colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧

連載

諸富町 Part1
佐賀・諸富で家具をつくるということ。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.031

posted:2012.9.7  from:佐賀県佐賀市諸富町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

家業である「家具づくり」から、生まれ育ったまちについて考える
佐賀市諸富町「いわい家具」3代目・平田一成さんとの対談を、4回にわたってお届けします。

「日本一の家具産地」の、隣町。

山崎

はじめまして! ようやく会えましたね。

平田

先日は、せっかくお越しいただいたのに留守にしていてすみませんでした。

山崎

いえいえ。こちらが突然押しかけたんですよ。
前回は、お父さんに案内していただいたので、
今日は一成さんのお話をたのしみにやってきました。

平田

よろしくお願いします。

山崎

佐賀駅からタクシーに乗ってしまったので、地理がよくわかっていないのですが、
ここはもう福岡県との県境なんですね。

平田

そうなんです。ここは筑後川の中州にあたるんですが、
次の橋を渡れば、福岡の大川市というまちに入ります。

山崎

大川も、たしか家具で有名なまちですよね?

平田

ええ。むかしから、日本一の家具の産地といわれたまちです。

山崎

とすると、諸富に家具屋さんが多いのも、隣町の大川と関係が?

平田

ありありですね。少し前までは、この辺りまで、
エリアとして大川と認識されていました。
佐賀のひとにさえ「諸富の家具」という知られ方はしてこなかったと思います。

山崎

なるほど。

平田

うちも、本家は大川で婚礼家具をつくっていて、
父の代からそのショールーム的機能として、ここを設立したんです。

山崎

お。婚礼家具だから「お祝い」の「いわい家具」なんですね!

国道208号線沿い。小さな森のように豊かな樹木に囲まれた建物が「いわい家具」。すぐ先の大川橋を渡れば、福岡県。

店名は「祝い」に由来。一成さんの父である喜利さんは、無垢の木を使ったオーダー家具、創作家具の制作を得意とする。

「諸富家具」として、胸を張っていく。

山崎

筑後川にふたつの橋が架かり諸富にも企業が進出し、
お父さんがここに「いわい家具」を構えられたのが、
ちょうど右肩上がりの高度経済成長期だったというわけですね。

平田

そうですね。

山崎

だとすると、そろそろ代替わりの時期でしょうか。

平田

うちはまだ父が粘っていますけど(笑)、
諸富家具振興協同組合は現理事長が40代なので、全体的に若返りつつありますね。

山崎

後継ぎさんたちは、だいたい一成さんと同世代ですか?

平田

40代が多くて、ぼくはその世代のいちばん下ぐらいですね。

山崎

組合の規模はどのくらい?

平田

家具メーカーだけでなく、資材卸業者や木工機械メーカーなども含めて約30社です。

山崎

代替わりで、ずいぶん面白くなりそうですね。

平田

ぼく自身も、やっとやる気になったんで(笑)。

山崎

え、やる気なかったんですか(笑)。

平田

そうなんです。
25歳でやっと家業に戻ったんですが、入社しばらくは、我ながらぐうたら社員で。
今から思えば、よく雇ってくれたな、と。

山崎

それで、気持ちが変わったのはいつ?

平田

隙あらばサボっていた自分でも、納品先で「ありがとう」と喜んでもらえると、
やっぱりうれしいんです。
でも、そのことに気づくまでに、数年かかりましたよね。
お客さんに育てていただいたんだと、今はつくづくありがたく思っています。

山崎

いい話だなあ。ぼくも一緒だな。

平田

……え?

山崎

ぼくだって、そうだったはずなのに、人前ではついつい
「はじめからできてました!」みたいに語ってしまうから……。
正直にさらけ出さなくちゃ、と(笑)。

平田

あはは。山崎さんも一緒だなんて、なんだかうれしいですよ(笑)。
正直、結婚前ですね。ぼくがやっとちゃんと働こうと、こころを決めたのは。

(……to be continued!)

「大川ブランドから脱却して、諸富家具としてのアピールを」(平田)

「世代交代で、まちが面白くなりそうな予感がしますね」(山崎)

information

map

いわい家具

1976創業。もとは婚礼家具専門店で、店名は「祝い」に由来する。1993年からは、「人が造りだせない自然の恵み」無垢の木を材料とする、創作家具、オーダー家具を中心に販売。創業当時の「幸せになる家具を皆様に届けたい」という心構えは今も変わらない。
住所 佐賀県佐賀市諸富町徳富71-1    TEL 0952-47-2696
http://iwaikagu.jp/

profile

ISSEI HIRATA
平田一成

1975年、佐賀県佐賀市生まれ。祖父、父は家具職人。しかし、ものづくりには全く興味を持たず、佐賀東高等学校体育コースに入学。高校卒業と同時に家を出たい一心で逃げるようにカナダへ2年遊学。放浪癖が身につき、帰国後、アルバイトしながら沖縄や関東方面を転々と旅した後、帰郷して「いわい家具」に入社。ようやくものづくりの面白さに目覚める。現在は、家具作りだけではなく自社の広い敷地を利用し、若手作家のテナント誘致やカフェ併設など新しいかたちの家具屋を目指し、総合プロデュースに力を入れている。

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、共著に『まちの幸福論』(NHK出版)、『コミュニティデザインの仕事』(株式会社ブックエンド)、『幸せに向かうデザイン』(日経BP社)、編著に『つくること、つくらないこと』(学芸出版社)などがある。

Feature  注目情報&特集記事「日本のクリエイティブ」

Recommend