連載
posted:2017.1.13 from:岩手県西和賀町 genre:食・グルメ / 活性化と創生
sponsored by 西和賀町
〈 この連載・企画は… 〉
岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000 人の小さなまちです。
住民にとって厄介者である「雪」をブランドに掲げ、
まちをあげて動き出したプロジェクトのいまをご紹介します。
editor’s profile
Tamaki Akasaka
赤坂 環
あかさか・たまき●フリーライター。岩手県盛岡市在住。「食」分野を中心に、県内各地を取材・原稿執筆。各種冊子・パンフレットの企画・構成・編集も行うほか、〈まちの編集室〉メンバーとして雑誌『てくり』なども発行。岩手県食文化研究会会員。
credit
撮影:奥山淳志
山菜、そば、きのこ、寒干し大根……。
町内にはこれら西和賀ならではの味を楽しめる店がいくつかあり、
〈母ちゃんの店わがや〉もその一軒だ。
驚くことに、この店は1年間に町の人口と同じ約6000人もの客が訪れる。
しかも、12月から3月の冬季は休業なのに、である。
同店が町内北部の沢内貝沢地区にオープンしたのは2009年4月。
カタクリの群生地そばに建つ店舗は築100年以上の古民家で、
太い梁や柱、壁に飾られた民具、野の花の生け花など郷愁感あふれる。
店名のとおり、自分の家に帰ってきたような、ゆったりくつろげる空間だ。
この雰囲気と並ぶ、同店のもうひとつの魅力が、料理。
町内産そば粉100%の十割そばと、やはり町内産の食材を使った
煮しめや、季節の天ぷらなどの郷土料理が自慢で、
「添加物を使わない」「できるだけつくりたてで提供する」ことにこだわる。
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〈わがや〉を運営するのは生活研究グループ〈ちゃい夢の会〉で、
メンバーは佐々木美代子さん、児玉美穂子さん、児玉たえ子さんの3人の母ちゃんたち。
2001年に地場産品の加工場を開設し、
自分たちが田畑でつくった食材をのしもちや南蛮みそ、
炊き込み山菜ご飯の素などに加工していたが、地域のイベントを機に、
この古民家を借りて農家レストランとして営業を始めた。
「加工品づくりも、店の料理づくりも、私たちにとっては同じ。
先人の知恵や『生活を大切にする心』を伝えたい、という想いでやっています」
と話す会長の佐々木さんは、岩手県が認定する「食の匠」(*1)でもある。
西和賀町の先人の知恵を代表するものが、保存食だ。
山菜などの塩蔵品、冬の屋外に干して冷凍・解凍を繰り返してつくる
凍み(しみ)大根(寒干し大根)、凍み豆腐……。
「山菜などの保存は、塩蔵が一番。本来の味や食感、見た目を
もっとも良く保つことができます。ポイントは、採れたてをすぐに使うこと。
その点、私たちは自分たちの畑でつくった食材を使っているので、
より質の良い加工品をつくることができるんです」
また、凍み大根・凍み豆腐は冬の寒暖差を利用してつくるものだが、
西和賀は特に寒暖差が大きいので食材の甘みが際立つという。
さらに、西和賀の豪雪も食材の魅力につながっている。
例えば特産品の〈西わらび〉は、冬の豪雪によって土や根が守られ、
春の豊富な雪解け水によって短期間に成長するため、
独特のやわらかさや粘りが生まれるといわれる。
つまり西和賀の食は、西和賀の冬の風土や「雪の力」によって育まれているのだ。
これら滋味豊かな西和賀の食は、
2月に開催される〈ユキノチカラツアー〉でも楽しめる。
雪に触れながら、ぜひこの機会に味わってほしい。
ツアーについての詳細、応募はこちら。 http://travel-link.jp/archives/7004
information
母の店 わがや
住所:岩手県和賀郡西和賀町沢内川舟3-647-1
TEL:0197-85-5320
定休日:冬期休業(12月〜3月)
ちゃい夢の会
1996年に結成。2001年に工房を設立し、会員が栽培する農作物など地場産品を使った加工品の製造・販売をしている。〈わがや〉が立地する一帯は西和賀のなかでも特に寒さが厳しい地域なので、12~3月は同店を休業。その間、加工品の製造に力を入れている。
◎あなたにとって「ユキノチカラ」とは?
西和賀ならではのおいしい食材を育むもの。
information
〈ユキノチカラツアー〉参加者募集中!
この冬、西和賀では、〈ユキノチカラツアー〉と題して、〈雪あかり〉の灯、スノートレッキング、温かい郷土料理、砂ゆっこなどを体験できるツアーを開催します。
ツアーについての詳細、応募はこちらをご覧ください。
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