colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧

連載

「発酵」でつながる滋賀の酒と食!
ワイナリー×日本酒蔵元による
醸造家座談会

Local Action
vol.103|Page 1

posted:2017.3.9  from:滋賀県  genre:ものづくり / 食・グルメ

PR 滋賀県

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

writer profile

Tatsuro Negishi

根岸達朗

ねぎし・たつろう●フリーライター。発酵おじさん。東京・稲城市で子育てしながら、毎日ぬか床ひっくり返してます。
Twitter:@onceagain74
https://twitter.com/onceagain74
Facebook:https://www.facebook.com/tatsuro.negishi
Mail:negishi.tatsuro@gmail.com

credit

撮影:川瀬一絵(ゆかい)

みんな、発酵してる?

「発酵」といえば、近年注目のローカル的キーワード。
自然志向や健康志向の高まりなどから、
食生活に「発酵」を取り入れる人もいる一方で、
地域の食文化としての「発酵」の多様性や、
その文化的な奥行きにも関心が集まっている。

そこで今回は、数ある発酵食のなかから「日本酒」と「ワイン」という、
和洋の民俗的な発酵文化に着目。
日本における「地物」としての日本酒とワインは、
その土地のなかでどのようにしてつくられ、親しまれているのか。
またそれらはどのように交錯し、「地元の酒」としての未来を描けるのか。
ひとつの実験として、日本酒の蔵元とワイナリーによる座談会を企画した。

舞台は、日本一の面積を誇る湖・琵琶湖を擁する滋賀県。
琵琶湖のふなを塩漬けにし、
米とともに発酵させた伝統の発酵食〈ふなずし〉で知られるこの土地は、
諸説あるが、古くは奈良時代、またはそれ以前から
保存食としてのふなずしに親しんできたと言われる。
富山や和歌山のなれずしと同様に、
奥深い発酵の歴史を持つ土地であるということが、
現代の酒づくりに新しいイメージを与えている可能性にも期待したい。

座談会に集まったのは、
県内のワイン製造の先駆けでもある〈琵琶湖ワイナリー〉(栗東市)と、
個性的なにごりワインで注目される〈ヒトミワイナリー〉(東近江市)、
創業1805年の老舗酒蔵〈浪乃音酒造〉(大津市)のつくり手たち。

さらに、今回は明治初期に「近江牛」を全国に広めた
老舗レストラン〈松喜屋〉(大津市)より、
土地のグルメを知り尽くしたソムリエが、
お酒にぴったりのスペシャル発酵料理を携えて参加した。
滋賀の酒と食は、どんなマリアージュをみせるのか。
ボーダーレスなローカル座談会にご期待あれ!

※1ふなずし:琵琶湖の固有種であるニゴロブナを塩漬けにし、炊いた米に漬けて乳酸発酵させる伝統の保存食。全国各地に伝わる「なれずし」(サンマやサバなどさまざまな魚が使われる)の一種。

というわけで、まずは参加メンバーの紹介からスタート。

【エントリーNo.1】浪乃音酒造 中井 孝さん

中井 孝さんは、創業1805年の老舗酒蔵〈浪乃音酒造〉の10代目社長。
三兄弟で酒づくりをしており、長男の孝さんは社長業の一方で、
蒸釜の管理を主に担う「釜屋」を務めている。
酒づくりの最高責任者である「杜氏」は次男が担当。
三男は「麹屋」として、日本酒の仕込みに欠かせない米麹をつくっている。

磨いた米。

新酒の仕込みは10月中旬〜2月中旬までの寒い時期に行う。
これがいわゆる「寒づくり」だ。
気温が低い時期は、雑菌の繁殖が少なく、微生物(酵母)の活動も弱まるため、
きめ細やかで風味のいいお酒ができるとされている
(年間を通じて醸造できるようにしている蔵もある)。

アルコール発酵が進むタンクの中。耳をすませるとプクプク、パチパチと音がする。微生物が生きている証拠だ。

「冬の朝、タンクをのぞきこんで、『寒がってるな』と感じたら、タンクの腰(下方)を温めてやるんです」と、我が子のように慈しむ中井さん。

「僕らが酒をつくってるんやなくて、
このタンクのなかにいる酵母たちが酒をつくってるんやね。
僕らはその活動をサポートしているだけ。
生き物相手だからむつかしいけど、自分の子どもみたいに思えるときもあるし、
やっぱり酒づくりはおもしろいよね」と中井さんは話す。

量り売りの日には地元の人や飲食店の人が列を成す、浪乃音酒造の店頭。

浪乃音酒造では、毎月第4金曜・土曜に、日本酒の量り売りも実施。
きれいな味わいとされる、中汲み(※1)だけを抽出したお酒や、
新酒と熟成酒のブレンド酒、各種酒米のブレンドによってつくったお酒など、
「そのときにしか飲めないスペシャルなお酒」が地元の人に好評だとか。

