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連載

未来を創るニッポンの現場
「高知 梼原・土佐山」編 Part1
森林との共生と循環のまちで、
いま起きていること。

KAI presents EARTH RADIO
vol.033 StoryI-01

posted:2013.1.11  from:高知県高岡郡梼原町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影(メイン・本文内・プロフィール):Suzu(fresco)

森との共生がまちの人々に息づく、森林文化社会。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
今月は、「高知 梼原・土佐山」編をお届けする。
高知県高岡郡梼原(ゆすはら)町は、坂本龍馬脱藩の地。
この地から龍馬は伊予へと脱藩した。龍馬にならうわけでもないが、
梼原町は、既存のまちのありかたから“脱藩”しているまちといえる。

高知市内から車で約100分、人口は4000人弱、高齢化率は41%。
スペックだけ並べてみると限界集落のように思えるが、
昨年はこのまちに全国から1200団体が視察に訪れた。

梼原町は、明治時代から、税金のないまちを目指し、
林業で得た収入を充てて、税金をタダにしようと取り組んでいた。
また同様に電気代のかからないまちも目指し、
町内に水力発電所を3か所設置した。明治から昭和にわたって、
すでにこのような取り組みが行われる先進的な共同性があったのだ。

住民が自主的にまちづくりに参加する風土は、茶堂という文化にも残っている。
高知県でも西南地方にしかない建物・文化である。
「四国には八十八箇所を巡るお遍路があるので、深いおもてなしの文化がありますが、
特に梼原では客人(まろうど)信仰というものが存在します。
旅の客人は福をもたらしてくれるものだから、
この茶堂で丁重にもてなしていたのです」と教えてくれたのは、
梼原町環境整備課主事の那須俊男さん。
まちから誰が出て行った、まちに知らないひとが入ってきた、
というようなチェック機能も果たしていたようだ。
いまでも町内に13か所の茶堂が残り、交流の場となっている。

梼原町にある「雲の上のギャラリー」と「雲の上の温泉」をつなぐ廊下。こちらは隈研吾デザイン。

モダンなデザインと、木の質感が融合したまち。

これだけ山と森に囲まれたまちは、森林文化社会を目指している。
森林文化社会とは、森林をベースとした地域資源を有効に連携させた地域社会のこと。
その成果として、平成21年には環境モデル都市として認定された。
共生と循環の思想を大切にして、サステナブルなまちづくりを進めてきたからだ。

まちなかを歩いてみると、木がふんだんに使われていることがわかる。
梼原町総合庁舎、雲の上のホテルなどの施設をはじめ、
梼原橋、神幸橋、さらにはちょっとした手すりや街灯にいたるまで
美しい木目の木材がたくさん使われている。
これらがまちの景観を保つのにも一役買っていることは間違いない。
もちろんすべて地元の木材だ。

木材の地産地消はもちろん、
「ただ切って売るだけではなく、森の多様な側面に注目すると、
可能性がたくさんあることに気がつきました。
それが森林文化社会の本質です」というように、
間伐助成、木質バイオマス(ペレット)、森林セラピーなど豊かな森を活かし、
循環型の仕組みを推進。
これにより、日本で初めて、団体としてFSC(森林の環境保全に配慮し、
地域で経済的にも継続可能なかたちで生産された木材に認証を与える国際的な機関)
の森林認証を受けた。

梼原町総合庁舎の天井を見上げると、木材で組まれた枠組みがわかる。

木でつくられたモダンな建築で町のランドマークとなっているのが、
梼原町総合庁舎と雲の上のギャラリー。ともに隈研吾の建築デザインである。
見た目の良さだけでなく、環境にも配慮した設計になっている。
例えば、総合庁舎には驚くことに、エアコンがない。
「基本的には外気を取り込んで、温めたり冷やしたりしています。
冬は、屋根と天井の間に空間があり、太陽熱を利用して外気を温めます。
夏場は深夜電力で氷をつくり、地下の空洞で冷やします。
これらを各部屋に送っています」
各部屋の床にある丸いダクトからは、あたたかい空気が送られてきていた。
だから足もとからじんわりあたたかい。
正面の扉はじゃばらにオープンする。飛行機の格納庫のようだ。
陽気のいい日には開け放たれることもあるという。
庁舎としてはあまり見られない光景だろう。

梼原町総合庁舎の1階部分は、太陽光がさんさんと降り注ぐ。

再生可能エネルギーの活用を中心に、さまざまな取り組みをしている梼原町は、
前述したように全国から注目されるまちとなっている。
しかし「再生可能エネルギー都市の先陣を切るつもりはありません」と
那須さんはいう。
「あくまで身の丈にあった取り組み。
10年以上、地道に取り組んできた成果です。
3.11がなかったら注目されなかったかもしれませんし、
これからも粛々と取り組んでいくだけです」という
流行でやっているのではないく、骨太な取り組みであるという姿勢は頼もしい。
最後に那須さんはこうしめた。
「日本という国の行く末に対する不安から、みんな新しいカタチを求めているんだと思います。
梼原町はコンパクトシティだけど、
国がまだ示せていない確固たる取り組みを見せているんだと思います」

三嶋神社へと川をわたるための神幸橋も木造。

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TOSHIO NASU
那須俊男

1965年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部卒業後、東京の大手電機メーカー人材開発部にて社員教育を主に従事。その後、実家のある関西に戻り、大手建設機械メーカーなどを経て、父の看病のため、高知県梼原町に移住。現在は、高知県梼原町役場にて全国13市町村しか選定されていない「環境モデル都市」の様々な業務を担当。町内の再生エネルギー全般のさらなる取組みを推進して、全国の自治体に小さなまちでも再生可能エネルギーの取組みは実践出来ると、ささやかながら活動を続けている。
雲の上のまち ゆすはら http://www.town.yusuhara.kochi.jp/
内閣官房 環境モデル都市構想 http://ecomodelproject.go.jp/ecomodel/E12

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