と、
同社の統括部長・藤原勝さんは開発の経緯を振り返る。

黒胡椒が効いたスパイシーなおいしさの〈西わらびピクルス〉。西わらびならではの食感や色を重視し、塩蔵した西わらびを戻して使っている。

そのほか同社では、すでに商品化している
〈寒ざらしそば〉〈西わらび水煮〉もパッケージをリニューアルした。
前者は、ソバの実を冷水に浸したあと寒風にさらして、アクや雑味を抜いたもの。
ひと手間もふた手間もかけただけあって、
できたそばは甘みと風味が強く、喉ごしが良い。
また、アクが少なくやわらかく粘りのある西わらびを、
一年中楽しませてくれるのが後者。
どちらの商品もすでに安定した人気を獲得しているが、
今回パッケージのリニューアルによって「ユキノチカラブランド」に組み込み、
ブランド強化を目指している。

〈寒ざらしそば〉や〈西わらび水煮〉の味わいは、西和賀の冬の寒さや雪が育くんだもの。

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銀河高原ビールも「ユキノチカラ」に

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西和賀の水の魅力を堪能できるビール

県内一の積雪量を誇る豪雪は、春に豊かな雪解け水となって、里に恵みをもたらす。
その豊富で良質な天然水を使い、
「麦芽100%」「無ろ過」にこだわってビールをつくっているのが、〈銀河高原ビール〉だ。
同社で仕込み水として使っているのは和賀岳の伏流水で、
味わいがまろやかで飲みやすいとされる軟水。
「ビールの原料はほぼ水なので、
西和賀の水の良さ・おいしさを感じることができるビールをつくりたかったんです」と、
社長の小谷昇義さんは新商品〈ユキノチカラ白ビール〉開発にかけた意気込みを語る。

醸造中のビールをテイスティングする小谷社長。

〈ユキノチカラ白ビール〉は、大麦麦芽と小麦麦芽をブレンドしたホワイトビール。
一般的なホワイトビールでは、香りづけのためにスパイスなどの副原料を加えるが、
同社のビールはすべて麦芽100%なので、この新商品にもそれらを一切加えていない。
その代わり、水の良さを消さないよう穏やかな苦みが特徴のザーツホップを使い、
さわやかな酸味、ほのかな甘みが楽しめる味わいに仕上げている。

徹底管理された工場内で、仕込み・発酵が行われている。

もちろん同社がこだわる「無ろ過」タイプなので、酵母の旨みや香りが楽しめる。
しかも、上品な苦みとまろやかですっきりとした味わいなのだ。

きめ細かい泡も〈ユキノチカラ白ビール〉の魅力のひとつ。

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町産のお米とフルーツを使った、甘酒スイーツ!

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安心して食べられる米と、 そんな町内産の米を使った「食べる甘酒」

奥羽山系の豪雪地帯である西和賀が恵まれているのは、水だけではない。
豊かな森、それらの浄化による澄んだ空気。
しかも、農事組合法人〈アースコネクト〉の代表理事である
髙橋昭貴さんによると、同法人のある沢内・太田地区には肥沃土が多いという。
「米づくりの環境としては申し分ないこの場所でつくられているのが、
〈ユキノチカラ米〉。安心して食べていただけます」と、
同法人のメンバーで昭貴さんの息子である潤さんは胸を張る。

雪で覆われた沢内・太田地区の圃場。

同法人は、平成28年1月に沢内・太田地区の農業者により設立された。
メンバー7人のうち4人が30代。
「今は若手ですが、10年後には後継者問題に悩むことになる。
そうなる前に、家族にとらわれずに組織化したほうがいいだろうと、
太田地区の米農家4世帯が『合併』したんです」。

法人名は、「地球(土)とのつながり」の意。
農業者は土とつながっているから、という理由から名づけた。
また、消費者や地域社会とのつながりも大切にしており、
その姿勢は「地域の圃場を残していこう」
「消費者に自信のあるものを提供しよう」という経営理念にも表れている。

〈ユキノチカラ米〉の品種はあきたこまち。西和賀町のふるさと納税の返礼品として出荷されている。

将来は、農薬の使用量を半分以下にしたり有機肥料を加えるなど、
「体にやさしい米」をつくるのが夢。
今春からの試験栽培に向けて、メンバーの意欲はいっそう高まっている。

「法人化により、作業効率アップとコストダウンが実現できた」と喜ぶ髙橋 潤さん。

4つめの新商品は、〈やまに農産〉が開発した甘酒アイス〈あまゆきちゃん〉。
甘酒は1、2年前からブームになっており、
西和賀では「あまえっこ」というかわいらしい名前で呼ばれている。
同社の代表取締役である髙橋医久子さんによると、
昔は甘酒はおかゆと麹を電気釜に入れてつくり、
米や麹本来のやさしい味わいだったとか。
そんな懐かしい、そして市販品とひと味違った、
若い世代の人にも喜ばれる「甘酒」をつくろうと開発したのが、
〈あまゆきちゃん〉なのだ。

名前のとおりかわいらしいパッケージの〈あまゆきちゃん〉。

材料は甘酒の原料であるもち米と麹のほか、
自然の甘みを加えるための自社製ジャムのみで、すべて町内産・岩手県産。
ちなみに、同社では町内産の果実を使って8種類のジャムをつくっているが、
今回はそのなかでも色あいがきれいで栄養価が高い
〈いちご〉〈カシス〉〈さるなし〉を選んだ。

小さいキウイフルーツのような「さるなし」。美しい緑色も魅力。

「食べる甘酒」のキャッチフレーズどおり、
麹の風味が口いっぱいに広がるうえ、
うずまき状のジャムと果実が味と食感のアクセントに。
またシャーベット状のやさしい口どけは、まるで西和賀の春の雪のようだ。

こうして完成した4事業所の商品たちは、春の訪れとともに市場に本格デビューする。
昨年度の第1弾の商品たちとタッグを組み、
巻き起こす「ユキノチカラ旋風」への期待が高まる。
「ユキノチカラプロジェクト」の第2章は、幕を開けたばかりだ。

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