※1 お酒を搾ったときに、最初に出る濁り酒を「新走り」、それがだんだん透明になっていったところが「中汲み」、最後にプレスして出てきたのを「責め」という。

今回の座談会にご提供いただいた日本酒。右〈純米吟醸 浪の音(斗びん取り)〉/左〈新走り 浪の音〉

【エントリーNo.2】ヒトミワイナリー 山田直輝さん

続いてご紹介するのは、〈ヒトミワイナリー〉の山田直輝さん。
同ワイナリーの独創的なワインづくりに惹かれて4年前に入社した。
現在はワインづくりの責任者として、ブドウ栽培から醸造、
ラベルのデザインまでを一貫して手がけている。

〈ヒトミワイナリー〉のワインは、
ブドウの食物繊維や酵母を取り除くために濾過する一般的なワインと異なり、
それらを“旨みのもと”としてあえて残す「無濾過」が特徴。
自然志向のワインづくりにファンも多い。

ロッジのような三角形の屋根がかわいらしいヒトミワイナリーの本社屋。

創業は1984年。もともとはアパレルメーカーだったが、
ワインを愛する創業者の図師禮三(ずしれいぞう)氏が、
自分でもワインをつくりたいとの思いを抱き、60歳を機に事業を方向転換。
すべてゼロからのスタートで自家農園のブドウ畑やワイナリーを立ち上げた。

撮影は2月。ちょうどブドウの枝の剪定の時期だった。例年になく積雪量が多かった東近江市。寒空の下、山田さんたち醸造家は毎日畑に繰り出す。

自社農園では現在、マスカットベリーA、カベルネ・ソーヴィニヨン、
シャルドネなど約10種類のブドウを生産。
カベルネサントリー(ブラッククイーン×カベルネ・ソーヴィニヨン)という
珍しい品種もあり、これは全国でも現在、〈ヒトミワイナリー〉でしか
生産していないものだとか。
農園の面積は約1.5ヘクタール。年間6〜7トンのブドウを収穫する。

建物内の販売コーナーには、各種にごりワインがずらり。このほか、パン売り場とイートインスペース、イギリスの陶芸家バーナード・リーチのコレクションを展示する〈日登美美術館〉も併設。

「うちのワインは、濾過をするのが当たり前になっている世界のワインのなかでいうと、
少し外れているかもしれません。
でも『発酵』という大きな視点でみれば、
にごったワインもそうでないワインも、同じ自然から生まれたお酒。
発酵文化のひとつに、こういうワインがあってもいいですし、
さらにそれがこの土地の食を彩るものになってくれたらとてもうれしいですね」
と山田さん。

今回の座談会にご提供いただいたワイン。右から〈ShindoFuni AOKI 2015 赤〉、〈h3 IKKAKU 2016 赤・微発泡〉、〈Barrique Merlot 2013 赤〉

【エントリーNo.3】琵琶湖ワイナリー 北尾真英さん

最後は、琵琶湖の南東、湖南アルプスの麓にある〈琵琶湖ワイナリー〉の北尾真英さん。
観光農園の畑作業のスタッフとして11年前に入社した。
現在はワイナリーの工場長として、自家栽培のブドウに愛情を注いでいる。

平成23年に完成した新工場。まるで美術館のようなこちらのモダンな建物が今回の座談会の会場となる。

琵琶湖ワイナリーは、草津市に本社を持つ
総合酒類メーカー〈太田酒造〉の一部門として、
昭和21年にブドウ栽培をスタート。
少しずつ規模を拡大しながら、昭和50年には農園の中腹にシャトーを構えて、
ブドウ栽培から醸造・瓶詰めまでの工程をすべて自社で行えるようにした。

琵琶湖ワイナリーのブドウ園。

約7.5ヘクタールの広大な敷地では、マスカットベリーAや
ヤマ・ソーヴィニヨンをはじめ、
「日本のワインの父」とも呼ばれる川上善兵衛氏が創業した
〈岩の原葡萄園〉(新潟・上越市)と、琵琶湖ワイナリーでしか生産していない
希少品種レッドミルレンニュームなどを有機栽培。

自社農園のブドウでつくるワインは、
土地の名前を取って〈浅柄野〉の名前で販売している。
年間25~300トンを生産する。

工場内にある熟成室。温度は年間を通じて14度。湿度は60%程度に保っている。

「ワインはブドウのできですべてが決まるといってもいいほど、
原料としてのブドウが大事です。
自分たちの畑でどれだけいいブドウをつくり、それをおいしいワインにしていくか。
世の中のニーズも見極めながら、
さまざまな可能性にチャレンジしてきたいですね」と北尾さんは話す。

今回の座談会にご提供いただいたワイン。右から〈浅柄野レッドミルレンニューム 白〉〈浅柄野ヤマ・ソーヴィニヨン 赤〉〈浅柄野セミヨン樽熟成 白〉

Tags  この記事のタグ

Recommend