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達人の案内で歩く!
スノートレッキングで
西和賀の雪を満喫

岩手県西和賀町・ユキノチカラプロジェクト
vol.005

posted:2017.1.13   from:岩手県西和賀町  genre:旅行 / 活性化と創生

sponsored by 西和賀町

〈 この連載・企画は… 〉  岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000 人の小さなまちです。
住民にとって厄介者である「雪」をブランドに掲げ、
まちをあげて動き出したプロジェクトのいまをご紹介します。

writer profile

Tamaki Akasaka

赤坂 環

あかさか・たまき●フリーライター。岩手県盛岡市在住。「食」分野を中心に、県内各地を取材・原稿執筆。各種冊子・パンフレットの企画・構成・編集も行うほか、〈まちの編集室〉メンバーとして雑誌『てくり』なども発行。岩手県食文化研究会会員。

credit

撮影:奥山淳志

岩手県の山間部にある西和賀町。 積雪量は県内一、人口約6,000人の小さなまちです。
雪がもたらす西和賀町の魅力あるコンテンツを、
全国へ発信していくためのブランドコンセプト〈ユキノチカラ〉。
西和賀の風景をつくりだし、土地の個性をかたちづくってきた雪を、
しっかりタカラモノとしてアピールしていくプロジェクトです。
今回は、「雪」そのものを楽しむ、西和賀ならではのアクティビティについて。
過去の連載はこちらから。

のべ9000人が参加! 西和賀ならではの「雪の楽しみ方」を達人に教わる

年間累積降雪量が10メートルにもおよび、
時には1日の積雪量が2メートルを超えるという西和賀。
そんなまちの個性づくりに欠かせない雪と、
雪がもたらす風景・食・文化を体感できる1泊2日の〈ユキノチカラツアー〉が、
2月11日~12日に実施される。
ツアーは、町の一大イベント〈雪あかりinにしわが〉の日程に合わせたもの。
雪像やかまくらをつくり、その中にキャンドルをともす〈雪あかり〉は幻想的な美しさで、毎年町民はもちろん多くの観光客をも魅了している。

昨年の〈雪あかりinにしわが〉。町民参加型のイベントとあって、町内のあちこちで幻想的な光景が広がる。

ツアーではこの雪あかりのほかにも多彩なメニューを揃えており、
雪あかりとならび西和賀の雪の魅力を体験できるとして人気なのがスノートレッキングだ。
案内するのは、自然観察指導員・写真家で、西和賀の自然をこよなく愛する瀬川強さん。
瀬川さんは隣接する花巻市の出身だが、
29歳の時、渓流釣りで訪れた西和賀でカタクリの花の群落を見て感動し、移住を決意。
最初は電気のない作業小屋でひとりで暮らし、
その後1989年に家を建てて家族とともに定住した。

瀬川強さんと奥様の陽子さん。

ヒマラヤに2度も行くなど国内外のさまざまな自然を目にしてきた瀬川さん。
そんな瀬川さんが移住を決意するほど感動したというカタクリの花には、
どんな魅力があるのだろうか。
「カタクリは群がって咲く花で、群落はまるでピンク色の絨毯のようでした。
しかもこの花は咲くまでに7~9年間もかかるので、
その群落があるということは一帯の自然環境が何十年も変わらず守られているという証拠。
日本にもこんなすばらしい場所があるのだと感動したんです」

自然保護や古民家保存などの活動にも携わる瀬川さん。西和賀に移住して30年近く経つが、行政の協力もあって町内の自然環境に大きな変化はないという。

瀬川さんが撮影したカタクリの群落の写真。町内には群生地が数か所ある。雪解けとともに咲くカタクリは、西和賀に春の訪れを告げる花だ。写真:瀬川さん提供

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西和賀のすばらしい自然環境を伝えるために

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26年間でのべ9000人が、自然観察を楽しむために西和賀へ

1990年12月、瀬川さんは西和賀のすばらしい自然を足元から伝える活動をしようと、
町内で自然観察会を実施する〈カタクリの会〉を設立。
翌年1月から月1回のペースで、
同じく自然観察指導員の奥様・陽子さんと〈奥羽自然観察会〉を始めた。

