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連載

ちちぶメープルプロジェクト vol.6
シュガーハウスってどんなとこ?

Local Action
vol.072

posted:2016.3.28  from:埼玉県秩父市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  埼玉県秩父市。山々に囲まれ、自然豊かなこの地で、
メープルシロップをつくる取り組みが行われています。
その秩父の森で生まれたメープルシロップを味わえる〈シュガーハウス〉ができるまでを
秩父にUターンした井原愛子さんが綴る短期連載です。

writer profile

Aiko Ihara

井原愛子

いはら・あいこ●埼玉県秩父市生まれ。2014年外資系企業を辞めて、秩父にUターン。秩父の森づくりを行うNPOやメープル関係団体の活動に参加しながら、自然とそこに関わる人々にたくさんの刺激を受け、勉強の日々。2015年に自然の恵みを生かした商品開発やエコツアーの企画などを行う〈TAP&SAP〉を立ち上げた。現在、シュガーハウスオープンを目指して、秩父の地域プロデューサーとして日々奔走している。
http://tapandsap.jp

credit

協力:NPO法人秩父百年の森 http://www.faguscrenata.com/

そうだ、カナダへ行こう!

いよいよ秩父も春本番! 木が芽吹いてきています。
今回は、このコラムを書くきっかけになった“シュガーハウス”と、
シュガーハウスを秩父につくろうと思ったきっかけ、
その後の思わぬ進展までお話できたらと思います。

早くも6回目を迎えたこの連載ですが、実はこれまでの内容は
すべてこれからのテーマの前置きなのでした……。
とても長い前置きになったのは、秩父で行われているメープルの活動の背景や目的を
きちんと知ってもらいたかったからなのです。

いまから2年前、秩父でメープルの活動をしたいと思った私。
会社に退職を告げ、最初にしたことは有給休暇をとってカナダに行くことでした。
メープルのことは何ひとつ知識のなかった私でしたから、
やはり本場のカナダでメープルがどうつくられているのか、
秩父のやり方とどう違うのか? など、たくさんの疑問がいっぱいで、
自分の目で見てみたいと思ったのでした。インターネットを駆使して、
いくつかのおもしろそうな活動をしているメープル農家をピックアップし、
会ってもらえないかとメールでコンタクトをとったりもしました。

今回訪れたのは、カナダの第2のメープル生産地であるオンタリオ州。州都はトロント。

カナダのメープルシーズンは、秩父よりも遅い3月から4月にかけてが最盛期。
レンタカーを借りて、観光客は絶対行かないであろう田舎道を進みます。
着いた先は、広大なカエデの森!

びっしりと植えられたカエデの木々、さすがメープルの本場!

秩父と違って平らな土地にびっしりカエデが生えている様子に衝撃を受けます。
そして、パイプラインが張り巡らされていて、
ポンプに樹液が流れる音が静かな空間に響きます。
遠くには、煙突から煙がモクモクとのぼっている建物が。

シュガーハウスはメープル農家によって、掘っ建て小屋から立派な建物までさまざま。いろいろなシュガーハウスがあっておもしろい。

これがシュガーハウスか!
カナダでは、採取した樹液はすべてその日のうちに
メープルシロップに加工してしまいます。
寒い外と違って、シュガーハウスの中は樹液を煮詰める蒸気と
甘いメープルシロップの香りで満たされているのでした。
なんて幸せな空間……。

メープルシロップを煮詰める機械はエバポレーター(蒸発機)といって、
樹液を煮詰める専用のもの。
熱源はなんと薪をくべるというちょっとアナログな感じで、
とても温かみがあってすてきです。

メープルシロップの製造過程をこんなに間近で見られるなんてびっくり!

ほとんどのシュガーハウスでは、地元の人から観光客、小学生などの社会科見学まで、
見学を受け入れていて、カエデの森をガイドしてくれたり、
メープルシロップのつくり方を教えてくれるのでした。
そして、できたてのメープルシロップを販売していたり、
季節限定でパンケーキショップもオープンしていたりして、
この時期しか見ることのできない風景を五感で堪能できるのです。

カナダの人たちは、毎年この時期にお気に入りのメープル農家からできたてのメープルシロップを大量に購入するそう。

ちょうどカナダに滞在しているときに、
各地でメープルの収穫を祝うメープルフェスティバルが開催されていたので、
そのうちのひとつであるエルマイラメープルフェスティバルに参加してきました。
人口1万人くらいの小さなまちに、1日のお祭りのために
国内外より5万人以上の人が集まるそう。
メープルシロップを売る屋台やできたてパンケーキを売っている巨大テントまで、
お祭りらしいワクワク感でいっぱいです。

寒空のなか、メープルの甘い香りが立ち込めます。

衝撃的だったのは、パンケーキ投げ大会なるものがあり、
バケツリレーのようにチームでパンケーキをパスしていくゲームに
大人も子どもも夢中になっていました。
メープルを楽しむ方法はまだまだいろいろあるのだなと、
刺激をたくさんもらった旅になりました。

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秩父にシュガーハウスをつくりたい!

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秩父にシュガーハウスをつくろう!

カナダから戻ってきて、私のシュガーハウス熱は上がる一方。
「秩父にシュガーハウスをつくりたい!」
ただ、シュガーハウスをつくるのにはたくさんの問題が山積みです。
場所もお金も何もないなかで、悩んでいるうちに、
カエデの樹液を買い取って商品開発をしている〈秩父観光土産品共同組合〉が
ブランド戦略の一環としてシュガーハウスをつくることを計画し、
私もそのプランに参加させてもらえることになりました!
新商品開発のプロジェクトも立ち上がり、
秩父のメープル計画が大きく前進していきます。

まずは場所探し。一昨年の秋から、シュガーハウス候補地を探し始めました。
場所探しのポイントは、すでに建物があること。
市内中心部からのアクセス、周りの環境など項目を設定し、評価していきました。

探していくなかで出会ったのが、バブルの遺産とも言える
いまは使われていない立派な遊休施設でした。
使うとしても年数回というのを聞いて、本当にもったいないなーと
考えさせられたのでした。

そんななかで出会ったのが、〈秩父ミューズパーク〉という
秩父市街地を望む小高い丘陵地帯にある公園の中にあるログハウスでした。

やっと見つけた! その佇まいにひと目ぼれ。

もともと秩父ミューズパークは、西武グループと秩父市によりリゾート開発が行われ、
271.3ヘクタール(なんと東京ドーム57個分!)の広大な敷地の中に、
宿泊施設や野外ステージ、テニスコート、プールなどがつくられました。
が、10年前に西武グループが撤退したあとは、
秩父市と埼玉県に無償譲渡されていたのです。
秩父市民にとっては、子どもと遊んだり散歩したりする憩いの場所であり、
11月になると3キロにわたる銀杏並木が本当に美しい公園です。

青空と銀杏のコントラストが美しく、たくさんの人が見物に訪れます。撮影が行われることも!

このログハウスは、もともとゴルフのショートコースの
スタートハウスとして使われていたそう。
ぬくもり溢れるログと静かで緑あふれる周辺の環境が、
カナダで見てきたシュガーハウスのイメージとぴったり。
この場所で、日本初のシュガーハウスをつくります!

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