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連載

〈伊達クラフトデザインセンター〉
素材の短所を補い、
長所を生かして魅力ある商品に。
私たちは、木の料理人。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.008

posted:2014.10.29  from:福島県伊達市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Emiko Hida
飛田恵美子

ひだ・えみこ●茨城出身、神奈川在住。「地域」「自然」「生きかた・働きかた」をテーマに、書くことや企画することを生業としている。虹を見つけて指さすように、この世界の素敵なものを紹介したい。「東北マニュファクチュール・ストーリー」の記事も担当。

credit

撮影:山本恵太

伊達クラフトデザインセンターからつながる福島の森のはなし

北海道、岩手に次いで広い面積を持つ福島県。そのうちの71%、
実に9754㎢は森林で覆われている。これは全国で4番目の広さだ。
針葉樹よりも広葉樹の占める割合が高く、人口林率は35%。
針葉樹では、スギ、アカマツ、クロマツ、広葉樹ではナラ、クヌギが
多いことが特徴。桐の生産量が日本一を誇ることでも知られる。
豊かな福島の森から生まれるプロダクトを紹介したい。

風評被害に苦しむ福島県の林業を応援しよう。県を越えて、若手事業者が集まった。

「ものづくりを通して木の良さを伝え、地域材の活用を進めよう」
そんな想いから、関東で木に関わる仕事をしている若手4人が集まり、
魅力ある木工商品を次々生み出している。……という噂を聞いて、
福島県北の伊達市を拠点に活動する、伊達クラフトデザインセンターを訪れた。

白井木工所代表取締役の白井貴光さん。

迎えてくれたのは、メンバーのひとりである白井貴光さん。
伊達市で木製建具や家具を製造する白井木工所の4代目だ。

白井さんが仲間と一緒に伊達クラフトデザインセンターを設立したのは、
2013年のこと。東京大学で開かれた、
地域材の利用を促進するための勉強会がきっかけだった。

白井木工所の工場でのひとコマ。

「人工林は間伐など定期的な手入れを必要としますが、
安価な外材に押されて国産材が売れなくなったことなどから、
森に人の手が入らず荒れてしまっています。
はたから見ると、林業家と木工所は近い関係に見えるかもしれません。
でも、意外とお互いのことを知らなかったりするんです。
私たちのように川下に近い事業者も、川上である林業の現場のことを考えて
木材を選ぶ必要があることを勉強会で学び、実践することにしました」

メンバーは、千葉、栃木、東京で家具・建具を製造する企業の社長や専務たち。
伊達を拠点としたのは、原発事故の影響で苦境に陥っていた福島県の林業を
応援するためだ。震災後、福島県の林業産出額は億単位で減少している。

「でも、福島県木材協同組合連合会が定期的に県内の製材所の検査を実施していますし、
事業者側も独自に厳しい基準を設定して自主検査しています。
調べてみたら、安全性は問題ないことがわかりました。
それなら、私たちのような事業者が積極的に使うことで、少しでも復興に寄与できれば。
4人の意見が一致して、福島県産材を活用した商品開発に取り組み始めました」

精緻で美しい組子細工が楽しめる置物。

そうして生まれた商品のひとつが、写真中央の「伊達KUMIKO」。
組子細工の伝統模様をインテリアアイテムに仕上げた商品で、
福島県産のスギ・ヒノキを使用している。

組子細工とは釘を使わずに木と木を組み合わせてさまざまな模様を表現する伝統技術。
障子や欄間の装飾として使われてきた。
1000分の1ミリ単位の精度で加工するため、紙1枚入る隙間もないという。

熟練した職人による匠の技が光る技術だが、
洋風の家が増えたいま、職人がその腕を振るう機会は減っている。

白井さんは、「現代の名工」と認定された父から組子細工の技術を受け継いだ。

「歴史ある技術を自分たちの代で途絶えさせてはいけないと思ったんです。
後世に受け継ぐために、いまの時代に合うよう、リデザインしました」

洋風の玄関やリビングに置いても違和感のない佇まい。
木の柔らかな風合いと職人が織りなす緻密で美しい伝統模様が
身近に楽しめるとあって、好評を得ている。

丸みのあるデザインで女性にも好まれている、木製ぐいのみ。

掌へのおさまりがいいぐいのみの「楽香(らっこう)」は、
ヒノキの芯去材を使って開発したもの。
東京大学名誉教授・安藤直人氏のデザインで、製作は会津の木地師に依頼した。

