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TOPIC GREENY岐阜

100%Village
vol.012

posted:2012.8.22   from:岐阜県岐阜市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。

writer's profile

Hidefumi Kurasaka

倉阪秀史

くらさか・ひでふみ●千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。 専門は環境政策論・環境経済論。著書に、『環境を守るほど経済は発展する』(朝日選書)、『エコロジカルな経済学』(ちくま新書)、『環境-持続可能な経済』

市街地民家における再生可能エネルギープロジェクト。

前回は、古民家における再生可能エネルギープロジェクトを紹介しましたが、
今回は、市街地の民家での再生可能エネルギープロジェクトを紹介します。
ともに、岐阜県が、環境省の委託費を得て行っている新エネルギーパークの事例となります。

GREENY岐阜と名付けられた実験施設は、岐阜駅から遠くない市街地の中にあります。
前回紹介した「電池三兄弟」、つまり、太陽電池、燃料電池、蓄電池の3つに加えて、
このサイトでは、小型風力発電を組み合わせていました。
管理を委託されているイビケン株式会社の服部哲幸さんにいろいろと説明いただきました。
まず、太陽電池は、2009年11月のコストで、
kWあたり60万円でSANYO三洋製のパネルを6.3kW購入したということです。
GREENY岐阜では、午後に電柱が常に太陽光パネルにかかっていて、
期待値の8割しか発電量が得られていないということです。
モジュールが直列になっているため、
一部に影がかかる場合でも全体の発電量が減少するということでした。
これから太陽光を設置する場合には、十分注意しなければならない点だと思います。
なお、最近は、モジュールを並列に組んでいる太陽光パネルも市場に出ているようです。
燃料電池のエネファームは、年間2000kWhで、
補助金85万円分を除いて100万円で購入ということでした。
ただ、燃料電池は蓄電池には直接つないでいません。
蓄電池は、太陽光パネルと小型風車の電力のみということになります。
太陽光パネルを付けている家庭では、燃料電池の使用によって電気代が減った分、
電力会社に売電できるので、
結果的に、間接的なインセンティブを与えることができるということになります。
リチウム蓄電池はSANYO製で、9.7kWh、500万円ということでした。
現在の価格水準は、4.15kWhで120万円くらいということです。
最大出力まで溜めて、使い切るという使用法だと耐用年数が短くなるため、
7割充電して止めて、使うという方法なら10年以上は持つようです。
つまり、耐用年数を考えると、7割までしか使えないということです。
この容量で、この建物で生活するためにぎりぎりのところということでした。
GREENY岐阜では、体験宿泊を受け入れているのですが、
最初の客に電力を使い切る可能性があることを伝えなかったところ、
蓄電池容量をすべて使ってしまったので、
その後のお客さんにはその可能性を伝えています。
そうすると、蓄電池容量を使い切るお客さんはいなくなったということです。
つまり、意識すればこの容量で生活できるということです。
ちなみに、照明はすべてLED照明で約3kWh。その他、テレビ、冷蔵庫、
パソコン、ゴパン(お米からパンをつくる装置)などが置かれています。
小型風力は、ゼファーのエアドルフィン4kWで160万円です。
しかし、年間27kWhしか発電していません。
年間500kWhくらい発電してくれると期待していたが、
屋根からの突き出し方が足りなかったということです。
また、小型風力を建物本体に付けてしまったので、
建物と共鳴して騒音が発生してしまったということです。
わたしが訪問したときも、
ほとんど発電していなかったのにもかかわらず、うるさく感じました。
太陽熱給湯器は置かれていませんでしたが、
太陽光パネルにたまった熱をファンで室内に持ってくる設備を設けています。
これは日中だけ使えることになりますが、
ファンで使う電力の10倍分くらい熱エネルギーが回収できるということでした。
全体をコントロールするHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)は、約500万円です。
服部さんは、直流のままバッテリーから家電に流すことができれば、
もっと効率が良くなり、LEDも直流で点くため
DC家電(直流で動く家電)の整備が必要と指摘しています。
GREENY岐阜によって、約10kWhの容量の蓄電池があれば、
太陽光による昼間の充電で、一家族が一晩暮らすことができるということがわかりました。
蓄電池は高価ですが、現在、販売されているプラグインハイブリッド車に積まれた蓄電池は
かなり大きな容量が大きく、三菱アイミーブで16kWh、日産リーフで24kWhとなっています。
すでに車から家庭へ電力を供給するプラグも販売されています。
太陽電池とプラグインハイブリッド車の組み合わせで、
家庭のエネルギー自給を図ることが現実的になってきています。
岐阜県の事例では、太陽電池、燃料電池、蓄電池の「電池三兄弟」に注目した取り組みでしたが、
太陽熱給湯器、地中熱ヒートポンプ、薪・チップ・ペレットによる熱供給など、
熱にも注目して、建物単位・コミュニティ単位のエネルギー自給を進めていくことが
重要だと思います。

GREENY岐阜全景(左の電柱のおかげで太陽光発電量が2割減となっている)

GREENY岐阜の内部(窓際におかれている黒い装置が蓄電池)

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