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連載

〈ヒノキカグ大正集成〉
家具でヒノキの可能性を高めて、
森に返していく。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.016

posted:2014.11.26  from:高知県高岡郡四万十町  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Sayo Takahashi
高橋さよ

たかはし・さよ●高知生まれ、高知育ち、高知在住のフリーライター。高知のことなら何でもどこへでも取材にいく。尊敬する人物は土佐清水市の英雄・ジョン万次郎。「鰹のたたき」はタレとタマネギたっぷりが好み。

credit

撮影:井戸宙烈
(studio.ZONE V)

ヒノキカグ大正集成からつながる高知の森のはなし

太平洋に面した高知県だが、すぐそばには雄大な山々が迫る。
県土の84%を森林が占め、森林率は全国1位。
清流・四万十川や仁淀川、豊富な資源を有する海も、
この大きな森林によって守られてきた。
だからこそ、人と森林の関わりも密接。
人工林率は65%とこちらも全国2位の高い割合だ。
しかし、木材価格の低迷によって森林環境は荒廃。
森はもちろん、川や海にも悪影響を与え始めていた。
そこで、全国に先駆けて平成15年に「森林環境税」を導入。
森の保全だけでなく、子どもたちの森林環境教育や、
県産材の利用支援などにも活用されている。
また、県産材にこだわったプロダクトも数多く誕生。
安芸郡馬路村を中心に自生する「魚梁瀬杉」や
四万十流域で生産される「四万十ヒノキ」など良木の生産地である誇りと、
高知らしい自然環境を守るため、今日もだれかが森を思い、木と向き合っている。

間伐が進み、上からは太陽の光、下からは新しい命が芽吹く高知の森。

切って、つなげて、形にする森林組合

四万十川が流れる高岡郡四万十町。ここには壮大なヒノキの森が広がっている。
「四万十ヒノキ」と呼ばれており、油脂分を多く含み、
ほんのりピンク色でツヤもいい、耐水性があって、加工もしやすく、
なかなか優秀な木材といわれている。
その四万十ヒノキの伐採・運搬から、集成材加工、デザイン、製造までを独自に行い、
オリジナルブランド「ヒノキカグ大正集成」を確立したのが
「四万十町森林組合大正集成工場」だ。

ほんのりとしたピンク色が四万十ヒノキの特長。

木は、切ったものすべてが使われているわけではない。
市場価値が低い木は、切って運び出してくるだけでもコストになる。
となると、切った木を森に放置するしかない。そして、森は荒れていく。
その現実を目の当たりにした同組合は、「少しでも山の活性化になれば」と、
平成元年に集成材の加工工場の操業を開始した。
市場価値の極めて低い木材をカットし
良い部分をパッチワークのようにつなげて再生するのが集成材。
加工段階で出る木屑や端材もムダにすることなく
木質バイオマスボイラーの燃料としてすべて利用。
森にあるすべての木に、新たな価値を生み出した。
製造した集成材は、当初住宅メーカーなどへの販売が中心だったが
安価な外国産に対抗できず、それだけでは採算がとれなかった。
そこで最終製品まで手がけることで、集成材に付加価値をつけようと計画。
「形にする森林組合」が始動したのだ。

職人たちの休憩スペースにはオリジナルのイスが並ぶ。ここから新しい家具のヒントが生まれるのだろう。

森から切り出された四万十ヒノキ。木皮や木屑などは木質バイオマスボイラーに利用される。

国産材を使うことが再び当たり前になるように。

いま、ヒノキカグ大正集成がもっとも注力しているのは
福岡県にある「佐々木デザインインターナショナル」と共同で企画した
子ども家具シリーズ「MORITO」。
「世の中にある子ども用家具は、多くが外国製で、
国産木材を使った日本製の家具がなかった。
自分の子どもに使わせたいと考えたときに、
きちんとした日本製のものをつくりたいと企画しました」
そう話すのは、ヒノキカグ大正集成で企画・設計を手がける高橋康太さん。
デザイナー村澤一晃氏による家具デザインを、高橋さんが実際の設計に起こしていく。
そこにはヒノキならではの特性を生かした工夫が隠れている。

「山が好きだからこの仕事に就いた」という、ヒノキカグ大正集成の企画・設計担当、高橋康太さん。

「ヒノキの特性上、ビスやクギだけで組むと強度に問題が生じやすいので
荷重のかかる位置を計算しながら、木と木を組み合わせる構造になっています。
また、ヒノキは針葉樹なので、角が丸くないとささくれ立って剥がれたりする。
目に沿って割れやすいといった特性もある。
加工の段階から見えない工夫がたくさんあります」(高橋さん)

26年間工場で働き続けている工場長、廣田和也さん。

加工場では、木をカットする・プレスする・研磨するなど各作業を分担して行っており、
若者から「親方」と呼ばれるベテランまで、30人以上が働いている。
「そのひとりひとりが『職人』としての自覚を持ってやっています」
と話すのは工場長、廣田和也さん。
「木はまっすぐ生えているわけではないので
加工の段階で狂いをなくすことが基本となります。
そして、四万十ヒノキならではの特性を残すことも大事。
自然な色を保ち、ヒノキのいい香りを保つことができる乾燥技術で
ヒノキの良さをご家庭でも感じてもらえれば」(廣田さん)

安全面とヒノキならではの優しい木肌が生きるように、丁寧に磨きをかけていく。

子どもたちが使うものだからこそ、使いやすい形になっているのはもちろん、
四万十ヒノキの柔らかな質感、優しい香り、ほんのりとしたピンク色を
感じられるものであってほしい……。つくり手たちはそう願っている。
「目の前にたくさん生えているのに
『ヒノキってなに?』という子どももたくさんいるんです。
山のことを知らない人にもスギやヒノキの良さを知ってもらい、
子どもたちが大きくなったときに、再び国産の木材を使うことが
当たり前になってほしいですね」(高橋さん)

大型機械が並ぶ集成材工場。職人ひとりひとりが責任と誇りを持って作業にあたる。

林業の人間として、森を守りたい。

同組合の長年の努力によって、四万十町の森の状態はいま、「すごくいい」という。
「面倒くさいから、お金にならないからと、これまで山に捨ててきた木材でも
少し手をかけてあげれば、こんなにいいものができるんです。
林業をやっている人間としては、これからも『木をいかに生かすか』
ということにこだわっていきたい」と高橋さん。
すると、廣田さんもこう続ける。
「加工のクオリティを高めていってヒノキの可能性をもっともっと広めていきたい。
そして、山に返していくことをもっとできれば」
デザインする者、加工する者、すべての人の胸に共通するのは
「地元の森を守っていきたい」という思い。
森に囲まれたこの地で生きていく者の覚悟と使命感が、木の新しい価値を創造していく。

木のある暮らし 高知・ヒノキカグ大正集成のいいもの

時計 価格:3,800円(税別) コロンとしたフォルムがかわいい置き時計。

(右)ロッキング 価格:21,000円(税別)/(左)クルマ 価格:28,000円(税別) 木製玩具も人気のアイテム。木のやさしい質感を気に入り、長時間遊ぶ子どもも多い。

MORITO チェア 価格:23,000円~(税別)/テーブル 価格:25,600円(税別) 四万十ヒノキの集成材でつくられた子ども用テーブル&チェア。ヒノキならではの軽さで子どもでも簡単に持ち運べる。テーブルは2台、チェアは5脚まで積み重ね可能。

information

map

四万十町森林組合大正集成材工場
ヒノキカグ大正集成

住所:高知県高岡郡四万十町大正473-1
TEL:0880-27-1101
http://hinokikagu.com/

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