colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧

連載

未来を創るニッポンの現場
「岐阜 明宝・飛騨高山」編 Part4
国産間伐材のわりばしが日本の森を救う。

KAI presents EARTH RADIO
vol.028 StoryG-04

posted:2012.11.30  from:岐阜県郡上市・高山市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影(メイン・プロフィール):
Suzu(fresco)

もっとも身近な木工製品=わりばしから考える森の未来。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
岐阜編の4回目は、3回目に引き続き、
「トビムシ」による飛騨高山での取り組みについて。

われわれ日本人は、一番多い時期で年間250億膳のわりばしを使っていたといわれている。
驚くべき数字だ。しかしもっと驚かされるのが、
普段使っているわりばしの約98%は輸入物、特に中国産で、
しかも不法伐採の木によるわりばしが含まれている可能性もある。
由来がわからない、環境にも良くない、生産における就労環境も良くない。
そういう意味でマイ箸運動や、
飲食店のわりばしを減らそうという意識は支持したい。
しかしわりばしなのに、そんなに簡単に割り切れない話が、
日本のわりばし業界には横たわっている。

もともと、わりばしが使われ始めたのは、戦後の1950年代頃から。
当時、国内生産の自給率はほぼ100%だった。
「しかし今では国内のわりばし製造会社は壊滅状態で、
数えるほどしか残っていません」とトビムシの竹本吉輝さんは嘆く。
わりばしは、丸太の中央を柱材用として切り抜いたあと、
周囲に残った「背板」が使われていた。
しかし柱材の需要が減っていくなかで、
背板も出てこないという状況になってしまった。
それなら間伐材で、と思うが、曲がったり、節があったりする間伐材で
わりばしをつくる技術は国内にはほとんどなかったのだ。

「飛騨杉間伐材割箸」は木目が美しく、まさに木工品のよう。

そこで竹本さんは、全国の製箸会社を回り始める。
「間伐材でわりばしをつくってもらえませんか? とお願いに行っても、
ほとんど門前払い。安定的に生産しつつ、コストも合わせるなんて、
業界としてはまったく無理な話なんです」
それなら自分たちでつくるのが早い。
そうしてまずは岡山県の西粟倉村に製箸工場を建てた。
自分で動きだすと、周りも動き出すもの。
この取り組みに共感してくれた「飛騨製箸」が手を上げ、
飛騨でのわりばしを中心とした間伐材の循環が始まる。

本当に「はじめまして」のひとも多いことだろう。わりばしも意識的に選ぶ時代へ。

国産間伐材ならば、まだまだわりばしを使うべき。

こうして間伐材のみでつくられるトビムシのわりばしが生まれた。
袋を開けてみると杉の香り。
わりばしから木の香りがしてくるなんて、初めての体験だ。
色にばらつきがあるが、
そもそも自然のものである木がすべてまったく同じ色のわけもない。
当たり前のことなのに、気にしたこともなかった。
「このわりばしに使われなければ、間伐されなかったであろう木、
もしくは森から下ろされなかったであろう木からできています。
そういう意味で、国産間伐材のわりばしが使われていけば、
手入れがされていない森が間伐される可能性が高くなります。
捨てられていた木が救われるんです」
国産の間伐材由来のわりばしならば、
積極的に森づくりや地域づくりに貢献できるのだ。
それでも木を切らないほうがいいのでは? という話も聞こえてくるが、
実はそうでもない。
「仮に、250億膳すべてのわりばしを国内の間伐材でつくったとしても、
森のなかに切り捨てられている間伐材の
4分の1を使うことにしかならないのです。
500億膳くらい使っても、森に手入れがされ、雇用すら生まれるけど、
森が痛むことはまったくありません」と言葉を強める。
使えば使うほど、森が育つ。わりばしは消費財だから、日々使われる。
ということは、日々、森の手入れができるということだ。
もちろん“国産間伐材”でつくられたわりばしに限定したお話。

ちなみに、輸入わりばしには漂白剤や防腐剤などが使われているものも多い。
箸は口に入れるものだ。そんなわりばしで、無農薬野菜などを食べても、
ブラックユーモアみたいなものかもしれない。

間伐された森。光が届くようになり、未来の森へとつながる。

世界を見渡せば、植林が必要な地域はたくさんあるが、
現在の日本では木を使っていくことのほうがはるかに重要。
日本は現在、最大級の森林規模を誇っている。
これは先進国ではあり得ない状況だという。
「だからこの木をしっかりと使っていけば、小資源国ではなく、
資源を有効活用できる国になれるはずです」

東南アジアには植林が必要で、それは日本人が木を切ってきたからだ。
その反省を生かすためにも、もっとも身近な木工製品=わりばしが、
環境や社会を考えていくきっかけになる。
今まで、自分たちで積極的にわりばしを選ぶという
意識ではなかったかもしれないが、
これからはその向こうに見える森を意識して、選んでいきたい。

検品ではじかれてしまったNGわりばし。品質テストも怠りません。

profile

map

YOSHITERU TAKEMOTO
竹本吉輝

株式会社トビムシ 代表取締役社長。ワリバシカンパニー株式会社 代表取締役社長。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。アーサーアンダーセン、ERM日本を経て、環境コンサルティング会社を設立、経営。その後、アミタ株式会社へ合流、同社経営戦略本部戦略統括を経て現職。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(規制)と起業(市場)で双方の現場を知る。2009年、株式会社トビムシを設立。同社代表取締役。10年にワリバシカンパニー株式会社設立、代表取締役就任。
株式会社トビムシ http://www.tobimushi.co.jp/
ワリバシカンパニー http://warebashi.com/

KAI presents EARTH RADIO :  第7回 未来を創るニッポンの現場「岐阜 明宝・飛騨高山」編