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連載

未来を創るニッポンの現場
「高知 梼原・土佐山」編 Part2
梼原町地区新エネルギービジョン。

KAI presents EARTH RADIO
vol.034 StoryI-02

posted:2013.1.18  from:高知県高岡郡梼原町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影(メイン・本文内・プロフィール):Suzu(fresco)

自然発、住民経由、自然行き。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」は「高知 梼原・土佐山」編の第2回。

高知の山の中で、先進的な取り組みをしている梼原(ゆすはら)町。
このまちにある大きなふたつの風車は、見た目のインパクトだけでなく、
まちのありかたを象徴するモニュメントでもある。

前町長の時代に、「これから梼原町をどうしていくのがよいか、
客観的な目で見てもらいたい」と、町内公募で15人を集めた。
高校生や主婦から、リタイアしたひとまで。
町長らとまちを回り、何がまちに求められているか、
住民目線で把握する活動を行った。
当時、風車の建設計画が決まっていたということもあってか、
この活動はやがて、再生エネルギーをテーマとするようになり、
先進地であったドイツやスイスへの研修にまで及んだ。
そして、現地で視察した再生可能エネルギーへの取り組みをヒントに、
風力発電など、「梼原町地区新エネルギービジョン」が策定された。
なんともやわらかアタマかつ、住民一体の成り立ち。

梼原町は、年間平均7.2mの風が吹き、全国で2番目に風況がいい。
大陸から偏西風が関門海峡を通り、松山から四国山脈に吹き上がる。
その頂上が梼原町の四国カルスト。
風力発電は、風が強ければいいというわけでもなく、
ずっと吹き続けていないと採算がとれないが、その条件も満たしていた。
山の上に建つ2基の風車を取材しに行く予定だったが、
風速17mの風が吹いており(ちょっとした台風並)、
安全上の理由から見学はかなわなかったが、
それだけよい風が吹くという証明でもあった。

雲の上のホテル別館は、わらぶきを利用した壁面。1階はまちの特産物を販売するマルシェ・ユスハラになっている。

風力発電で生まれた電力は、四国電力に売電している。
これまでは年間平均3500万円の売電額であったが、
2012年11月から固定価格買取制度が見直された結果、
約6000万円まで値上がったという。
それだけでなく、こうして自然から生まれた売電収入を、
住民を経由して、自然に返すという方針を持つのも梼原の特長だ。
「“使えるものは使ってあとは知らない”という文明の理屈は、
梼原町では通用しません。
売電収入は、間伐費用やペレットの費用、
さらには住民が購入するさまざまな再生可能エネルギー施設の助成に使われます」
と梼原町環境整備課主事の那須俊男さん。
太陽光パネルには、上限4kWで80万円まで助成している。
そのうえに国からの助成金が14万円あるので、
梼原町民はトータルで94万円の助成金が受けられる。
これは日本一の補助率を誇る。

昭和23年に建てられた芝居小屋「ゆすはら座」。娯楽の少なかった時代に農村歌舞伎などが演じられていた。

四万十川支流の豊かな水を活かしたくらし。

もうひとつ、まさにまちをかたちづくるという意味では、
小水力発電の力が大きい。
梼原町は四万十川の源流域であり、梼原川という豊かな水源がある。
ここで発電された電力は、梼原学園中学校棟の電力の90%をまかない、
夜間は82基の街路灯を灯している。
まちの風景を和ませている木目の街路灯は、
その電力も自然エネルギーによって生み出されていた。
収益性は高くないが、こちらも固定価格買取制度の見直しにより黒字になるし、
何よりもまちで使われている公共の電気が
目の前の梼原川から生まれているという事実や、
特に中学生に対しては、自分たちが使っている電気の源を知るという意味で
「教育上の効果も大きい」という。
こうした住民への見える化は、
自分がまちの大きなエネルギー循環の一部として関わっているという
意識を醸成している。

街路灯やちょっとした手すりなどにも、梼原町産材が使われている。木材の地産地消であり、まちの景観も守る。

風力発電や小水力発電、その他、多くの施策のおかげで、
CO2を「吸収」する森が潤い、住民はCO2を「排出」しない
自然エネルギーを積極的に使うことになる。
この結果、427トンのCO2を削減した(平成23年分)。
こうして梼原町が目指すのは山村型低炭素社会。
温室効果ガスの排出量を2030年に50%削減、2050年に70%削減。
そして吸収量を2030年に3.5倍、
2050年に4.3倍を目指している(すべて1990年比)。
さらに2050年には、電力自給100%を目指している。
現在、2メガワットの風車を6基建設予定なので、実現の可能性は高いだろう。

自然から与えられたものは、自分たちが独占するのではなくて、
ちょっと借りて、自然に返す。
それには、まちとして得たお金を何に使っているかあいまいにするのではなく、
きっちりとわかりやすく示すことが大切なのだ。
だから町民も、使う目的や意義がはっきりしてくる。
梼原町の好循環のくらしは、こうして生まれている。

マルシェ・ユスハラは、天井が高く、柱は木の形をイメージしている。

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TOSHIO NASU
那須俊男

1965年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部卒業後、東京の大手電機メーカー人材開発部にて社員教育を主に従事。その後、実家のある関西に戻り、大手建設機械メーカーなどを経て、父の看病のため、高知県梼原町に移住。現在は、高知県梼原町役場にて全国13市町村しか選定されていない「環境モデル都市」の様々な業務を担当。町内の再生エネルギー全般のさらなる取組みを推進して、全国の自治体に小さなまちでも再生可能エネルギーの取組みは実践出来ると、ささやかながら活動を続けている。
雲の上のまち ゆすはら http://www.town.yusuhara.kochi.jp/
内閣官房 環境モデル都市構想 http://ecomodelproject.go.jp/ecomodel/E12

KAI presents EARTH RADIO :  第9回 未来を創るニッポンの現場「高知 梼原・土佐山」編