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連載

ユキノチカラの主役たち(1)
開発した商品は、
“昔ながら”と“いま”がつまった、
人にすすめたい西和賀の味

岩手県西和賀町・ユキノチカラプロジェクト
vol.007

posted:2017.2.14  from:岩手県西和賀町  genre:ものづくり / 活性化と創生

sponsored by 西和賀町

〈 この連載・企画は… 〉  岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000 人の小さなまちです。
住民にとって厄介者である「雪」をブランドに掲げ、
まちをあげて動き出したプロジェクトのいまをご紹介します。

editor's profile

Hiroko Mizuno

水野ひろ子

フリーライター。岩手県滝沢市在住。おもに地元・岩手の食や暮らし、人にまつわる取材や原稿執筆を行っている。また、「まちの編集室」メンバーとして、「てくり」および別冊の編集発行などに携わる。

credit

撮影:奥山淳志

岩手県の山間部にある西和賀町。 積雪量は県内一、人口約6,000人の小さなまちです。
雪がもたらす西和賀町の魅力あるコンテンツを、
全国へ発信していくためのブランドコンセプト〈ユキノチカラ〉。
西和賀の風景をつくりだし、土地の個性をかたちづくってきた雪を、
しっかりタカラモノとしてアピールしていくプロジェクトです。
今回は、「雪」そのものを楽しむ、西和賀ならではのアクティビティについて。
過去の連載はこちらから。

少しずつカタチになる〈ユキノチカラ〉、そこから感じるものは?

2月に行われるツアーはもちろんだが、2015年のプロジェクトスタートと共に、
第1弾として取り組んできた食ブランド〈ユキノチカラ〉の商品開発。
すでに町内でも〈湯夢プラザ〉など3か所で販売されている。
2016年は「岩手博覧会」「いわてデザインデイ」(盛岡市)をはじめ、
県内外のイベントにも出展した。ブランドイメージの白を基調にしたブースは
ユキノチカラの存在感を、静かながらも明確に打ち出している。
そんなユキノチカラブランドに期待を寄せるのは
2015年4月から西和賀町地域おこし協力隊員として働く溝渕朝子さんだ。

13年ぶりに西和賀に戻り、6次産業推進センターで働く溝渕さん。

実は溝渕さん、もともと西和賀町の出身。
「子どもの頃は山でアケビを取って食べたり、川原で遊んだり。
冬は家の庭にかまくらをつくったり、そり遊びで雪まみれになったり。
中学生になると、裏山でクロスカントリーとか、自然を満喫して育ちました」
高校卒業後は神戸の大学へ。卒業後も東京都内の企業に就職し、
営業部署で忙しい社会人生活を過ごした。
西和賀に帰るのは、盆と正月の年2回のみだったが、
そのたびに見上げる夜空の美しさによって
無意識に「ふるさとの存在」を確かめていたのかもしれない、と振り返る。
そして、東京での暮らしも9年を経た一昨年のこと、
「帰省した時に見た星がきれいで……、ふと帰ろうと思ったんですよね」
ちょうどタイミングよく募集されていた地域おこし協力隊員に応募。
いまは、町役場でふるさと納税の受付や返礼品発注などに携わる傍ら、
町内のさまざまな活動に関わる。
ユキノチカラプロジェクトに携わるひとりでもあり、
「日本初の取り組みが西和賀で始まっているってすごいですね。
デザインがいかに大切かを実感しています。
デザイナーの皆さんと一緒に仕事すること自体を、個人的にも楽しんでいます」
と顔をほころばせる。
未来への可能性を感じるモノやコトは、若者たちをふるさとへ呼び戻すきっかけにもなる。

〈湯夢プラザ〉のブース前でカタチになったユキノチカラブランドをアピールする溝渕さん。

では、そのきっかけになり得る〈ユキノチカラ〉から生まれた商品には、
どんなアイテムがあるのか?
その特徴や開発に携わった6事業者の思いなど、2回に分けて紹介していきたい。

この美しい雪は何を育むのか、そこから生まれた商品は?

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あの懐かしいお菓子が、新しい味で!

