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連載

諸富町 Part2
継ぎたくなかったのはなぜか。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.032

posted:2012.9.13  from:佐賀県佐賀市諸富町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

家業である「家具づくり」から、生まれ育ったまちについて考える
佐賀市諸富町「いわい家具」3代目・平田一成さんとの対談を、4回にわたってお届けします。

あわよくば、家から逃げ続けたかった20代。

山崎

いま、おいくつでしたっけ。

平田

37歳です。

山崎

学校を卒業してすぐ家業に就かれたんですか?

平田

いいえ。地元の高校を卒業して、カナダへ行きました。
いわゆる遊学というやつです。とにかく、家を出たい一心という感じで。

山崎

そうだったんですね。

平田

日本に戻ってきてからも、同級生たちはみんな外に出ていなくなっているし、
そんな佐賀に戻るのはつまらないと思い込んでいました。
だから、帰国後もしばらく沖縄や東京を転々としてましたね。

山崎

しごとは?

平田

バイト暮らしです。長男なのに。

山崎

長男なのに(笑)。

平田

弟が2人いるので、ぼくがフラフラしてる間に、あわよくばどちらかが
継ぐと言い出してくれないかなぁなんて、都合のいいことを思ったりして。
でも、弟のほうが先に外できっちり就職を決めてきてしまって(笑)。

山崎

もう逃げられない、と。

平田

そんな気持ちのまま戻ってきたんで、はじめのうちはだから、
全然やる気のないぐうたら社員。いま思い返せば、ほんと、よく雇ってくれたなと。
ぼくだったら、絶対雇いたくない(笑)。

山崎

でも、お客さんに育てられて、結婚も考え出すようになって、変わったんですね。

平田

はい。3年ぐらいかかりましたけどね。
大きなきっかけになったのは、ちょうどそのころ、
隣の大川市で行われていたインテリア塾に通い始めたことでした。

山崎

なるほど。はじめは、橋の向こうの大川のひとたちと繋がったんですね!

父の平田喜利さんはこの道45年の63歳。受注家具を中心に、「幸せになる家具」を作り続ける。

設計図にたくさんの道具、年月をかけて集められたこだわりの木材……店の裏に併設するこの工場から、家具が生まれる。

継ぐこと=作ることではないと気づいて、楽になれた。

平田

そこに集まるひとたちの熱意に触れたころが、すごくたのしくて。
それぞれの職場の枠組みを離れて集うための場所を作りたくて、
生まれたのがこの2階のフリースペースなんです。

山崎

いいですね。まさに、おとなのための空間。

平田

彼らとここで関わっていくうちに、技術も知識も熱意も、
すべてが到底かなわないと気づくんです。
父が家具職人ですから、継ぐ=作ることだと、あたり前に思っていたけれど、
父にも仲間たちにも、かなわないなって。

山崎

うん。

平田

そんなときに、テレビかなにかで、北野武さんが
「周りのひとが作ってくれる。ぼくにはイメージがあるだけだ」
というようなことを言ってたんです。これか、と。
ひとりで抱え込まなくていいんだ、と。

山崎

自分の役割のようなこと?

平田

そうですね。ショウルームにある家具は、ほとんど父の仕事。
ぼくが職人として手掛けるのはオーダーメイドの一部だけで、
おもに全体のプロデュースにまわっています。

山崎

そこも、ぼくと一緒だな。ひとの作ったもので、なにができるかを考えよう、と。

平田

山崎さんにそう言われると、いちいち鳥肌が立ちますよ(笑)。

山崎

だからよくわかるんですけど、葛藤や敗北感がないわけではないんですよね。
「でも、やりたい」ことが出てきてしまったから振り切るしかない(笑)。

平田

その通りです! 当然ながら、職人は「いかに作るか」ということを追究し、
こだわって考えるひとたちばかりですから、組合でもぼくは明らかに異端児です。
ことばでは、なかなか説明できないのももどかしくて……。

山崎

そこはもう、やってみせるしかないでしょう。

平田

ええ。最近、そうだと気づきました。

山崎

それで、喜んでるひとの顔を見せるのがいちばんいいんだと思います。

(……to be continued!)

平田さんが仲間と集うために作ったフリースペース。壁には友人がここでライブペインティングした絵画、階段上には基地のようなスペースがふたつも!

「もとは作り手だった、というところが一緒。なんだか共感することが多いですね」(山崎)

「家具を作るだけでなく、周りをとりまく環境をプロデュースする役目を担いたい」(平田)

information

map

いわい家具

1976創業。もとは婚礼家具専門店で、店名は「祝い」に由来する。1993年からは、「人が造りだせない自然の恵み」無垢の木を材料とする、創作家具、オーダー家具を中心に販売。創業当時の「幸せになる家具を皆様に届けたい」という心構えは今も変わらない。
住所 佐賀県佐賀市諸富町徳富71-1    TEL 0952-47-2696
http://iwaikagu.jp/

profile

ISSEI HIRATA
平田一成

1975年、佐賀県佐賀市生まれ。祖父、父は家具職人。しかし、ものづくりには全く興味を持たず、佐賀東高等学校体育コースに入学。高校卒業と同時に家を出たい一心で逃げるようにカナダへ2年遊学。放浪癖が身につき、帰国後、アルバイトしながら沖縄や関東方面を転々と旅した後、帰郷して「いわい家具」に入社。ようやくものづくりの面白さに目覚める。現在は、家具作りだけではなく自社の広い敷地を利用し、若手作家のテナント誘致やカフェ併設など新しいかたちの家具屋を目指し、総合プロデュースに力を入れている。

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、共著に『まちの幸福論』(NHK出版)、『コミュニティデザインの仕事』(株式会社ブックエンド)、『幸せに向かうデザイン』(日経BP社)、編著に『つくること、つくらないこと』(学芸出版社)などがある。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ 諸富町編