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日本のファッションブランド
が仕掛ける、
サステナブルなビジネスとは?
「TEGE UNITED ARROWS」後編

貝印 × colocal
これからの「つくる」
vol.010

posted:2014.6.24   from:東京都渋谷区  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

前編:買う人もつくる人もハッピーに。アフリカメイドのエシカルファッション。「TEGE UNITED ARROWS」前編 はこちら

アフリカの職人が自立するために

ユナイテッドアローズとエシカル・ファッション・イニシアティブ
(Ethical Fashion Initiative、以下EFI)が組み、
2014 S/Sから始まったブランド「TEGE UNITED ARROWS」は、
アフリカでものづくりを進めている。

「ぼくたちにとってはいいものづくりができるし、
お客様も面白いプロダクトを手に入れることができます。
そして現地にお金が落ちる。すごくいいプロジェクトだと思いました」と、
ユナイテッドアローズでこのプロジェクトを進めている
栗野宏文さんは始めた理由を話してくれた。

マサイの女性たち

栗野さんたちを歌と踊りでもてなしてくれたマサイの女性たち。(写真提供:EFI)

現在サブサハラと呼ばれるサハラ砂漠以南の地域では、
石炭や石油、ダイヤモンド、ウラニウムが採れることから、各国に注目されている。
それら資源を乱獲するよりは、
現地に産業を興してお金を回すプロジェクトが生まれたほうがいい。

ユナイテッドアローズとEFIの取り組みには、特に女性の社会進出を促す側面がある。

「ゴミを拾ったり、木を伐採したり、
さらには血を売ったりしてお金を稼いでいる現状があります」

EFIの庭野和子さんが、教えてくれた現地の現状はつらいものだ。
その悪循環を止める糸口がEFIの活動といえる。

「一時的にお金をあたえるような援助ではなく、職をあたえ、自立を促すこと。
現地ではまだ女性の地位が低いのですが、
仕事を持つと家族や地域に尊敬されるようになり、
やがてコミュニティの長になっていきます。
するとそのお金で子どもを学校や病院に行かせることができたり、
携帯電話や銀行口座を持てるようになります」と
実際に起こっている事例をあげてくれた。

仕事をしていくことでこのような好循環が待っているということを、
彼女たちは気づいていないということが問題だという。
だから自分たちにとっていかに良い影響があるかと、
身をもって知る機会をつくる必要があるのだ。

糸を紡ぐ作業中

ブルキナファソの木陰では糸が紡がれている。(写真提供:EFI)

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TEGEという継続的なブランド化で生まれるもの

アフリカのさまざまな地域で、
ビーズや刺しゅう、織物、染め物などのものづくりコミュニティがある。
そのハブセンターがケニアのナイロビにある。

「現状では国連主導で動いていますが、所長はケニア人女性ですし、
今後、自主運営してもらうことを目指しています」と庭野さん。

ブルキナファソの織物工房

ブルキナファソの織物工房。(写真提供:EFI)

「基本的な技術はあるのですが、村のみやげものをつくっているレベルでした。
しかし洗練されたデザインへのリクエストに応えていくうちに、
スキルもアップしていきます」

みやげものでは、“試しに買ってみる”、“記念に買ってみる”という一度きりの動機。
しかしユナイテッドアローズと組むことで、サステナブルなビジネスになっていく。

実際に栗野さんが昨年7月にケニアで革のサンプルを見たときには、
「このままでは使えない」と思った。
その後、イタリアの革工場に、アフリカの職人が学びに行ったという。
するとすごく革の処理も良くなったので、結局バッグのハンドルに使うことにした。
やりがいが目の前にあると、かれらに職人魂が芽生えてくるのだ。

「それもあってブランドにしてしまったのです」と、
栗野さんがブランド化の理由を話す。

他社では、ブランド内のいくつかの商品のみで
このプロジェクトを利用するケースも多いが、
ユナイテッドアローズではひとつのブランドにしてしまった。
TEGE UNITED ARROWSというブランドの商品は、
すべてEFIの商品ということになる。
ひとつの商品だと、シーズンが終わってしまったら一旦は終了となる。
しかしブランドになっていれば、かたちを変えながら継続的な仕事が生まれ、
職人たちの仕事へのモチベーションや、スキルアップへの向上心も保つことできる。

ハンドルにレザーが使われたトートバッグ

ハンドルのレザーはなめらかな仕上がり。

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〈TEGE〉というブランド名からはアフリカっぽい響きが感じられる。
栗野さんはこのプロジェクトにぴったりのネーミングを見つけ出した。

「“愛”とか“友だち”とか、現地のバンバラ語では何というのか聞いたんですけど、
思い出すこともできないくらい難しくて(笑)。
ちなみに“手”は?と聞いたら“テゲ”というんです。これだと思いましたね。
“手”に“芸”という漢字もすぐに思い浮かびましたし、
現在のロゴマークも半分思いついていました」

TEGEのロゴマーク

手と手を取り合ったロゴマーク。

ユナイテッドアローズはアフリカに店舗を持っていないが、
現地で知名度があがっているという。
それはものづくりをしているひとたちからの声。
“わたしはTEGE UNITED ARROWSの仕事をしている”という
プライドが生まれているのかもしれない。

「世界一品質にうるさい日本ですから、
そのニーズに応えるために、職人たちの技術も向上して、
どんどんいいものがつくれるようになっていきます。
そうした意欲がわくのは、両者にとっていいこと」と庭野さんは話す。

「もともと技術があるひとたち。
そこにヨーロッパなどのプロフェッショナルな技術を教えてあげると、
覚えが早くて驚きます。日進月歩です」と栗野さんもいう。

援助という一時のものではなく、継続的な仕事があり自立していければ、
どんどん生活環境は良くなる。
その仕組みをEFIがつくり、ユナイテッドアローズが加わった。
現地のものづくりをリスペクトし、まずは良きものづくりをする。
“三方良し”の関係を、ワールドワイドで生み出す。
そんなストーリーをTEGE UNITED ARROWSは語っていくのだ。

足も器用に使って織っていく

足も器用に使って織っていく。織機の原型ともいえる。(写真提供:EFI)

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Ethical Fashion Initiative(EFI)

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