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サンタランドの素朴で安心・安全な〈ぽんせん〉

まず紹介するのは、懐かしくてやさしいお菓子
〈サンタランドのぽんせん〉だ。ぽんせんとは、
玄米やでんぷん粉などの生地を型に入れて焼いた素朴なお菓子。
ぽん、とすぐに焼きあがることが、名の由来だという。

サンタランド×小笠原雄大/デザイナー

そのぽんせんを、半世紀近くつくり続けてきたのがサンタランド株式会社だ。
かつては他県に本社を持つせんべい会社の製造工場だったが、10年ほど前に独立。
現在の社名で再スタートした。
前の会社時代から工場長を務める高橋文和さんは、ぽんせんひと筋29年のベテラン。
同社の商品は昔も今も、添加物、合成着色料、科学調味料、保存料を一切使っていない。
シンプルなお菓子だけに、味のアレンジは長く愛されるためにも重要なポイント。
文和さんは「健康的で安心・安全、誰もが楽しめるぽんせん」を食べてもらおうと、
常に新商品づくりに情熱を注いできた。
もはや覚えきれないほどの味を生み出したが、
現在も、玄米、小魚、キャラメル、チーズなど
バラエティに富んだ約50種のぽんせんを製造している。

カワイイ外観のサンタランド。

昔ながらの機械で、ひとつずつ焼きあげる。

子どもにも安心して食べさせられるおやつ。

そして、〈ユキノチカラプロジェクト〉参加にあたって、
新しく登場したのが〈雑穀ぽんせん〉と〈こんにゃくぽんせん〉だ。
雑穀ぽんせんは、西和賀産玄米を生地に、
岩手産の大麦、あわ、ひえ、黒豆をミックスして焼きあげた。
サクッとした歯ざわりと玄米の香り、雑穀それぞれのおいしさが口の中に広がり、
しょうゆとゴマふたつの味を楽しめる。
こんにゃくぽんせんは食べた時の食感がおもしろく、クセになると評判だ。
国産こんにゃく粉とでんぷん粉を練り合わせた生地をベースに、
岩手産イサダ(桜あみえび)味とワカメ味、西和賀産しいたけ味の3種類。
子どものおやつはもちろん、「お酒のつまみにもぴったりですよ」と文和さん。
昔ながらの機械を使って、一枚一枚焼き上げる作業は、
手づくりと変わらない手間ひまがかかる。
新パッケージはそんなつくり手の温もりが感じられる。

素朴でおいしいサンタランドのぽんせんたち。

湯田牛乳をたっぷり使ったスイーツ〈ゆきぼっこ〉

湯田牛乳公社×デザイナー/木村敦子

西和賀町といえば、昔から酪農が盛んな土地。その牛乳を使った
乳製品の開発や販売を行っているのが株式会社湯田牛乳公社だ。
この会社で、湯田牛乳を使った製品づくりに
日々思いをめぐらせる開発担当者・高橋法子さんがいる。
西和賀町で生まれ育った法子さんは、
「県外の大学に進学した際も、牛乳を送ってもらっていた」
というほど湯田牛乳への愛が強く、現職は天職だと笑う。

商品開発には妥協しない法子さん。

入社以来、〈やわらかカスタード〉〈プレミアム湯田ヨーグルト〉〈牛乳寒天〉など、
数々の人気商品を送り出してきた。
そして、〈ユキノチカラプロジェクト〉で西和賀の雪をイメージしてつくった
自慢の新商品が〈ゆきぼっこ〉だ。
湯田牛乳をたっぷり贅沢に使い、生クリームと砂糖を加えたゆきぼっこは、
もっちりとした食感と口に入れた時の牛乳の香り、
舌に広がる濃厚な味わいがたまらないミルクプリン。
牛乳の優しい甘さがクセになる一品である。

1個100キロカロリーというヘルシーさもウリの〈ゆきぼっこ〉。

おいしさの秘密は、言うまでもなく原材料の湯田牛乳だ。
酪農家が自家生産した牧草やトウモロコシを食べて育った牛は、
厳しい寒さの西和賀で冬を越し、乳質のいい生乳をつくる。
西和賀と金ヶ崎、花巻の酪農家15戸から毎日集荷される新鮮な生乳は、
たんぱく質やカルシウムなどの栄養素を損なわないように、低温で殺菌。
その素材のおいしさを存分に引きだそうと、何度も何度もスタッフ皆で試作を繰り返し、
滑らかな口触りのミルクプリンが完成した。

西和賀産の湯田牛乳をたっぷり!

