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連載

〈石巻工房〉
ワークショップ発信のデザイン。
D.I.Y 精神で自分なりの
家具をつくる。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.006

posted:2014.10.16  from:宮城県石巻市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Sawako Numata
沼田佐和子

ぬまたさわこ●エディター/ライター。宮城県名取市出身。震災の津波で、家に漁船が流れ着いたため、仙台に移住。大して愛着もなかった地元が急に愛おしくなり、週末ごとに通う日々。一番好きなのは娘。本と純米酒も好き。牛たんのお店も詳しいです。

credit

撮影:佐藤紘一郎(Photo516)

石巻工房からつながる宮城の森のはなし

県土の約58%=約42万ヘクタールが森林に覆われている宮城県。
6500万平方メートルの森林から、毎年50万平方メートルが伐採され
木材として生産されている。
山々はスギやアカマツなどの針葉樹を中心に、
ブナやナラなどの広葉樹も広く分布している。
鳴子杉や津山杉など、美しい文様のスギが育つことでも知られている。

木の表情を生かすシンプルで頑丈な家具。

石巻の海のすぐそば。
潮の香りとともに、やわらかな木の香りがいっぱいに広がる工場で、
5、6名ほどの若いスタッフが、時々笑い声をあげながら家具づくりに精を出している。

ここ、石巻工房が誕生したのは、東日本大震災の4か月後、2011年7月。
津波の傷跡が深く残る石巻に、クリエーターやデザイナーが集まって工房を開いた。
目的は、地域の人々の就労の場と、交流の場をつくること。
ワークショップやイベントなどを開催しながら、
地域の盛り上げ役として、今年で4年目を迎えている。

干物工場だった建物を改修して工房として使っている。

石巻工房が作る家具は、作りが簡単かつ頑丈で、機能的なものばかり。
ワークショップなどを通して市民が考案し、
デザイナーがブラッシュアップしたものもある。
一見、驚くほどシンプルだが、それこそが石巻工房の狙い。
屋外でも室内でも気にせず使えて、気に入らない部分があれば、
自分で切ったり、削ったり、色を塗ったりして使える。
そんな柔軟性のある家具を目指し、新しい製品をつくり続けている。

まっすぐカットした木材をビスで固定する。石巻工房の家具は、このスタイルでつくられているのものが多い。

石巻工房のプロダクトは色もオイルも塗らない。
木の色味や年輪、フシなどが、そのまま家具の表情として現れてくる。
「木は生き物。揃っていないのは当たり前ですからね。石巻工房のテーブルは、
天板が同じ色で揃うことは、まずありません。でもそれが、製品の味になるんです」
代表の千葉隆博さんは、棚を片手に、そう話してくれた。

千葉さんは、震災前はその道20年の寿司職人だった。

レッドシダーから国産スギへ。3年目の新たな挑戦。

現在、石巻工房でつくられる多くの製品は、
2×4規格のレッドシダーでつくられている。
石巻工房では、震災後、新しい施設やスペースのために、たくさんの製品を製造した。
耐久性が高く、柔らかなレッドシダーは、
素人でも簡単に、スピーディに加工できる便利な素材だった。

一方で最近、石巻工房では新たな挑戦を始めている。
宮城県産の木材を使用するということだ。
「毎日木を触り、商品をつくっていくなかで、いつしか、
植え過ぎてしまった木や間伐材があるのなら、その木を使った製品づくりを担いたい
という想いが湧いてきたんです」と千葉さん。
まずは手始めに、石巻市中心部で行われた
「石巻 まちの本棚」のワークショップで、県産のスギ材を使った。
産地は栗駒。栗駒山は、宮城県、秋田県、岩手県の三県にまたがる名山だ。
今もありのままの自然が残る山だが、
一部の斜面には、戦後、建築材にするためのスギが多く植えられた。

木目やフシの美しさも国産スギ材の魅力のひとつ。

県産のスギ材は、柔らかいため、傷もつきやすい。
扱いやすい素材とはいえないが、
それでもスギ材を使った製品づくりにトライするのには、理由がある。
傷つきやすさも、家具の魅力のひとつになるからだ。

「うっかりついた傷ひとつひとつが、その家族の思い出になります。
この傷はお兄ちゃんがつけたんだな、とか、
あのとき倒してつけたんだな、とかね。
傷や汚れに、お客さんの思い出が入り込んでいるんです、
……なんていったら、カッコつけすぎかな」と千葉さん。

この焼印が石巻工房ブランドの証。

県内産のスギの扱いにまだまだ慣れないが、
じっくりつき合っていきたいと石巻工房のスタッフたちは話す。
「これまでも石巻工房は、とにかくやりながら進んできました。
技術や知識が足りなくても、やろうという想いさえあればどうにか進んでいけるんです。
お客さんや地元の方の声を聴きながら、
これからも製品をつくっていけたらいいかなと思いますね」

木の機嫌を伺いながら、木とともにあるための家具をつくる。
石巻工房では、栗駒のスギと歩むための一歩を、そっと踏み出していた。

木のある暮らし 宮城・石巻工房のいいもの

[ 左から ] イクスブックスタンド 価格:6,200円(税別)/ELラック 価格:6,200円(税別)/タウンシェルフ 価格:7,800円(税別)駅や商店街の空き店舗に、市民みんなでシェアできる本を置くために開発。市民が考案したデザインを元に制作した。

information

map

石巻工房

住所:宮城県石巻市渡波字栄田164-3
TEL:0225-25-4839
http://ishinomaki-lab.org/

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