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連載

〈土佐龍〉
四万十ヒノキの名付け親は
次々と商品を生み出す
「木の料理人」

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.017

posted:2014.12.8  from:高知県須崎市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Masanori Takahashi
高橋正徳

たかはし・まさのり●写真と映像。時々ライター。日本写真家協会〈JPS〉会員。風景、ストリート、人物と撮影の幅は広い。ライフワークとして福島の冬を撮り続ける。広島県出身。あまりに高知が好き過ぎて、高知に定住することに。

土佐龍からつながる高知の森のはなし

太平洋に面した高知県だが、すぐそばには雄大な山々が迫る。
県土の84%を森林が占め、森林率は全国1位。
清流・四万十川や仁淀川、豊富な資源を有する海も、
この大きな森林によって守られてきた。
だからこそ、人と森林の関わりも密接。
人工林率は65%とこちらも全国2位の高い割合だ。
しかし、木材価格の低迷によって森林環境は荒廃。
森はもちろん、川や海にも悪影響を与え始めていた。
そこで、全国に先駆けて平成15年に「森林環境税」を導入。
森の保全だけでなく、子どもたちの森林環境教育や、
県産材の利用支援などにも活用されている。
また、県産材にこだわったプロダクトも数多く誕生。
安芸郡馬路村を中心に自生する「魚梁瀬杉」や
四万十流域で生産される「四万十ヒノキ」など良木の生産地である誇りと、
高知らしい自然環境を守るため、今日もだれかが森を思い、木と向き合っている。

間伐が進み、上からは太陽の光、下からは新しい命が芽吹く高知の森。

四万十ヒノキの名付け親

最後の清流「四万十川」。
高知県津野町に端を発し、蛇行を繰り返しながら、土佐湾に注ぎ込む。
流域の年間降雨量は、東京の2倍、大阪の3倍にも達し、
空からの雨の恵みが豊かな天然林と広大な針葉樹林を育んできた。
この流域で生まれたヒノキは、いま「四万十ヒノキ」とよばれている。

赤みを帯びた四万十ヒノキ。独特の心地よい香りが辺りに立ち込めていた。

名付け親は、土佐龍の創業者で社長の池龍昇さんだ。
約30年前。同じヒノキでも育った環境や地域によって、
その成分が大きく異なることに気がついた。
「雨の多い四万十川流域で育まれたヒノキは油脂分が多く、
水をはじきやすい。とても使いやすいんです」

製材された四万十ヒノキは、南国・高知の空の下、ゆっくりと時間をかけて乾燥されていく。

建材にも木工品にも、どんなものにでも使える、
この四万十産の良質のヒノキの存在をもっと知ってもらいたい。
その強い思いから、池さんは清流四万十川の名前を冠した。

 

「私は木の料理人」と語る土佐龍の池龍昇社長。新しいアイデアを次々と生み出してきた。

「木の料理人」とは。

優秀な料理人ほど素材も道具も大切にする。
包丁を研ぎ、鍋を磨き、魚を、野菜を余すことなく料理に活用し、丁寧に調理する。
「料理人が素材を捨てないように、私たちもできるだけ木を捨てません」

材木は製材過程で4割が捨てられると言われる。
しかし土佐龍ではその部分を最大限活用し、
バスやキッチン用品を中心に、さまざまな製品を開発してきた。

リラックス効果の高いアロマピローに使われる四万十ヒノキ。臼でつくことで、角を取り、丸みをもたせる。

まな板、バスマット、風呂イス、ソープ入れ、トレイ、
コースター、バターナイフ、洗濯板……。
その数、400種類以上にも及ぶ。

「日本の山は、まさに宝の山」と池さん。
土佐龍は、知恵と技術で、四万十川流域の山を宝に変え続けている。

犬用の木のおもちゃ。ひとつひとつ丁寧につくられる。

工場で犬用のおもちゃを加工していたのは、
木のおもちゃを制作する「TAKEDA GANGU」の武田勇馬さん。
神戸出身の武田さんは元土佐龍社員。
「何も知らない若造だった僕に、池社長は会社の機械を自由に使わせてくれた」
夕方、勤務が終わると、武田さんはひとり機械の前に立ち、
自分自身の創作に打ち込んだ。
「本当に、池社長は大きな、大きな人」
駆け出し時代を支えてくれた池さんへの恩返しの思いも込めて、
いまも工場が忙しいときは手伝いにやってくる。

「土佐龍があったからいまの僕がある」と語るTAKEDA GANGUの武田勇馬さん。

機能を追求したらデザインにいきついた

「見せない台所から、見せるキッチンに変わる」
そう確信した池さんは、まずデザインを取り入れ、
まな板をカッティングボードと呼んだ。
それまでいくら四万十川流域のヒノキの良さを説明しても、
見向きもしてくれなかった東京の卸問屋が、興味を抱いていくれるようになった。
「手にとってもらえれば、きっと買ってもらえる」
池さんは商品に自信があった。
デザイン性に富み、細部にまで機能を追求したまな板は、すぐに評判を呼んだ。
そこからは早かった。いま、まな板は年間20万枚を販売するまでに成長した。

コロカル商店で取り扱う「土佐龍 土佐板」は薄さ8ミリ。

薄さ8ミリのまな板は、土佐龍で最も高い技術をもつ職人の笹倉岳さんが担当する。
薄い木は反りが出る。それを防ぐため、わずか3.3ミリにスライスしたサクラを、
反り止めとしてヒノキの間に差し込む。
そのサクラにはすべり止めとして、1ミリほどのくぼみも掘ってある。
すべて手作業だ。1日20枚ほどしか製作できない。
「こだわりは捨てない。それが職人としての誇りです」と笹倉さん。

現在、土佐龍の商品は、7か国以上で販売されている。
「日本の木材は世界に誇れる品質。
外材との価格競争はしない。品質に妥協はしない。
これからも大切に丁寧に、四万十ヒノキの素晴らしさを伝えていきます」
と池さんはいう。

斬新なアイデアと機能を追求したデザイン。
高い技術と職人としてのプライド。さらにもうひとつ。
土佐龍には、世界を見据えた経営戦略も備わっていた。

木のある暮らし 高知・土佐龍のいいもの

土佐板 価格:Sサイズ4,500円、Mサイズ5,500円、Lサイズ6,500円(すべて税別)コロカル商店の紹介ページはこちら

information

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土佐龍

住所:高知県須崎市浦ノ内東分2830
TEL:0889-49-0111
http://www.tosaryu.com/

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