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連載

日本一のサンゴの海から
みんなの想いでサンゴを育てる
〈3935プロジェクト〉スタート!

Local Action
vol.082|Page 2

posted:2016.4.8  from:沖縄県石垣市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

editor's profile

Yu Miyakoshi

宮越 裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。

credit

撮影:中西康治(水中写真以外) http://www.kojinakanishi.com/
撮影:北島清隆(水中写真) http://www.k-kitajima.net/index.html

Page 2

サンゴの海の海人たち

3月下旬、南の島(ぱいぬしま)石垣空港に着陸し飛行機を降りると、
途端に亜熱帯特有の湿気に包まれた。
南の島好きとしては、この空気に迎えられるだけでもうれしくなってしまう。
まずはじめに向かったのは、島の南西側にある
3935プロジェクトのサンゴ移植体験施設。
現在人工ビーチなどの整備が進む新港地区にある。
マイクロバスに乗ってひたすら海に向かって走っていくと、
石西礁湖をのぞむ陸の端に、その施設が建っていた。
ここで3935プロジェクトに携わるNPO法人観光事業活動研究会の後藤勝之さんと、
運良く八重山漁協のサンゴ養殖研究班の班長、野里栄一さんにもお会いすることができた。

じつは石垣島には、10年以上前からサンゴの養殖に取り組んでいる人たちがいる。
それが野里さんをはじめとする漁師さんからなる、八重山漁協のみなさんだ。

八重山漁業協同組合 鑑賞用漁業部会 サンゴ養殖研究班 班長 野里栄一さん。サングラスをかけていると少々強面(こわもて)な野里さん。サングラスの下には、目の奥まで日に焼けたような優しい瞳が隠れていた。

野里さんは石垣島生まれ、石垣島育ち。
根っからの海人(うみんちゅ)であり、サンゴのプロフェッショナルだ。
今回はサンゴの育成を助けるためにこのプロジェクトに参加することになった。

サンゴが育つためには、水温が18〜30℃までの温かい海であること、
太陽光が届く透明な水であること、浅瀬であることなど、
複雑な条件が必要とされる。
さらに海中で養殖するとなると、状況に応じたメンテナンスも必要だ。
このプロジェクトには、経験ある漁師さんたちのサポートが不可欠だった。

「私たちはもともともずくの養殖をやっていましたので、
その経験を生かして10年以上前にソフトコーラルの養殖を始めたんです。
造礁(ぞうしょう)サンゴ(※3)の養殖を始めたのは2010年。
もともとは、観賞用サンゴを育てるためと、
子どもたちの教育目的で始めました」(野里)

海のそばに住む石垣島の子どもたちでも、なかなかサンゴを見る機会はない。
野里さんたちは石垣市の小学校に働きかけ、シュノーケリングや
海の生きものの観察など、さまざまな学習プログラムを実施し、
海と教室をつなぐ役割を果たしてきたという。

※3 造礁(ぞうしょう)サンゴ:群生し、サンゴ礁をつくることができるサンゴの種類。サンゴ礁とは、サンゴがつくった枝状、塊状、テーブル状などの石灰質の骨格が形成する地形のこと。

サンゴの苗づくりを体験

左からみうさん、めぐさん。同敷地内にあるイルカに会える体験型施設〈ドルフィンファンタジー石垣島〉のスタッフでもある。

3935プロジェクトでは、これから地元の人たちや観光客に
さまざまな体験プログラムを提供していく。
この日は一足早く、スタッフのみうさん、めぐさんと一緒にサンゴの苗づくりに挑戦した。

八重山漁協のみなさんが育てたサンゴの苗。さまざまな条件が揃わないと育たないサンゴの養殖は、とても難しい。この小さな枝も研究成果のたまもの!

サンゴの苗づくり体験では、サンゴの枝をマグホワイトという
土壌硬化剤にくくりつけるところまでを行う。
こうしてつくった苗を海中に置いておくと、
まるで多肉植物のように成長していくのだそうだ。

マグホワイトやステンレス線など、養殖や移植には環境に優しい資材を使用。ステンレス線は時間が経つにつれて水中電蝕によりサンゴの定着を助長する。

まず、マグホワイトに自分の名前や願いごとを書き、
ステンレス線で苗をくくりつける。
ちょっと力を入れると苗が折れてしまうので、意外と難しい。

ここでつくられた苗は、1〜2日以内に海中のサンゴ中間育成畑に移され、
十分な大きさに育つと、移植用畑へ移植される。
養殖の育成率は現状90%以上だが、
移植の成功率は30〜40%というので、少々先行きが心配だ。
無事に育つといいなと思いながら、ステンレス線を結んだ。

海とともにある暮らし

3935プロジェクトの企画に携わる後藤勝之さんは、
養殖を始めた理由について、次のように語ってくださった。

NPO法人観光事業活動研究会 専務理事の後藤勝之さん。

「石垣島の自然には、海というものがとても大切なんですよね。
その海の魅力を考えたときに、サンゴは海の生態系のなかで
とても大事な役割を果たしているんです。
さらにサンゴは、漁師の方たちやダイビング、海のレジャーを提供する
人たちにとっては、生活していくための場でもある。
そうした場を3年、5年計画で守り、育てていこうということで
スタートしたのがこのプロジェクトです。
サンゴはもともと海のものですが、養殖して苗を増やせば、
みなさんに苗を提供することができます。
サンゴ畑は、このプロジェクトの主旨を理解していただける
ダイビングショップに無償で貸し出す予定です。
その代わり、ダイビングショップの方やそのショップを介して
申し込まれたダイバーの方には、1年に何度か
苗を植えに来ていただきたいんです。
そうして島内外の方にもこのプロジェクトに参加していただき、
みんなでサンゴを育てていきたいと考えています」(後藤)

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