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連載

〈杉生〉
家具から柱まで、家まるごと
自慢の三河材でお届け。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.024

posted:2014.12.23  from:愛知県新城市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Nobuhito Yamanouchi

山之内伸仁

やまのうち・のぶひと●編集/執筆。東京の下町で生まれ育ち、2010年に南伊豆へ移り住む。山のふもとで薪割りしたり、本をつくったり、子育てしたり……。目下の目標は、築100年を超える母屋の改築。

credit

撮影:岩間史朗

杉生からつながる愛知の森のはなし

愛知県の区域面積の4割を占める約2200平方キロが森林で、
その大部分が、県北東部の三河山間地域に位置している。
三河では戦後を中心に植林が盛んに行われ、
県森林面積の6割がスギやヒノキなどの人工林。
その多くが森林資源として伐採に適した時期を迎えている。
近隣に大消費地を控え、大きな港にも恵まれていることから、
東海エリアの木材集散地としても活躍。
木材の流通・加工の拠点として、木材・木製品出荷額は全国トップクラスを誇る。

木漏れ日がさしこむ奥三河のスギ林。

「森林からの恵みを、直接お届けします」

三河材は鮮やかな赤身の色合いと、狂いの少ないおとなしい木質が特徴。
古くは、1340年の式年遷宮の材として、伐り出された記録も残る。
江戸時代初期には、江戸城や駿府城の御用材として、
明治から昭和初期には、「三河板」というブランド材として重宝されていた。
建材として東京を中心に出荷していた、“関東おくり”と呼ばれる好景気を迎え、
昭和40年代には県内で1000を超える製材業者があったが、
近年では、その8分の1ほどに減ってしまった。
一方、先人が育ててくれた山には、伐り頃のスギがたくさん生えている。

色鮮やかな表情を見せるスギの木肌。

そこで6社の製材所を中心に、設計士や建築家などが集結し、誕生したのが杉生。
製材して市場や問屋に卸すのではなく、
「森林からの恵みを、直接お届けします」を合い言葉に、
三河杉の特徴を生かした木製品の企画・開発・販売までを手がけている。

およそ2000立方メートルの材木が積んであるストックヤード。ざっと家100棟分。

「森は、つくる、守る、使う、戻すというサイクルで育まれてきました。
いま使えるものは、資源として無駄なく使うことが、
また森の環境を守ることにもつながるんです」と語る、社長の峰野成彦さん。
製材所の次男として奥三河で生まれ、
山や製材所を遊び場として育ち、幼少期から木に触れてきた。
地元の木に対する想いはひとしおだ。

ストックヤードで木材のチェック。持っただけである程度の含水率がわかるという。

「三河には太さ、長さの揃ったクセの少ない80年生のスギが豊富にある。
その三河杉のよさを知ってもらうためには、
まずは使ってもらわないと話になりません。
ウチでは、なるべくお客さんの選択肢が増えるよう、
構造材から化粧材、下地材、家具、建具まで、
家一棟まるごとの部材を商品化しています」

近頃の多様な住宅デザインに合わせ、厚さや幅など豊富なサイズを取り揃えている。
コスト的にはロスになるようなものでも、三河のスギを使える資源として送り出す。
あらゆるニーズに応えたいという思い。
複数の製材所と連携しているからこその強みでもある。

一度に4つの面を加工し、床材や壁材などへと仕上げていく。

オリジナル家具やオーダー家具を担当する女性職人。

丸太からをいろいろなサイズの部材をとることで、
木材のロスは少なくなっているという。
製材であまった木からも角材や木を積むときに挟む桟木をとる。
その端材はチップにして製紙会社へ。
チップ用の粉砕器にも入らない、細かな端材は
オガ屑にして近隣の酪農家に提供し、敷藁として活用してもらっている。

三河杉の魅力を語る峰野成彦社長。

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三河杉の魅力を生かす乾燥のこだわり

「スギは空気層が多いので、冬はほんのり温かく、
夏はスッと汗がひくような涼しさがあります。適度な調湿機能もある。
傷がつくのが欠点といわれますが、その柔らかさは長所でもあるんですよ。
肌触りが優しく、衝撃を吸収してくれる。
収縮率が大きいので、狂いの出やすい木ではありますが、
品質管理を徹底することで、寸法精度を安定させているんです」

木材の精度の高さが、信頼へとつながりユーザーを拡大してきた。
部材全体の品質を安定させるため、乾燥は製材所にまかせないで、
杉生でまとめて行っているという。

その乾燥方法にもこだわりがある。
従来の高温乾燥は、短期間で強制的に乾燥させるため、
木の細胞が壊れて、香りも色味もあせてしまう。
杉生では、天然乾燥と併用して、
低温で木の自発的な乾燥を促すバイオ乾燥を取り入れている。

乾燥室の中は40℃以下に保たれ、じっくりと材を乾燥させる。

ぬるめのサウナで木に汗をかかせるような乾燥工程。

「木の細胞を破壊しないので、スギの香りや色味がほとんど変わらない」
結果として、乾燥にかけるエネルギーコストも削減できたという。

三河杉の特徴のひとつでもある色の濃い赤身(中心の赤い部分)は、
耐水性に優れていることから、かつては和船の材料に使われるなど、
「三河の赤身」と呼ばれ重宝されていた。
いまは外壁やデッキなどのエクステリア材として人気が高い部材だ。
手間をかけた乾燥方法により、その赤身の鮮やかさもしっかりと保たれている。

木のこと、森のことを知ってもらう山の見学会

杉生では、春と秋の年2回、山の見学会を開催している。
肉や魚が切り身となって店頭に並ぶまでの過程に
触れる機会が少ないのと同じように、
森にある木が、柱や家具になるまでの過程に触れる機会も少ない。
木材がどのようにしてできるのかを知ってもらうため、
山の伐採現場では木が伐りだされる様子を、
製材所では丸太が四角く製材される過程を、
そして杉生では乾燥や加工をし、
家具や構造材になるまでを、見学してもらっている。

杉生を支える製材所のひとつ、山幸木材店の服部賀充社長。

「自分の家に使われる木が、どこからどのようにして
できているのかを知ると、みなさん安心されますね。
それと同時に、地域材で家を建てることが、
森を守ることにもつながるんだ、ということを理解してもらっています。
この見学会に参加すると、みなさん不思議と自分の家や
家具への愛着が増すそうですよ」
森の恵みである木を無駄なく商品化し、よろこんで使ってもらう。
それがまた森を再生し、守ることへとつながっていく。
森は過去からではなく、未来からの預かりものとして、
子どもたちに残し、語り継いでいきたい、と杉生は考えている。

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木のある暮らし 愛知・杉生のいいもの

収納ボックス 価格:右から2,000円、3,000円、4,000円(すべて税別) 奥三河のスギを使用した1段から3段までの収納用ボックス。スギの裏板がついた収納ボックスもあり。

information

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杉生

住所:愛知県新城市矢部字土取10-2

TEL:0536-24-1530

http://sugishou.com/

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