「普段は会津漆器を製作している職人さんです。会津漆器も伝統工芸品ですが、
少しずつ職人の数が減ってきています。その方々の仕事になればと思いました」

内側はあえて塗装を施していないため、樹液がじんわりと染み出してくる。
微量とはいえ、何十年も生きたヒノキの樹液が含まれた酒を飲んでいると思うと、
なんとも不思議な気分だ。ヒノキがほのかに香るのも快い。
引き出物に使われることも多いというのも頷ける。

包みこまれるような柔らかな音を出す木製スピーカー。

「これが一番の人気商品なんですよ」と白井さんが紹介してくれたのは、
木製のスピーカー。メンバーの知人にスピーカーマニアがいたことから開発した製品で、
柔らかな良音が出るため、音質にこだわる人からも高い評価を受けている。

中央の「椀音(わおん)」は、「楽香」の木地屋さんに協力してもらって開発したもの。
素材はヒノキで、ころんとした形が可愛らしい。
その隣は「デスクトップタイプ」、両端は「高音タイプ」。
どちらもスギを使っていて、木目が美しい。目にも耳にも心地よい商品だ。

「ぜひ聴いてください」と音楽を流してくれた白井さん。
型ごとの特徴を説明しながら、「いい音でしょう?」と目を細める。
白井さんにとってもこのスピーカーはお気に入りのようだ。

いいものをつくらないと、ユーザーに届かない。

商品は主に、白井木工所と千葉の山二建具でつくられる。

これらの商品はどれも、福島県産材を中心に使い、
メンバー4人がそれぞれの強みを生かして開発・製造している。
こだわっているのは、福島県産材を使うだけでなく、そこに+αの魅力を加えること。

「工業商品と比べると、木材を使った商品はどうしても高くなりがちです。
その分いいものをつくらなければ、一般ユーザーには届かない。
温かみや心地よさといった木の魅力に、
機能性やデザイン性といった付加価値をつけることが大事なんです。
木商品を身近に使ってもらって、そこから、“木っていいね”
“せっかくなら地域材を使おうか”と思ってもらえたら、嬉しいですね」

「戦後に植林した木が育って、いまが使い時なんです」と白井さん。白井木工所のお客さんにも国産材や地域材を薦めているという。

難しいのは、ひと口に福島県産材といっても、
エリアや山の状況、手入れの度合いによって特徴が異なる点だ。
木肌が黒っぽく、商品にするには難しいものもある。
でも、白井さんはそうした木材も諦めない。

「一般的には欠点かもしれない特徴も、うまく配分すればデザインになる。
それを考えるのが私たちの仕事です。
農家さんが育てた野菜をおいしい料理に変えるのが料理人なら、
私たちは林業家さんが伐ってきた木を加工して商品にする、
いわば木の料理人ですね」

今年春には、復興住宅向けの耐震型家具も開発した。地震を経験した福島ならでは!

欠点を補い長所を伸ばし、どんな素材も魅力ある商品に変える、凄腕料理人。
伊達クラフトセンターの生み出す“おいしい”商品を、あなたも味わってみては?

木のある暮らし 福島・伊達クラフトデザインセンターのいいもの

伊達KUMIKO 価格:11,574円(税別)釘を使わず、木を組み合わせて模様を表現する組子細工。かつて欄間などに使われていたこの伝統技法を後世に受け継ぐため、洋室にも合うインテリアアイテムに仕上げました。http://dc2.co.jp/product/product_item_01.html

information

map

伊達クラフトデザインセンター

住所:福島県伊達市上野崎5-2
TEL:024-573-0141
http://dc2.co.jp/

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