厳しい寒さが良質な生乳を生む。

町内の直売所〈結ハウス〉では湯田牛乳のソフトクリームも人気!

ゆきぼっこのネーミングは?と法子さんに尋ねてみると、
雪を踏んだとき長靴の底にへばりつく「雪ぼっこ」から名づけたとのこと。
ギュッと踏みしめた雪がくっつく感覚は、雪国に暮らす人間だけが知るものだが、
「冬の西和賀に来れば、存分に体験できますよ」と笑う。
「展示会では自社商品だけでなくブランド全体のことや西和賀全体のこともアピールするようになり、プロジェクトメンバーとの一体感が生まれました」と法子さん。
ゆきぼっこを商品としてどう伝えるかだけでなく、
どうやったら西和賀をわかってもらえるかを考えることで、
故郷・西和賀の「らしさ」を見直すきっかけになったと話す。

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西和賀のどぶろくはどんな味?

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すっきりまろやかな西和賀産どぶろく〈ユキノチカラ〉

西和賀産業公社×小笠原一志/デザイナー

3つ目は、西和賀町初のどぶろく、その名も〈ユキノチカラ〉だ。
「すっきりとした酸味があって飲みやすいお酒です。
まろやかな甘口で、女性にも楽しんでもらえると思います」
製造元である株式会社西和賀産業公社の米澤清人さんは、太鼓判を押す。

西和賀産業公社の米澤さん。

西和賀産業公社は、地元の豊富な資源を生かすため幅広い事業に取り組んでいる。
西ワラビや西和賀産ソバの栽培や特産化に留まらず、温泉施設やレストランの経営など
西和賀オンリーワンの価値を発信するため果敢に挑戦してきた。
昔から各家々で味わっていた〈大根の一本漬け〉のブランド化にも取り組み、
オーナー制による大根の一本漬けは、
県内外にリピーターを持つ人気商品となっている。

毎年およそ2万本におよぶ大根の一本漬けを仕込む。

大根は冬の大事な保存食。キレイに並んでいるのは、寒ざらし中の凍み大根だ。

売り込む商品がいろいろあるなかで、なぜ、どぶろくづくりを?
「気候風土はもちろん、西和賀には魅力的な食べ物がたくさんあります。
おいしい食があるのだから、それに合った地元の酒があればもっといい。
食と酒を一緒にアピールできたらと考えたのがきっかけです」と米澤さん。
とはいえ、仕込みを担当する米澤さんをはじめ、同社のスタッフにとって
どぶろくづくりは初めての試みだった。
最初は、どんなどぶろくをつくりたいかをイメージするため、
他地域のどぶろくを味わって、「目指す味」を舌や香りで確かめていった。
試飲や視察をするなかで、手本としたのは気候や環境が西和賀町と近い
岩手県遠野市でつくられる〈MILK-INN江川〉のどぶろくだ。
仕込み水に使ったのは、西和賀町左草地域の清らかな地下水。
西和賀産の米を低温でゆっくりと発酵させて、上品な甘口に仕上げた。
まさに西和賀ならではの価値を生かしたお酒が、昨年2月に誕生したのである。

芳醇な香りがあふれる〈ユキノチカラ〉。

仕込み樽のどぶろくは糖度15度を超える。

初年度は1000本を仕込んだが、早々と完売。
デビューから2年目の今年は仕込み量を増やし、売り込みにも気合い十分だ。
「プロジェクトの取り組みを通じて、雪がもたらす恵みをあらためて感じています。
デザイナーさんと打ち合わせを重ねる過程で、
自社の商品を押し出すことだけでなく地元事業者同士のつながりを持ち、
西和賀全体でひとつのイメージを打ち出していくことが大事だと実感しました」と米澤さん。
ユキノチカラによるブランディングは、
事業者ひとりひとりの意識にも小さな変化を生みだしている。

ユキノチカラプロジェクトから生まれた商品の数々。
次回も引き続き、その主役となる事業者と商品を紹介します。

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