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連載

〈宮崎椅子製作所〉
デザイナーと職人とでつくりあげる
オンリーワンの椅子。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.025

posted:2014.12.26  from:徳島県鳴門市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

text & photograph

Kanako Mori

森 香菜子

もり・かなこ●徳島出身・徳島在住。フリーランスのデザイナーだったり、ライターだったり、編集者だったり、本(リトルプレス)と雑貨の店「uta no tane」(徳島市)の店主だったりしています。自分自身のものづくりや、誰かのものづくりを通して、「伝える」ことのお手伝いをしています。

宮崎椅子製作所からつながる徳島の森のはなし

豊かな森に囲まれている徳島県。
森の恩恵を受けてきた歴史は長く、鎌倉時代に木材を都へ搬出していた記録もあるほど。

県土のうち森林率は75%と高く、スギやヒノキの人工林の割合は全国屈指。
そのスギの半数以上は、間もなく樹齢50年となり
徳島県は全国よりも一足早く、間伐から「主伐」の時代を迎えることになる。

そこで県ではさまざまな林業施策に着手。
生産・加工・利用の三本柱を強化する「次世代林業プロジェクト」や
木の利用を全面に押し出した全国初の条例も制定。
これから迎える主伐の時代だけではなく、
10年先、さらに未来の森も見据えて動き出している。

徳島県の山間地域。木は暮らしのなかで身近にある存在。

鏡台椅子からダイニングチェアに

明治以降、鏡台産業が盛んだった歴史を持つ徳島県。
水軍の船大工が持っていた高度な技術を生かし生産され始めた鏡台は
工程ごとに分業制で、各分野に専門の職人がいたという。

1969年に創業した宮崎椅子製作所も、もともと鏡台椅子の下請け製作工場だった。
木取りから木地加工、組み立て、布張りまでイスづくりのすべてを
一貫して社内で行い、優れた技術を持つ職人は大勢いた。
しかし「自社製品を持たなければ先はない」と考えた二代目の宮崎勝弘さんは
家具デザイナーの村澤一晃さんや小泉誠さんとの出会いを機に
オリジナル製品づくりをスタートさせた。

現在は25名の若き職人が働いている。加工や組み立てなど各工程に分担して作業している。

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デザイナーと職人とでつくりあげる

「われわれはものづくりはできるが、デザインはできない。
しかしただ単純にデザイナーが提案する図面通りつくることも、面白くないと思った」

そうして、職人とデザイナーとが一緒に手を動かし、対等に話し合いをしながら、
ひとつのものづくりの完成度を高めていくという製作スタイルに辿り着いた。
村澤一晃さんや小泉誠さんを筆頭とする
外部デザイナーと連携して製品づくりを行っている。
デザイナーは2か月に一度、工場に足を運び、
試作の座り心地や美しさを確認しながら、その場で改良していく。
これを最低でも3回ほど繰り返し、半年以上かけて一脚をつくりあげる。
何度、試作をつくってもなかなか納得のいくものにならず
2年以上経っても完成しないものもあるという。

「宮崎椅子の椅子がつくりたい」
だからこそ、職人も妥協しない。
職人の技術や知恵、デザイナーのアイデアや感性、その両方を出し合う。
どちらもが納得し、お客さまにも求められるものをつくることが
宮崎椅子製作所がつくる意義だという。
デザインだけに頼るものでも、技術だけを誇示するものでもない、
機能と美をあわせ持つ、宮崎椅子製作所のオンリーワンができあがる。

機械技術の良さと人の手による技術の良さ。両方を取り入れながら精度の高い加工を行っている。

「いすのなるき。」という想い

現在60種ほどある椅子はすべて受注生産。
樹種は7~8種、張り地は60種以上から好きなものを選択可能。
なかでも「A stool」と「ENNE」は、
国産ヒノキ材での製作をオーダーすることができる椅子だ。
これらは構造上、強度を持たせたデザインをしているので
「柔らかくて家具には不向き」といわれるヒノキ材でも対応ができるのだ。

徳島県産ヒノキのほか、高知県産ヒノキも使用されている。

小泉誠さんがデザインした「A stool」。真横から見た脚のラインが特徴。スタッキング可能でコンパクトに収納できるスツール。

村澤一晃さんがデザインした「ENNE」。イタリア語で“N”という意味の名のとおり、N型の独特のフォルムは、強度のあるトラス構造。スタッキングも可能。

昔から建築や室内装飾に使われてきた日本固有の木を見直し、
使いづらいとされる針葉樹であっても、
高度な技術と工夫を用いて製品化を積極的に進めている。
「できれば県産材を使いたい」と話す宮崎代表。
「われわれのルーツは徳島にある」というその想いは、
宮崎椅子製作所が掲げるコンセプト「いすのなるき。」にも込められている。

「いすのなるき。」とは
“徳島”という大地に根を張った木が、
“職人”、“スタッフ”、“デザイナー”などたくさんの枝を広げ、
それらから生まれた“椅子”を、“販売店”という鳥が
また誰かのもとへと届けてくれる、ということ。

代表の宮崎勝弘さん。現場によく足を運び、いまもスタッフとともにものづくりを実践している。

宮崎椅子製作所の椅子にはすべてに製造番号がつけられている。
一脚一脚に込められた椅子への想い。
鏡台椅子から始まったその想いは、心地よく美しいダイニングチェアとなって
全国200店舗の販売店から飛び立っている。

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木のある暮らし 徳島・宮崎椅子製作所のいいもの

(右)A stool 価格:21,400円~(税別、ヒノキを使用した場合)/(左)ENNE 価格:36,800円~(税別、ヒノキを使用した場合)本社で直接販売は行っておらず、全国各地のショップで販売されている。

information

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宮崎椅子製作所

住所:徳島県鳴門市大麻町川崎字中筋710

TEL:088-641-2185

http://www.miyazakiisu.co.jp/

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