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連載

〈木村木品製作所〉
役目を終えたりんごの木に新たな
使い道を吹き込んで商品に

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.013

posted:2014.11.13  from:青森県弘前市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Yoko Aramaki
荒巻洋子

あらまき・ようこ●ときに編集者、ときに原稿の書き手。斜に構えるところがあるのを自覚しているが、意外に単純でやさしくされることに弱い。東京の西の地・青梅生まれ。自然いっぱいの中で育つ。自然、人、食に興味がある。

credit

撮影:岡田善博

木村木品製作所からつながる森のはなし

青森県は、国内のりんご生産量の56%も占める、
いわずと知れたりんご県だ。
その中でも弘前市は、青森一の生産量を誇る。
その一方で、栽培面積の減少や
りんごの木の老齢化などの問題も抱えている。

しっとりした触感と風合いがりんごの木の魅力

りんごの生産量日本一の青森県弘前市。
晩の寒さが徐々に身にしみるようになってきた秋のころ。
いたるところにりんごの木が見られ、
ちょうど、真っ赤に色づいたりんごが木々を飾っていた。

訪ねたのは、この地に会社をかまえて40年だという木村木品製作所。
建物は、1階が木工所になっていて、
職人さんたちがもくもくと作業に勤しんでいる。

職人さんたちは、それぞれの持ち場で作業にとりかかる。使う工具もさまざまだ。

「用事のある方は2階へ」「事務所は2階です」
階段の立ち上がり部分にこう書かれたメッセージに従って階段を上ると、
そこには、木村木品製作所の社長・木村崇之さんが待っていた。

木村木品製作所は、ほかではあまり見ることのない、
りんごの木を使ったものづくりをしている木工所だ。
と言葉にすると簡単だが、実はりんごの木を商品にするのは
とても苦労の要することなのだ。

そもそも、木村さんがりんごの木を使うことになったきっかけは、
知人に「りんごの木を大量に廃棄処分しなくてはいけないが、
これを何かに使えないか?」と相談を受けたことだという。

訪ねたときも、木工所の前に丸太がごろごろと転がっていた。
「これ、ちょうど昨日伐採に行ってきたりんごの木なんです。
手入れをする人がいなくて10年も放置されていたらしいんですが、これは上物ですね」

伐採したばかりのりんごの木というだけあり、触れるとしっとりとしていた。

こんなふうに役目を終えたりんごの木を伐採しに出向き、
切り出しから乾燥までを自社で行っている。

たいていの場合、木工所は、決められた尺にカットされ、
乾燥までなされた木材を製材所から仕入れる。
しかし、りんごの木は流通にのっていないため、
自らチェーンソーを持って出向き、伐採から始めなくてはいけないのだ。

「製材屋さんに頼んだほうがどんなにラクか。
よく『りんごの木はタダなんでしょ?』と言われるんですが、とんでもない!
それ以上に大変なことが山積みですから。
『タダより高いものはない』とはよく言ったもので、
りんごの木にみんなが手を出さない理由がわかりますよ」
と苦笑する。

もともと水分の多いりんごの木は、乾燥がとても大変なのだが、
それがもっとも重要なことのひとつだとか。
外に並べて自然乾燥もしているが、
それだけで足りない分は、手づくりの乾燥室に入れる。

外で乾燥中の木材。これは弘前城の桜の木だが、ここにりんごの木が並ぶこともある。ちなみに、木村木品製作所では弘前城の桜の剪定木を使ったプロダクトも手がけている。

分厚いビニールシートが四方に敷き詰められた部屋に
木材が並べられていて、除湿機がかけられていた。
「こんなふうに何でも手づくりですよ。
でもこれ、けっこういいんですよ、
1日で除湿機の水受け容器がいっぱいになりますからね」
と木村さん。

厚いビニールシートをめくり、手づくり乾燥室を見せてくれる木村さん。中には、たくさんのりんごの木が眠っていた。

また、りんごの木は硬いので、加工するときは充分注意が必要だという。
切り出しを行っていた職人さんは、慣れた手つきで作業を行っていたが、
彼でも「こわいですよ」なのだそうだ。

