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連載

伊藤園
Part2:茶殻リサイクルシステムで気がついた
日本のものづくりの素晴らしさ。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.008

posted:2013.6.25  from:東京都渋谷区  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

畳と緑茶は日本の心のふるさと。

伊藤園の茶殻リサイクルシステムは多くの製品を生みだしているが、
その第1号商品として世に出たのが「さらり畳」である。
そこで畳問屋である北一商店と実際に制作している森 登志夫畳店を訪れ、
ものづくりの現場で話をきいた。

伊藤園の茶殻リサイクルシステムの開発担当である佐藤崇紀さんは、
幼い頃のよき思い出から、茶殻と畳の組み合わせを思いついた。
「祖母が、茶殻を使って畳を掃除していたことを思いだしたんです。
かたくしぼった茶殻を畳の上に蒔いてほうきで掃くと、ほこりがとれるんですね」
その部屋の清々しい感覚を覚えていた佐藤さんは、
茶殻を畳の芯材(建材ボード)に利用することを思いついた。
その茶配合ボードを畳床とした「さらり畳」を共同開発したのが北一商店だ。

創業大正5年、北一商店の山形鉄志さん。畳の新しいカタチを世の中に仕掛ける。

さらり畳を売り始めた10年ほど前、
すでに畳自体の需要は減少傾向にあった。
かつては畳が古くなると表替え(畳床という芯材はそのまま、
上面の畳面や縁を新しくすること)を行っていたが、
最近では畳の上にじゅうたんやクッションフローリングを敷いてしまうことも多い。
そんな厳しい状況のなかで、
「茶殻入り畳に可能性を感じた」と語る北一商店の山形鉄志社長。
北一商店では、それまでも畳を普及させるべくさまざまな策を講じていたが、
伝統ある畳業界ではなかなか斬新なアイデアは浸透しづらく、
効果はあまりあがらなかった。
しかし茶殻入り畳だと、畳に消臭や抗菌という機能が付くということになり、
その付加価値を知ったエンドユーザーからの評判も上々。自信を深めていった。

茶殻配合の建材ボード。畳の芯材として使われる。

同じにぼしをビンに入れ、片方には建材ボードの切れ端を入れておく。すると5分後には、もうにぼしのにおいが消えている!

現状、畳の芯材は年間600万枚ほどが生産されているが、
そのうち茶殻入りの芯材は10万枚程度。
畳というのは頻繁に購入するものではない。
ただ、環境への意識が年々高まるなかで、
建築業界からの問い合わせも着実に増え、採用される部屋数も増加の傾向にある。
事実、発売当時は数百枚だったというから、販売枚数は順調に伸びているが、
全体の割合としてはまだまだで、さらに普及させ、
茶殻リサイクルにも貢献していきたいという。

畳はあまりに当たり前に身の回りに存在し、しかも歴史あるもの。
それだけにものづくりとしての難しさもある。
「畳の何を残していくのか。
変えてはいけない部分と、変えなくてはならない部分があると思います。
もう和室にこだわった畳だけでは生き残っていけない時代です」と山形社長が言うように、
斬新さだけでは受け入れてもらえないし、古いままでは現代にフィットしない。
お茶入り畳「さらり畳」は日本の住環境をブレイクスルーするだろうか。

ミニ畳は、下駄箱や冷蔵庫など、においが気になるところに置いておくのがオススメ。

「茶殻製品全体を盛り上げていきたい!」

次に訪れた森 登志夫畳店で、
実際に畳を製作している現場を見学させてもらった。
さらり畳の取り扱いが始まった2004年からは、製作販売をさらり畳一本に定め、
いまではさらり畳を全国で一番売っている畳屋さんだ。

森 登志夫さんは、さらり畳のトップセールスマン。

まずは茶配合ボードの建材ボードを芯材として、採寸に合わせてカットする。
畳は1帖単位であるので、基本的なサイズは決まっている。
しかし既製品というわけではなく、
ほとんどが各部屋のサイズに合わせたオーダーメイドで、
ぴったりと敷きつめなければならない。
一分(約3mm)ズレているだけで、隙間があるように感じられてしまうという。
一分の隙もないとはこのこと。

丸みのない、特有のかたちをした刃物は畳用。

機械をつかって縁を真っすぐに縫いつける。縁の模様はたくさん選べる。

そのボードの上に畳表を縫い合わせ、機械を替えて畳縁も縫っていく。
いまでは畳製作もほとんど機械化されているが、一部手作業の部分も残っている。
畳表を切るには、変わったかたちの畳専用刃物もあり、
昔から脈々と受け継がれた道具や技術が宿っていた。

畳づくりの道具たちはよく使い込まれ、よく研がれている。

畳というのは、大きな特徴がある商品ではない。
それだけに「商品に対する気持ちが大切」と言う森さんは、
付加価値のあるさらり畳に思い入れを持ち、大きなやりがいを感じた。
茶殻が持っている効果を個人的にも勉強し、
茶畑まで赴いて現場の話を聞いたり、
伊藤園が新しい茶殻配合製品を売り出すと自ら購入して使ってみる。
また〈畳とお茶と音楽と〉というイベントを何度も開催し、
ビッグバンドでジャズを聴かせながら、さらり畳はもちろん、
それ以外の茶殻配合製品の宣伝も進んで行う情熱家。
「みんなの共作ですから」と、このプロジェクト全体に大きな意義を感じている。

どんどん研いでいくと、すぐに上のように小さくなってしまう。使い込んでいる証だ。

日本のものづくりは、まだまだ錆びない。

伊藤園の佐藤崇紀さんは、
茶殻リサイクルシステムを通して、日本の企業150社以上と関わってきた。
フードマイレージ同様に、
茶殻運送に大きなエネルギーをかけてしまっては意味がないということもあり、
茶殻配合製品のほとんどがメイド・イン・ジャパンだ。
そのなかで日本の企業の素晴らしさを、身を以て感じているという。

「紙をつくるのも、樹脂も、そして畳も。すべて工場の高い技術があり、
その“ものづくり力”を目の当たりにしてきました。
異業種の方々とつき合うことができたからこそ、見えてきたことです。
“日本の中小企業がすごい”なんて話題にもよくなりますが、
その情報以上に、実際はもっと底力があると体感しています。
そして、夢と情熱を持った方が多いと実感しています」

環境への配慮から生まれた茶殻リサイクルシステムが、
日本のものづくり企業の技術力の高さを改めて再認識させてくれた。
その中心に伊藤園のような企業があることで、
ものづくりへの応援にもつながっていくだろう。

畳表を横で縫い付け、だんだんと畳のかたちができあがっていく。

information

伊藤園

http://www.itoen.co.jp/ 

伊藤園 茶殻リサイクルシステム 
http://www.itoen.co.jp/csr/recycle/

information

北一商店

住所:本社 東京都世田谷区北沢2-38-14
http://www.kitaichi.co.jp/

information

森 登志夫畳店

住所:千葉県習志野市秋津4-8-9
http://www.tatami-mori.com/

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