ブナの森を散策する陽子さん。陽子さんは〈カタクリの会〉事務局として、観察会の案内や報告を掲載する『カタクリ通信』を年6回発行する。写真:瀬川さん提供

観察のフィールドは町内全域で、実施時期に西和賀の自然をもっとも楽しめる場所を選び、
「初冬の森」「夏の渡り鳥」「ブナの森の滝巡り」「秋の花と木の実」などテーマを決める。
1回目の参加者は友人ほか3人だったが、翌月から増え始め、
あっという間に定員の20人が埋まった。
特にカタクリが咲く4月の観察会は人気で、多い年には70人に達したことも。
ひとりの自然観察指導員が案内できる人数は10人まで、と決めているので、
20人を超えるときには指導員を増やして実施することもあるという。
また、子どもから大人まで誰でも参加できるようにしている分、安全面には特に配慮し、
必ず1週間以内の下見を欠かさないのも同会ならでは。
だから26年間、自分たちの体調はもちろん天候などを理由に休んだことは1回もなく、
事故も1回もない。
ちなみに今月で313回を迎え、これまでの参加者はのべ9000人近くにものぼる。

観察会には、北上市や花巻市など近隣市町村のほか首都圏からも参加する。半分以上はリピーターで、毎月埼玉県からやって来る人もいるとか! さらに下見に同行する人も増えて、〈下見観察会〉も始まった。写真:瀬川さん提供

瀬川さんは写真集など著書も多い。写真撮影は20代で始めたが、当初の「目に見える風景」から、「意識しないと見えない、心象風景」へと、撮りたいものが変化していったという。

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冬の西和賀はここがすごい!

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「自然観察のプロ」が語る、西和賀の冬の魅力

こうした観察会や写真などで四季折々の西和賀の自然の魅力を紹介する瀬川さんに、
「一番好きな季節は?」と難しい質問をしてみた。
「う~ん、それぞれ好きですが、冬がやはり一番なのかな。
冬が終わると、花が一気に咲いて冬眠していた動物が目を覚ます。
そういう意味で冬は『準備の期間』で、
いろいろなイマジネーションをふくらませることができますから、好きですね」
もちろん、冬ならではの魅力もたくさんある。

窓にできた氷の文様。写真:瀬川さん提供

ひとつめは、「美しいこと」。
そしてその美しさは、屋外に出て初めて目にすることができる。
例えば、氷紋(凍った湖などに現われる氷の模様)、
冠雪(岩などに積もった雪のかたまり)、氷瀑(滝などが凍って帯状になったもの)
といった雪や氷の造形はその代表。
ときには雪の上の動物の足跡が、芸術的な模様をつくり出すこともある。
ふたつめは、「森が明るいこと」。
広葉樹の森には葉がないので明るく、観察しやすいという。
3つめは「積雪によって、他の季節よりも高い位置から観察できること」。
「同じ場所でも、目線が異なると視界も異なる。時には『空中散歩』しているような気分を味わうこともできます」
4つめは「雪があるので奥まで入って行けること」。

自宅前に広がる錦秋湖の冬。写真:瀬川さん提供

実はこれらすべてを、2017年2月11日に開催される〈ユキノチカラツアー〉の
スノートレッキングメニューで体験できる。
積もった雪をかき分けて歩くスノートレッキングは、
かんじき(雪の上を歩くための補助用具)を履けばラクラク。
トレッキングコースには〈氷瀑スポット〉も含まれるので、
冬の西和賀ならではの造形美を自分の目で見ることができる。

スノートレッキングの目玉は〈氷瀑〉。その迫力と美しさは圧巻だ。写真:瀬川さん提供

運が良ければ、動物たちの足跡も発見できるかも。
その後は、散策で冷えた体を町内に点在する温泉で温めるメニューもあり。
温泉の湯で熱した砂に埋まる〈砂ゆっこ〉など個性的な温泉も楽しめる。
地元の人々の心づくしのおもてなしや、西和賀でしか体験できない驚きや感動と出会えるはずだ。
ぜひ一度体験してもらいたい。

〈砂ゆっこ(槻沢温泉)〉は、町内産出の天然砂を温泉の湯で熱したもの。浴衣を着て砂に埋まるというユニークなスタイル。

information

〈ユキノチカラツアー〉参加者募集中!

この冬、西和賀では、〈ユキノチカラツアー〉と題して、〈雪あかり〉の灯、スノートレッキング、温かい郷土料理、砂ゆっこなどを体験できるツアーを開催します。

ツアーについての詳細、応募はこちらをご覧ください。

岩手県西和賀町・ユキノチカラプロジェクト

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