慣れた手つきでりんごの木の箸用に切り出しを行う。押さえの板は手づくりのオリジナル。

このように一筋縄ではいかないりんごの木。
それにもかかわらず、りんごの木を使い続ける木村さん。
その理由をこう話す。
「扱いは大変ですが、ほかに使っている人がいないですからね。
それに、ぼくは、りんごの木の風合いが好きなんですよ。
決してほかの木に劣らない存在感があると思っています」

さらに、りんごの木と木村木品製作所は
不思議な縁があるように思うとも。
「うちは、曾祖父の代から木を使った仕事をしているんですが、
曾祖父は青森ヒバを使ってりんご栽培用のはしごをつくっていたんです。
そして、ぼくの代になってりんごの木を使った木工品ができた。
りんごとともに歩んできていまがあると思っています」

こんなふうにりんごの木に想いを寄せる木村さんが手がける
商品のひとつに離乳食用の食器がある。

「知り合いから木を使った離乳食用の食器がほしいと頼まれたんですよ。
じゃあ、形はどうしようとなったときに、
りんごの木でりんごってベタでいいなあと(笑)。
職人さんと『ここは丸くしてみようか』なんていうふうに
会話をしながらできたものです」

しっとりとした触感と、両手にしっくりおさまる感じが魅力の食器とスプーン。

ほかにも、職人さんと相談しながらできた商品がりんごの木の箸だ。
当初は頭の部分を丸く削る予定だったそうだが、
その途中で「かわいい!」と思い、削るのを止めてもらったという。
その結果、頭の部分がとんがった形の箸ができあがった。

頭の部分が山状になった理由を、実物を見せながら話す木村さん。弘前市にある、青森県一高い山、岩木山のようでもある。

「ひとつの商品をつくるときは、計算をしているわけでなく、
なんとなく流れでね。うちは安易なんですよ」
と木村さんは笑うが、これは考える人とつくる人の距離が近い証拠だ。

「図面だけを渡されて、これをつくってという状況では
こうしたアイデアは決して出てこない。
つくったものはすぐに見て、あれがいい、これがいいって話し合える。
大きな企業と違って、みんなの距離が近いからこそできること。
それはうちの最大の強みだと思います」

職人さんは、上は60代から下は20代までの9人。「各年代が均等にいるので、上から下へ技術の継承ができるのがうちのいいところです」

りんごの木は、収穫しやすいように、
上ではなく横に伸びていくように育てるため、長い木材がとれない。
そのため、小物しかつくれないのだそうだが、
創意工夫を凝らした、りんごを使った商品はまだまだある。

混ぜる部分が一直線になった形が特徴的な料理ベラもそのひとつ。
これは津軽塗りのヘラからヒントをもらったそうだ。
「津軽塗りのヘラを見ていたときに、
単純に『いい味出しているなぁ』と感心したんですね。
シンプルで飾らない形が好評なんですよ」
こんなところにも、青森テイストが盛り込まれていたとは驚きだ。

混ぜる部分が平らなので、鍋の端までしっかり混ぜられる。

「ぼくらは、盛るデザインでなく、削るデザインを心がけている」
という言葉通り、木村木品製作所の商品は、
どれもシンプルで使い勝手がよさそう。
それもこれも、木村さんと職人さんの“会議”のたまものなのだろう。

左から4番目が木村さん。職人さん、事務スタッフとともに、伐採されたばかりのりんごの木の丸太の前で。

木のある暮らし 青森・木村木品製作所のいいもの

りんごっこセット 価格:7,000円(税別)/サイズ(約):りんごっこディッシュ=幅9.5×奥行9×高さ3cm、マッシュしゃじ=長さ12cm/材質:天然木(りんごの木) 離乳食用食器は赤ちゃんだけでなく、大人も使いたくなるかわいらしさだ。コロカル商店の紹介ページはこちら

information

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木村木品製作所

住所:青森県弘前市千年4-3-17
TEL:0172-87-2747

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