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連載

諸富町 Part3
ソフトから始まるまちづくり。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.033

posted:2012.9.21  from:佐賀県佐賀市諸富町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

家業である「家具づくり」から、生まれ育ったまちについて考える
佐賀市諸富町「いわい家具」3代目・平田一成さんとの対談を、4回にわたってお届けします。

ひとをつなげば、まちも動く。

平田

ぼくも先ほどじぶんのことを組合の異端児だ、と言いましたけれど。

山崎

ええ。

平田

おやじもずいぶん変わり者だと思います。
いまでさえ「手づくり」があたりまえの時代ですが、
昭和好景気に生きてきたおやじの世代では珍しかったはずなんですよね。
「これ売っとけばいいだろう」というようなことを過信せず、
じぶんのやり方を貫いてきたんだと思います。

山崎

ぼくも先日、おとうさんとずいぶんおはなしさせていただいたので、
わかるような気がします。

平田

なんだかんだ言って、アタマが柔らかいし、
ぼくのやることも黙って見て見ぬふりをしてくれている。
そういうところは感謝しているし、ほんとうに恵まれていると思っています。

山崎

ありがたいですね。そういえば、入り口横の大きな木を使ったツリーハウスも、
おとうさんが作られたものだとお聞きました。すごくロマンがある。

平田

そうなんです。木を扱う家具、インテリアのまちに並木がないのは
おかしいだろうって、店の周りにたくさん木を植えたのもおやじです。

山崎

うーん、いいはなしだなあ。

平田

すぐ近くにある平田椅子製作所さん、飛鳥工房さんも、
それぞれにがんばっている。うちだけでなく、このムーブメントを
うまくつなぐことでまちづくりができればと考えています。

山崎

あ、せっかくだから飛鳥工房さんにもちょっとうかがってみましょうか。

木のおもちゃ飛鳥工房。廣松利彦さん、美紀さん夫妻が娘の飛鳥ちゃんのために作った木馬からはじまった、安心・安全な木のおもちゃのメーカー。http://www.asukakoubou.com/

次の世代のためのタネを蒔くこと。

山崎

こんにちは。急にすみません。

廣松

いえいえ。大歓迎ですよ。

平田

こちらは、娘さんの誕生を機に、
木で作るこども用の玩具の制作をされているんです。

山崎

すてきですね。

廣松

その娘も、もう19歳になりますが(笑)。

山崎

もうそんなになるんですか!

廣松

はい。それで、ちょうど、このショップの改装や拡充を
考えているところなんです。たとえば、このすぐ隣の空き地に
地域のこどもが安心して遊べるログハウスを作ろうか、とかね。
こども向けのものづくりワークショップもやりたいですし。
たとえば、むかしの駄菓子屋さんのように、
地域のこどもが学校帰りになんとなく立ち寄ったりしたくなる、
おとなもいて安心して遊べるような場所が理想なんですよね。

山崎

いいですね。次の10年のための構想。

廣松

たとえば、こども向けの木のオモチャづくりのワークショップをするでしょう。
そうすると、普段オモチャを大切にしない子も、
じぶんが作ったものは、笑っちゃうくらい大事にするんです。

山崎

ぼくらがやっているまちづくりも一緒ですね(笑)。
いかに関わって、大事だと思えるものを作るか。
加えて、たくさんのものを作る時代じゃないからこそ、
従来あるものにも、いかにあたらしい関係性を作るか……。

廣松

ええ。
もともと父の代から受け継いだ「廣松加飾」は家具のパーツを製作する会社で、
当初はわたしたちだけ生きていければと思っていました。
でも、次に修理をするひとがいてくれないと成り立たないんだな、と。
そう思うと、ちゃんと次の世代を育てていかないといけないんですよね。

山崎

そうですね。
まちをつくるときに、まずハコものを作りたがるケースも多いのですが、
ここではひとの顔がちゃんと見えているから、ひとをつないでまちをつくれる
というのはとても大きなメリットのように感じますね。

(……to be continued!)

「廣松加飾」の一角に、かわいい木のおもちゃがならぶ飛鳥工房のショップを併設。

飛鳥工房店内にて、廣松美香さんとともに。「学校でも家庭でもない、こどもたちが集う場所を作りたいですね」と夢を語る廣松さん。

information

map

いわい家具

1976創業。もとは婚礼家具専門店で、店名は「祝い」に由来する。1993年からは、「人が造りだせない自然の恵み」無垢の木を材料とする、創作家具、オーダー家具を中心に販売。創業当時の「幸せになる家具を皆様に届けたい」という心構えは今も変わらない。
住所 佐賀県佐賀市諸富町徳富71-1    TEL 0952-47-2696
http://iwaikagu.jp/

profile

ISSEI HIRATA
平田一成

1975年、佐賀県佐賀市生まれ。祖父、父は家具職人。しかし、ものづくりには全く興味を持たず、佐賀東高等学校体育コースに入学。高校卒業と同時に家を出たい一心で逃げるようにカナダへ2年遊学。放浪癖が身につき、帰国後、アルバイトしながら沖縄や関東方面を転々と旅した後、帰郷して「いわい家具」に入社。ようやくものづくりの面白さに目覚める。現在は、家具作りだけではなく自社の広い敷地を利用し、若手作家のテナント誘致やカフェ併設など新しいかたちの家具屋を目指し、総合プロデュースに力を入れている。

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、共著に『まちの幸福論』(NHK出版)、『コミュニティデザインの仕事』(株式会社ブックエンド)、『幸せに向かうデザイン』(日経BP社)、編著に『つくること、つくらないこと』(学芸出版社)などがある。

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