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STUDY 太陽熱

100%Village
vol.006

posted:2012.4.18   from:全国  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。

writer's profile

Hironao Matsubara

松原弘直

まつばら・ひろなお●特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所 理事、主席研究員。工学博士。エナジーグリーン(株)、おひさま進歩エネルギー(株)技術アドバイザー。桜美林大学非常勤講師。環境プランナーER。東京工業大学においてエネルギー変換工学を研究、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取組む研究者として現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や長期シナリオ(2050年自然エネルギービジョン)の研究などに取り組みながら、日本初の自然エネルギー白書の編纂をおこなう。自然エネルギー普及のため、グリーン電力証書の普及やグリーン熱証書の事業化、市民出資による地域エネルギー事業の支援などに取り組む。

環境エネルギー政策研究所
自然エネルギー政策ポータルサイト
永続地帯ポータルサイト
自治体グリーン政策の窓
個人ブログ「サステイナブルなもの」
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注目は高まりつつも、導入量は1980年代の20分の1まで下落。

太陽熱の利用は人類の自然エネルギー利用形態として
もっとも古くから行われてきました。
特に近代的な太陽熱利用機器の普及が進んだのは1970年代のオイルショックの後ですが、
それまでの化石燃料からの代替エネルギーとして世界中で導入が進んでいます。
その結果、現在でも、世界で利用されている自然エネルギーのうち水力発電、
風力発電の次にエネルギー生産量が大きいと言われています。
世界の太陽熱利用機器の設備容量は順調に増加しており、
2010年には前年比で16%増加して、
累計で185GWthに達しています(『自然エネルギー白書2011』による)。
2010年に導入された設備容量のうち80%以上のシェアを中国が占めており、
欧州の各国やトルコ、インド、オーストラリアなどがそれに続きます。
中国では経済発展による生活レベルの向上に伴うエネルギー需要の増加や、
エネルギー供給の不安定さを補うために、太陽熱の利用が急速に増加しており、
最近では都市から農村部に普及を進める政策なども取られています。
一方、欧州では2020年までにエネルギー供給量の
20%を自然エネルギーとする目標を定めており、
自然エネルギーによる熱利用の普及にも力を入れています。
自治体あるいは国単位での利用機器の設置義務や投資支援、
税制優遇など複数の政策を組み合わせて市場を拡大している国も多く、
ドイツでは機器の認証制度を整備することにより、
製品の信頼性を確保すると共に、2009年から自然エネルギー熱法を施行し、
設置義務なども始まっています。
日本国内においては、1970年代のオイルショック以降、
太陽熱利用機器は一時的に大きな市場となり、
1980年に導入のピークがありましたが、
その当時は太陽熱温水器が年間80万台以上、
ソーラーシステムが2.6万台ほど導入されていました。
その後、石油の価格が低下すると共に太陽熱利用機器の市場は縮小し、
2009年の導入量は太陽熱温水器4万台、
ソーラーシステムが3200台とピーク時の20分の1以下となっています。
その結果、これまでの導入量から機器の寿命を加味して差し引いた累積の導入量については
1994年ごろから減少を続けています。
そのため、多くの自治体において太陽熱利用機器に対する補助制度を実施していますが、
その中でも2008年度から補助制度をスタートした東京都では、
グリーン熱証書制度と組み合わせたユニークな試みとして注目されました。
また、東京ガスなどの都市ガス供給会社と
LPガス業界で構成する日本ガス体エネルギー普及促進協議会が中心となり、
ソーラーエネルギー利用推進フォーラムが2009年に設立され、
太陽熱利用機器とガス利用機器を組み合わせて利用する技術の調査や
普及の検討を行っています。
同じ時期に、太陽熱を対象としたグリーン熱の認証基準が整備され、
設備の認定が開始されました。
2010年7月にはマンションに設置された
セントラル方式の太陽熱利用システムの設備認定に引き続き、
10月には太陽熱による日本初のグリーン熱証書が発行されました。

太陽熱温水器・ソーラーシステム単年度導入量およびストック量(出典:『自然エネルギー白書2011』)

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