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福井 Part3
あれから3年。ぼくらが変われば
FLATも変わる。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.012

posted:2012.4.18   from:福井県福井市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:合田慎二

山崎亮さんと一緒に訪れるまちは、早くも3か所目。
古いビルを地産地消カフェとスクーリング空間として再生させた、
福井市のフラット・プロジェクトについてうかがいます(全4回)。

そして生まれた、フラットビル。

山崎

2009年の7月に念願の古ビルを買ったあと、
思い描いた通りのプロジェクトが順調に進んでいくんでしょうか。

藤田

お金もないので、ワークショップ形式でみんなで作っていきましょう、と。

出水

そこでボクの出番です。仕事の合間をみつけて、
まずは内装の解体から、ボランティアスタッフを募って作業にあたりました。

山崎

そのときの参加者はどんなひとたちなんですか?

出水

もうほんとうにさまざまですね。
ほぼ、ブログだけを発信源として募集しました。毎回10名ぐらい。
ほとんど「ハジメマシテ」のひとたちばかりで、
でも、手作りのお弁当持ってきてくれたりして、
「あのときはほんとうに楽しかったね」って、
今でもしょっちゅう話題にのぼるぐらいです。

山崎

それで、事実上のオープンは?

出水

カフェがオープンできたのは、1年後の6月です。

山崎

そして、2階でスクーリングやワークショップを行っているということですね。

藤田

そうです。スクーリングでは、grafの服部滋樹さん、
映像ディレクターの菱川勢一さん(drawing and manual 代表)、
イラストレーターの黒田征太郎さん……と、
たくさんの方にお話をうかがってきました。
直近では、3月が松田龍太郎さん(株式会社オアゾ)でした。

山崎

あ、bank towadaの方。ボクもお会いしたかったなあ。

1階の「フラットキッチン」

古ビル購入から1年、やっとオープンにこぎつけた1階の「フラットキッチン」。店内の照明は、「エチゼンクラゲ」がモチーフ。

変わること、見えてきたこと。

山崎

1階がカフェ、2階がフリースペースでしょう? じゃあ、3階は……?

藤田

当初は独身のボクが住もうと思ってたんですけど、
3階の内装が後まわしになってるうちに、結婚しちゃいまして(笑)。

出水

そして、いまもまだ工事中です!

山崎

あ、それを今やってるってことでしたね(笑)。

内田

この3年でのいちばん大きな変化は、
藤田さんとケンちゃん、ふたりとも結婚したことなんじゃないかな。
リアルなはなしですが、やっぱり、独身30代と妻帯者では、
お金や時間のかけ方が変わってきます。
それに、この3年で時代が大きく変わった。

山崎

そうですね。

内田

当初はぼくらのなかに、
もっともっとクリエイティブさを求めるところがあったけど、
最近では食や子育てというようなことが、やっぱり気になったりして。

山崎

もう、酔った勢いでポーン!と「ビル買う」なんて言えませんものね。

内田

お子さんが生まれたのもあって、藤田さんの気持ちがいちばん変わりましたね。

藤田

はい。こどもをクリエイティブに育てることが福井の未来につながるし、
今は、そういうことに夢があるように感じています。

内田

ボク自身も、時代が変わって、正直、デザインデザインしたものに
興味がなくなってきたところがあります。

山崎

今、いわゆる「宴のあと」の時代に、
ちゃんとデザインのことを考えてるひとたちと会話をすると、
やはり同じはなしになりますね。
どこに、あるいは、なにに貢献するか、ということを考えながら
クリエイティブを発揮していきたいんですよね。

内田

はい。

山崎

世の中のひとのため、ってなかなか言いにくいけれど、
なんかちょっと「いいこと」したい。そんな気分なんだと思います。
「公共」と「ソーシャル」の間ぐらいのところで、クリエイティブに、
わくわくするような、「おしゃれな公共」みたいなのができるといいのかな。

藤田

そう。カッコイイって、言われたいですよね。

山崎

単に表層的な意味ではなく、「ちゃんとしている」という意味での、カッコイイ。
それ、とても大事ですね!

(……to be continued!)

「flat schooling 03」の様子

2010年の9月に行った「flat schooling 03」ゲストスピーカーは、grafの服部滋樹さん。40名が参加。(写真提供:FLAT)

カホン作りのワークショップ

3月に行われた、カホン作りのワークショップ。こどもも参加できるイベントが増えてきた。(写真提供:FLAT)

information

map

FLAT

福井市呉服町にある古いビルを、ワークショップにより多くの人の創造力と行動力で再生したプロジェクト。1Fは「フラットキッチン」という名の地産地消カフェ、2Fはスクーリング空間、屋上には庭園を設け、このビルを拠点にふつうの価値観をクリエイティブな発想で転換し、よみがえった場所で生き方と学び方の再定義を行う。

住所:福井県福井市順化2-16-14

TEL:0776-97-5004

Web:http://www.flat-fukui.tv/

profile

SHIGEHARU FUJITA 
藤田茂治

1972年福井県福井市生まれ。1996年近畿大学大学院修士課程修了。ボタ山と自然が美しい福岡県飯塚市でクラフトを中心としたプロダクトデザインを学ぶ。その後、デザインスタジオに一瞬所属。1998年からデザインの研究職として福井県職員となり、デザイン振興全般、農林水産品の販路開拓等の職務に就く。現在、公益財団法人ふくい産業支援センターデザイン振興部勤務。

profile

KENDAI DEMIZU 
出水建大

1973年福井県福井市生まれ。海外での生活の経験や、田舎ならではの自然の中での遊びから今の地元福井の建築のあり方を模索中。2006年に建築会社、㈱建大工房設立。2010年6月、リアルに人が繋がれるコミュニケーションカフェ「FLATkitchen」オープン。まちなかの廃墟となった建築を再生させ、そこでのコミュニケーションを通じて、まちと人の可能性を引き出していきたい。

profile

HIROKI UCHIDA 
内田裕規

1976年生まれ。越前和紙の里・旧今立町の月尾谷で育つ。広告や宣伝に関わるさまざまなアートディレクションをする傍ら、FLATの立ち上げに参加。主にスクーリングやイベントの企画広報を担当。株式會社ヒュージ代表。http://www.hudge.jp/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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