colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧

連載

牡鹿半島の未来をえがこう OPEN LAB.

TOHOKU2020
vol.017

posted:2013.6.5  from:宮城県石巻市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  2011年3月11日の東日本大震災によって見舞われた東北地方の被害からの復興は、まだ時間を要します。
東北の人々の取り組みや、全国で起きている支援の動きを、コロカルでは長期にわたり、お伝えしていきます。

writer's profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:川瀬一絵(ゆかい)

自然とともに歩む復興を目指す「グリーン復興プロジェクト」。

2013年5月24日。
東日本大震災により被災した三陸地域の復興に貢献するために
「三陸復興国立公園」が指定されました。

環境省はいま、三陸地域の自然環境を活用した復興を目指し
国立公園の創設を核とした「グリーン復興」を進めています。
再編成を検討する地域は、青森県八戸市の蕪島から
宮城県石巻市・女川町の牡鹿半島までと、その周辺の自然公園。
3県にまたがる太平洋沿岸部の南北の延長は約220km、
津波により、多大な被害を被ったエリアです。

コロカルでも幾度かにわたり
その復旧や復興への取り組みのようすをお伝えしている牡鹿半島も、
国立公園化(三陸復興国立公園への編入・2014年を予定)に向けて動き出しました。

三陸特有のリアス式海岸が続く牡鹿半島の産業のなかで最も大きな割合を占めていたのが漁業・水産養殖業。東日本大震災によって多くの漁港、漁船、養殖設備が大きな打撃を受けた。(→TOHOKU2020 石巻カキ漁師新生プロジェクト、スタート!

復興以前に、海岸の復旧と整備。土のうが積まれた堤防の風景が牡鹿半島のそこかしこに。住民のなかには、「高い堤防だらけになってしまって、景観が損なわれるのも……」との複雑な思いも。

そもそも日本の国立公園は、
〈我ガ国天与ノ大風景ヲ保護開発シ、一般ノ利用ニ供スルニ
 国民ノ保険休養上緊急ナル時務ニシテ且外客誘致ニ資スル所アリト認〉
めて、昭和6年に法として制定されたものですが、
環境省がつくればハイそれで終わりではなく、
その国立公園を舞台に、観光や産業、暮らしが花開いてこそ意味がある……。
制度の創設以来80年の長い時を経て、国立公園のあり方、
国や行政の関わり方も、次第に変化しようとしているようです。
守るから使うへ、周遊型・団体旅行から、体験型・滞在型、エコツーリズムへ。
そういった変化をとらえた思いが官民の枠を超えてひろがり、つながり、
南三陸金華山国定公園の国立公園化に向けて立ち上がったのが、
「牡鹿半島の未来をえがこう OPEN LAB.」です。

野生の鹿の繁殖が急増し、半島の生態系を乱し、交通事故などにより住民の生活にも影響を与えるようになった。会場では、プロの観点からも住民からも、一刻も早い鹿害対策が叫ばれた。(→TOHOKU2020「OCICA」と「ぼっぽら食堂」

鹿に食べられないように、茎を短く、地を這うように花をつけるという独特の進化を果たした牡鹿半島のたんぽぽ。ワークショップのなかで指摘されて驚いた。

未来はいつのまにか誰かが決めているものではなく。

さかのぼること約1か月前の4月29日。
春の気配がまだ残る石巻市立大原小学校の休日の体育館に
たくさんのおとなたちが集まりました。その数、180名。
「みんなで話そう。みんなで参加しよう。みんなで語ろう。」
掲げられたコピーを見ても、ただの住民説明会ではなさそうです。

主催者である環境省東北地方環境事務所から
計画の概要と今後の動きについての説明があったのち、
次々とマイクを握るプレゼンターたちが
あたらしい国立公園を、観光や産業、暮らしにどう生かしていくか、
事例やアイデアを提案していきます。その顔ぶれは、
東日本大震災における建築家による復興支援ネットワーク「アーキエイド」から
貝島桃代さん、小嶋一浩さん、志村真紀さん、大西麻貴さん、
「npoTRネット(鶴見川流域ネットワーキング)」の岸由二さん、
「Think the Earth」の上田壮一さん、プロジェクトデザイナーの古田秘馬さん、
「ishinomaki2.0」の西田司さん。
ファシリテイターに、コミュニティデザイナーの山崎亮さん。
いずれおとらぬ、まちづくりのプロフェッショナル。

ここに、東京や横浜から、建築、まちづくりに関わる大学生たちも加わって、
集まった行政区長さんや住民のみなさんとともに、
「線:金華山道」「点:ビジターセンター」「面:環境」「外:観光」の
4つの視点から、牡鹿半島の未来像を考えます。

イベント会場となった石巻市立大原小学校は、在籍児童数27名。界隈の小学校では人口減少による統廃合が進んでいる。

イベントの後半は、4つのチームにわかれてワークショップ形式で。住民のみなさんのために、なるべく「ワークショップ」や「オープンラボ」などの横文字語を使わない工夫も行われた。

観光を考えるのは、プロジェクトデザイナーの古田秘馬さん、「ishinomaki2.0」の西田司さんチーム。「観光地づくりではなく、関係地づくりへ」と提示されたコンセプトに、多くの参加者が共感した。

年長者の住民のみなさんにもわかるように
横文字を使わずに最先端の取り組みを提案する、
津波以前から進行している過疎化もまた
半島を荒らしている大きな問題ではないかという鋭い指摘、
鹿害の危機、観光化への不安と困惑……。
40分という短いワークショップのなかから
たくさんの気づきが生まれ、課題があらわになり、
それらが「自分ごと」として、参加者の意識に刻まれていきます。

未来はいつのまにか誰かが決めているものではなく、みんなでつくりだしていくもの。
復興に向けたオープンガバメント(開かれた政治)のチャレンジは
いまようやく、はじまったばかりです。

牡鹿半島の未来をえがこうOPEN LAB.
http://oshikaopenlab.com/
http://www.facebook.com/oshikaopenlab

牡鹿半島は、三陸海岸の最南端に位置する。東日本大震災で、地震前に比べて半島が東南東に約5.3m移動し、約1.2m沈下したといわれている(国土地理院調べ)。

イベントにいちばん乗りでやってきた萩の浜の区長は、笑顔がたのもしいおかあちゃん。「若いひとらの集まりやと聞いたけど、参加することに意義がある! と思ってやってきました。鹿害対策が最優先と感じました。次回からはどんどん意見も言ってみたいわ」

Tags  この記事のタグ

Recommend