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連載

TARASUKIN BONKERS
Part2:暮らしへのまなざしから生まれる
プロダクト。ふたりの役割の違いが
息吹きを与える。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.004

posted:2013.5.28  from:静岡県南伊豆町  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

自由な感性でつくるからこそ、美しいプロダクトが生まれる。

南伊豆でのシンプルな暮らしから生まれたデザインが人気の
タラスキンボンカース。
実際に、自分たちの暮らしのなかで使っていたものが
商品となっているケースが多い。
みかん網のバッグも、もともとは北田さんが好きでつくっていたもの。
家のなかでいろいろなものを入れて吊るしていた網を、
「手提げにしたらかわいいね」とプロダクトに昇華させた。

左がタラスキンこと近藤拓也さん、右がボンカースこと北田啓之さん。

ふたりは北田さんがアーティスト気質、近藤さんがディレクター気質だ。
近藤さんいわく「北田が面白いものをいくつかつくって、
そのなかから商品になりそうなものをぼくがみつける(笑)」
こんなやりとりが日常的に行われているようだ。
特に北田さんは裁縫や細かな作業が得意。
「ある日、庭にきれいな羽根が落ちていたんです。それを紐でクルクル巻いて、
余っていた革をリング状にしてくっつけてみました。
羽根が飛んでいるようにみえるし、面白いと思った」
浜辺に落ちている陶磁器のかけらや貝殻、
ウニの殻などを拾ってはビンいっぱいに集めて、
それらの自然素材や、漁師や農家が使う道具を見てはワクワクし、
組み合わせてみたくなるという。
そういった自由な感性でつくったものを、
近藤さんが商品として成り立つか見極める。
ふたりの役割はとてもバランスよくできているようだ。

北田さんが庭でみつけてひもで巻いた羽根。

暮らしからのインプットを忘れたくない。

すべて手作業で、ふたりだけで制作しているために、
家の中の作業場にこもって過ごす時間が長くなってくる。
そもそも南伊豆での暮らしから生まれてきたブランドであるのに、
その“暮らし”の部分が失われてしまっては、ブランドの元気がなくなってしまう。

「制作することに一生懸命になりすぎて、
海や山に行く時間がなくなってしまいがちです。
浜辺に行ったり、空を眺めたりするときに、
“こういうものがほしいな”と思い浮かびます」と近藤さんはいい、
「インプットの時間をもうちょっと増やしたい」と北田さんも感じている。
インプットとは、彼らの場合は日常の暮らしのことだ。

つくることに執着してしまうと、
そこに喜びを感じて終わってしまうかもしれない。
それは作家さんや職人さんの発想。
しかし彼らにとっては「思いついたものがかたちになること」が喜びである。
生みだす時間こそが楽しい。

ほうきの製作は近藤さん担当。

彼らのものづくりは、その道を極めてきた職人ではない分、
よい意味で肩の力が抜けている。
「手が込んでいるからいいというわけでもない」と近藤さんは語る。

「伝統的な職人さんがつくった素晴らしいほうきに比べて、
僕たちがつくるのはロープをほつれさせて流木に巻きつけたほうき。
でもそれを選んでくれるひとがいます」

「背景のフィロソフィも気になるけど、結局はその商品が好きかどうか。
自分たちでは当然いいと思っているけど、
それがお店に並んだときに気に入ってもらえるかどうかは
お客さまが決めることです」と北田さんも、押しつけることはしない。

そこで選ばれるということは、
つくり手がいいなと思った気持ちが、商品ににじみ出ているということ。
ものづくりのもっとも原点といえる姿だ。

自然そのままの枝に磁石を仕込んだフック。

実は意外にも、手づくりにこだわりがあるわけではないという。
現在は、ライフスタイルの手の届く範囲でものづくりを進めている。
だから必然的に手づくりということになっているだけ。
手作業がデザイン的に美しい場合ももちろんあるが、
逆を言えば、機械的なもののほうが美しい場合もあるだろう。
あくまでデザインの良さで決めていきたいということだ。
それに、例えばベッドや照明などは、
大きさや素材の問題でつくりたくても商品化できない。
ベッドをつくる広いスペースはないし、
照明のために鉄やガラスを加工する技術は持っていない。

タラスキンボンカースの商品は、手作業のものがほとんどではあるが、
それを前面に押し出したようなデザインではない。
流木やリサイクルとなると、
もっとナチュラルテイストなイメージを持たれるが、
彼らの商品はかなり都会的な感性だ。

「手づくりというと、技巧の押しつけみたいで少し重たい。
あとから“手縫いなんだ”と気がつくくらいでいいと思っています」と
北田さんもあくまで、手段としての手づくりであることを強調する。

職人でなくとも、つくり手としての高い美学を持つ。

南伊豆という環境からのインプットと、
彼らがもともと持っていた都会的な感性が融合して
タラスキンボンカースに結実している。
それ以外に、横やりを入れるものはなく、彼らが暮らしにおいてほしいもの、
いいと思うものを純粋培養してきた。それはこの場所だからできたこと。

「外部のニュースが入らないので余計な情報もないから、
ただ純粋に面白いと思えるものをつくれたのかもしれません。
情報の多い東京に出かけても、“今のはやり”には
なるべく目を向けないようにしているつもりです」と笑う北田さん。
「だから世間とは外れた感じのものづくりができていて、
そこに特別なものを感じてくれているのかもしれませんね」と近藤さんも続く。

職人でも作家でもないけれども、つくり手である以上、美学は重要だ。
「例えば、高価なオーガニック人参というのもあるけれど、
このあたりのお年寄りが小さな畑で丁寧につくっている人参は、
元気で農薬もいらない。そして驚くほど濃い味がする。
価値は値段ではなくて、
美味しいうえに、気持ちが込められているかどうかなのだと思います」

媚びず、押しつけることもしない。
それでもひとを惹きつけるのは、
“つくり手が良いと思っている、その商品を愛している”という気持ちが
込められているから。
もっとも大切で、そして、もっとも忘れがちなことだと思った。

漁師などのロープの結び方を採用した「KNOT BAG」。

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TARASUKIN BONKERS
タラスキンボンカース

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