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連載

ニューズドプロジェクト
Part1 : リサイクルではない廃材利用、
“アップサイクル”の考え方とは?

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.029

posted:2013.12.3  from:東京都千代田区  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Miho Noro
野呂美帆

廃材利用はものへの愛情を育む。

廃材を材料にして、新たなプロダクトをつくりだしている
NPO法人ニューズドプロジェクト。
きっかけは、母体の会社である「ケンエレファント」が、
障がい者が働く福祉施設を見学するツアーに参加したことだ。
障がい者の労働環境は、
“5000円で仕入れた材料を、バザーで5000円以下で売る”というような状況で、
1か月の給料が全国平均1万円程度。
その状況に対する疑問からスタートした活動だ。

もともとケンエレファントは、
ペットボトルなどに付いてくるノベルティを製作していた会社。
それらのものづくりのノウハウを生かして、
福祉の現場で廃材を使ったものづくりをしてみようと思い立った。

「廃材は自然と集まってきます」というのは、
ニューズドプロジェクトの青山雄二さん。
現在ではアミタホールディングスという環境コンサル会社と業務提携し、
廃材のデータを共有しているが、
“廃材を使ってほしい”というオファーが結構多いという。

「どの企業も廃材をリサイクルする努力をしています。
リサイクルは粉々にして原料に戻しますが、
もともとの素材が持つ特性が強い廃材もあります。
例えば、堅い木材とか、燃えない布とか。
材料自体に思い入れのある企業からオファーがくることが多いです」

自分たちの情熱がこもった材料だけに、
その特性を生かした活用法を見出したいという思い。
だからオファーがあると、デザイナーなどとともに、現場の見学に行く。
廃材だけを見るのではなく、
生産プロセスや産業構造や業界のスタンスなども勉強するという。

「それを確認しないと、僕たちがどういうものに落とし込んでいくべきか、
最終的なかたちが見えないのです」

例えば、あるテント生地。
東京ドームにも使われている生地で、ガラス繊維に企業秘密の特殊加工を施し、
さらにテフロンコーティングがされている。
発明されて30年。屋外で使用しても100年以上腐食しないという。
東京ドームの屋根が一度も張り替えられていないことからもわかるように、
いまだ現役だ。
そんな生地を使った「Heavy Folder/Heavy File」。
建物を守ってきた、燃えない強い素材。
次は大切な書類を守る役目を与えられた。

デザインユニット「minna」のデザインによる書類フォルダとファイル。耐水性も高い。

例えばある木琴だった木材。当然、堅くていい音がする。
木琴として音を奏でられなくなったので、次はキッチンで音を奏でさせたい。
そしてワインオープナー「Pon」と栓抜き「Pusyu」が誕生した。

キッチンで音を奏でるというナイスアイデア。楽譜のリピート記号が刻印されていて、何度でも使ってしまいそう。デザイナーは馬渕晃。

「After school-hanger」は、学校で座っていたイスの背板を利用したハンガー。
背板だったころから、みんな上着をかけていたことだろう。
その記憶をハンガーとしてつないだ。

MUTEのデザインによるハンガー。背板のRをうまく利用している。

素材が持っている思い、背景にあるストーリー、
それらを次にどう転化していくか。
ニューズドプロジェクトではそれをアップサイクルという言葉に込める。
アップサイクルは、リサイクルとは異なり、
廃材などに付加価値をつけることで一段階上の製品として蘇らせるという概念だ。

「アップサイクルという概念をもっと広めていきたいです。
廃材自体にはもともとの用途があって、そういう形状になっている物語がある。
その見方を変えることであらたなスポットライトを当ててあげたい」

廃材を再利用するという以前に、
いま自分たちが使っているものに対する愛情が大切だという
メッセージにも聞こえる。
付加価値として語れるものをこめるということは、
ものを大切にする気持ちを育む。
この商品はなぜこのようなかたちをしているのか、なぜこの素材なのか、
なぜこんな機能があるのか。
当たり前に使っているものにも、
すべて生まれてきた背景があり、理由があるはず。
またはそのような背景のあるものを選んで使いたい。
もう一度、身の回りのものを見直すきっかけになるだろう。

レザー製品の端材をくりぬき、組み合わせたSAHALA Series。いろいろな質感のレザーがひとつにつながっている。デザイナーはMELON。

廃材の量は圧倒的!

すこし意地悪な質問をしてみた。
たとえ廃材を使っているにしても、
新しいプロダクトを生み出していることに矛盾を感じないのだろうか。

「感じないといえば嘘になります。
企業が完全なリサイクルに成功して、
廃材が出てこなくなるということもあり得ます。そうしたら僕たちは廃業です(笑)。
でもそれはそれとして、現実として圧倒的な廃材があるんです。
それを使わない手はありませんし、
アップサイクルはひとつのアプローチとして有効だと思います」

一般家庭から年間5000万トン、企業からは年間4億トンのゴミが出ているという。
ゴミを減らしたり、ものを無駄にしない社会に向かっている一方で、
圧倒的な量のゴミが目の前に横たわっている。
数字だけで考えたら、まだまだ焼け石に水かもしれない。
しかしアップサイクルという概念が広まり、
個々人がものに対する意識を高めていけば、
もしかしたら将来、ニューズドプロジェクトは必要なくなるかもしれない。
でもそれは彼らにとっても本望だろう。

デニムのサンプル生地を使ったブックカバー、BOOK JACKET。サンプルは同じものがなく1点もので、ARTICLE No.として表現されている。吉冨寛基によるデザイン。

information

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NPO法人 NEWSED PEOJECT

住所:東京都千代田区猿楽町2-1-14 A&Xビル4F
http://newsed.jp/

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