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連載

川のせせらぎを聞きながら、
大野市の恵みをいただく。
古民家で開催された
〈水をたべるレストラン〉

Local Action
vol.107

posted:2017.9.4  from:福井県大野市  genre:食・グルメ / 活性化と創生

PR 大野市

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

writer profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer profile

Rui Izuchi

出地瑠以

写真家。1983年福井生まれ。東京とハワイでの活動を経て、現在は大阪・福井を拠点に活動中。〈Flat〉という文化創造塾の運営メンバー。また結婚式を創るユニット〈HOPES〉のメンバーでもある。
http://www.cocoon-photo.com/

水とともにある福井県大野市の食文化

周囲を山に囲まれ、市内にある4本の一級河川には滔々と水が流れている。
水が豊富であることを感じさせる光景が広がっているのが、福井県大野市だ。
おいしい水で有名なまち。
その恵みをもらって食物が育ち、水を使って調理し、市民は生活を潤している。

大野市では〈水をたべるレストラン〉という取り組みを続けている。
すべての「おいしさ」の源には大野の水があり、
水の恵みを得た食を発信していくプロジェクトだ。
そば、米、醤油、水まんじゅう、まいたけ、コーヒーなど、
どれも大野自慢の一品である。

この度、〈水をたべるレストラン〉のリアル版、
つまり本物のレストランが一夜限定でオープンした。
まさに「水をたべる」と言えるもので、
大野の水への思いを存分に感じさせるイベントとなった。

会場となった打波古民家は、緑豊かで静かな上流域にある。

このイベントは大野市と、料理開拓人として大阪でfoodscape!、
全国でEATBEAT!を展開し、全国で食のプロジェクトを推進している
堀田裕介さん、そして大野市の若手有志団体〈ミズカラ〉により実現した。

料理開拓人の堀田裕介さん。

まずは、市内の“水の現場”を巡った。
一番の水どころである〈御清水(おしょうず)〉は、
かつて武士がお米を炊く水を汲む場所として使われていたという。
現在でも、大野市民のほとんどは家庭に井戸を持っていて、
地下水を生活用水として利用している。

「上水道はあまり普及しておらず、井戸が8000本以上あります」
と大野市の湧水再生対策室企画主査の荒矢大輔さんが教えてくれた。
この〈御清水〉でそれぞれの水を汲んで、ツアー中の飲み水にした。

大野にたくさんある湧水地のなかで一番有名な〈御清水〉。

次に朝市で有名な七間通りにある〈南部酒造〉を訪れて、
日本酒〈花垣〉の飲み比べをさせてもらった。120年の歴史がある。
当然、地下水を利用して日本酒を仕込んでいて、
県外からも「水がおいしいから」と買いに来るお客さんも多いという。

地下水仕込みの〈花垣〉を飲み比べた。

〈南部酒造〉のすぐ先にある〈伊藤順和堂〉では水まんじゅうを試食させてもらった。
夏を感じる清涼感のある和菓子で、大量の水と葛で固めてある。
店主の伊藤嘉健さんは「水を食べているようなものです」という。
水への感謝が詰まったお菓子といえよう。

〈伊藤順和堂〉の水まんじゅうは夏の風物詩。

まちなかから少し走ると、田んぼと、大きな葉が特徴の里芋畑が交互に広がる
上庄地区にさしかかった。大野の特産はこの里芋だ。
訪れたのは明治からこの場所で里芋をつくっているという〈中村農園〉さん。
里芋の収穫期は9月下旬からなので、訪れた8月はまだこれから大きく成長していく時期。

「ここ数日、雨が降らなかったので、今日は畑に水を流します。
明日の朝、陽が出る直前に水を抜きます。すべて水のおかげです」
という〈中村農園〉の中村勝利さん。

〈中村農園〉の中村勝利さんは、この道50年以上!

中村農園の里芋でつくった、煮っころがしを試食させてもらった。
里芋の収穫期は秋なので去年の里芋だったが、とてもおいしい。
醤油、砂糖、みりんで皮を剥かずに煮るだけのシンプルな煮物だが、
大野の里芋は身がしっかりとしまっていて歯ごたえがあるので、
煮くずれしにくいという。

目の前を流れる水路には、すごい勢いで水が流れている。
秋の収穫後になれば、この水路に里芋洗い機が設置され、
大野各地で湧水で里芋を洗う様子を見ることができるだろう。

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日も暮れて、いよいよ一晩限りのレストランがスタート!

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自然のなかの古民家で「水を食べる」

〈水をたべるレストラン〉の会場は山を少し登り、
打波川のせせらぎが聞こえる打波地区にあった。
到着すると大きな古民家の前に
木組みのかわいいスタンディングテーブルや小屋がお出迎え。
周囲の自然環境や古民家のこっくりとした雰囲気とは対照的にモダンさもある。
ちょっと意外な演出だった。

まずはここでウエルカムドリンクをいただいた。
大野にある〈白山ワイナリー〉の〈やまぶどうワイン ロゼ炭酸割り〉だ。
ほかに大野産の〈夏野菜サラダ〉と〈穴馬スイートコーンの冷製スープ〉を
立食形式でいただく。
いきなりの洒落た演出に、これから本格的に始まるであろう料理に期待が高まってくる。

堀田さんの〈Foodscape!〉ではお馴染みの、野菜を美しく並べる演出も。

次に提供されたのは〈そば香る 煮っコロサンド〉。
里芋の煮っころがしをコロッケにし、
そば粉をブレンドしたフォカッチャでサンドしたもの。
大野の食材を使った新提案といえる。

「大野を訪れて、一番印象的だったのが里芋でした。
ほかの地域の里芋とはあきらかに食感が違い、歯ごたえがあります。
それをコロッケにしてはどうかと思いつきました」(堀田さん)

大野名物の醤油に漬け込んだコロッケをサンド。

里芋コロッケ自体はいろいろな地域にあるし、大野にもある。
しかしそのほとんどはマッシュしてペースト状にしてある。
それでは大野の里芋の特徴である食感を失ってしまう。
せっかくの食感を残すために、
煮っころがしをそのままごろっとしたコロッケにするという挑戦。

「私は実家が里芋農家なので、
里芋愛が強過ぎていくつも試作をつくってしまいました(笑)」というのは、
フードユニット〈nishoku〉としても活動している三嶋香代子さん。

当日のメニュー表もお手製。ミズカラメンバーの高見瑛美さんが手がけた。

インビテーションも手づくり。ミズカラメンバーの桑原圭さんによるコピー&デザイン。

はさんでいるフォカッチャもレシピを開発後、
大野にあるパン屋さんに何度も試作をお願いした。
この料理は食べやすくて懐かしい、大野の新しい名物として、
お祭りや各地のイベント、市内の飲食店などでも販売していくことになった。

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屋内での演出はさらにすてきに!

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次に場所を古民家の中に移した。縁側から上がると、
すでに等間隔にお膳が並べられ、おばんざいが用意されていた。
〈大野のふるさと御膳〉という名の通り、ぜんまいや原木しいたけ、金時豆など、
大野でみんなが食べている素朴なもの。
ひとつずつは特別なものではない、しかし豊かだ。

おばんざいたっぷりの〈大野のふるさと御膳〉。

「大野の報恩講で食べるようなおばんざいを、
ぜひ食べてもらいたかったので提案しました」(ミズカラ・三嶋さん)

「おばんざいは、日本の田舎の家庭で食べられてきたもの。
もっともっと発信していければ、
わざわざ斬新な料理を考案しなくても若い世代には
“新しい料理”になるのではないでしょうか。
食べるもの自体は変わらなくても、このようなしつらえの古民家で食べると、
新しく感じるのではないかと思います」(堀田さん)

米粉をつかった〈アジメドジョウのフリット〉。

その後は、きれいな水でしか育たず、
あまり市場に流通しないという幻の〈アジメドジョウのフリット〉、
打波古民家のかまどで炊いた〈かまどご飯のおにぎりとお漬けもの〉など、
どんどん提供されてくる。

打波古民家の家主である山内タカさんの手によってむすばれたおむすび。

なんとおにぎりには、古民家に保存されていた50年前の「ひえ」がまぶされていた。

さらには〈宇野酒造場〉、〈南部酒造場〉、〈真名鶴酒造〉、〈源平酒造〉と
大野に4つある酒蔵の日本酒も振る舞われた。もちろんおいしいお水とともに。

ふたたび屋外に出ると、デザートとして大野の冬の名物〈でっち羊かん〉が
特別に提供され、大野の水で淹れた〈東ティモールコーヒー〉とともに味わった。

くちどけのいい〈でっち羊かん〉。

「東ティモールのコーヒー豆は甘くて、
同じく甘みのある大野の水と相性がいいです。
コーヒーはほとんどが水なのに、あまり水について語られることがありません」
と言うのはミズカラのメンバーでモモンガコーヒー店主の牧野俊博さん。

今回の〈水をたべるレストラン〉には、大野の取り組みである
〈水への恩返し キャリングウォータープロジェクト〉に関わる人やメディア、
プレス、環境や食関連に従事している関係者などが全国から招待された。
そのなかに、それぞれの目線で食を発信している
SNS時代のグルメユニット〈食べあるキング〉の3人も参加しており、
ミズカラメンバーとの座談会が開催された。
食関係のアンバサダーなどを務める彼らの目には、
この一夜はどのように映ったのだろう。

左から田中里奈さん、フォーリンデブはっしーさん、はあちゅうさん。

「地元の人たちの盛り上げようという熱意がすばらしい。
大野市とミズカラメンバーのチームプレーに感激しました」(フォーリンデブはっしーさん)

お見送りも、ミズカラ揃って!

「世界観の演出に感動しました。
古民家といっても、ビニールシートとかプラスチックのお皿とかで
興ざめしてしまうことも多いけど、
今日のためだけに、手縫いの座布団や手ぬぐいなどいろいろ用意してくれて」
(はあちゅうさん)

ミズカラメンバー自身が自然染めし、手縫いで仕上げた座布団カバーも古民家の雰囲気に合っていた。

「私は里芋が心に残っています。つくっている人の話を聞くことで、
ストーリーごといただけました。古民家のシチュエーションも贅沢でした」(田中里奈さん)

里芋畑で煮っころがしをいただき、つくり手の思いを知る。煮っころがしをつくって待っていてくれた里芋農家中村勝利さんの奥様の中村文子さん。

そして、3人が共通して感じたのは、
もっとたくさんの人に実際に体感してもらいたいということ。

「〈そば香る 煮っコロサンド〉は、
地域のお祭りや全国のフェスなどでの出店も決まっているので、
まずはそれらで大野の水に思いを馳せてほしいです」(堀田さん)

大野の食材を使って、伝統的な料理とあたらしく開発した料理。
どちらも展開することで、大野の水と食の魅力をまるっと感じることができた。

とにかくすべてに大満足である。それは食事だけなく、
空間演出やおもてなしという部分においても、だ。
迎え入れてくれた大野市やミズカラのメンバーから
惜しみない大野愛を感じることができた。

大野市、ミズカラメンバー、ゲストみんな揃って打波古民家前で1枚!

information

Carrying Water Project 

http://www.carrying-water-project.jp/

http://www.carrying-water-project.jp/restaurant/event/

以前、コロカルで掲載した「Carrying Water Project」の取材記事はこちら

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