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連載

未来を創るニッポンの現場
「岐阜 明宝・飛騨高山」編 Part3
林業を通して持続可能な地域の実現を目指す。

KAI presents EARTH RADIO
vol.027 StoryG-03

posted:2012.11.22  from:岐阜県郡上市・高山市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影(メイン・プロフィール):
Suzu(fresco)

わりばしが日本の森を救う!

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。岐阜編の3回目は、飛騨高山。
林業を通して持続可能な地域の実現を目指す
「トビムシ」の竹本吉輝さんに話をきいた。

「グローバリゼーションからの脱却を目指す」という目標を掲げる竹本さん。
そのために地域やコミュニティが持たなければならないものは、
物質、食糧、エネルギーであり、結局、それは森につながる。
だから林業の再生は急務といえる。
日本は、戦後、拡大造林として木を育ててきた。
しかし建築材としての木材、特に柱材の需要が激減し、
売り先がなく価格は下がる一方。間伐もされなくなってしまった。
仮に間伐したとしても、山から下ろしてくるコストが高いので、
山のなかに切りっぱなしで放置する「切り捨て間伐」など、
多くの問題点を抱えている。
森や木を守るための間伐であったはずなのに、これではむしろ環境破壊。

「林業が難しいとされているのは実は日本だけで、
他の国は安定成長産業なんですよ」と世界の状況を教えてくれた。
「北欧では、紙にしたり、建築にしたり、
ペレットのようなエネルギーにしたり、体系化できています。
マーケットにむかって、全体的にコントロールされているんです。
日本は建築資材を中心にした森づくりをやってきました。
しかし柱材の需要が減ってきた今になっても、代案がないんです」という状況。
森林大国・日本としては、あまりにもアイデアに乏しい。

さらには、本来はもう少し育てるべきだけど、
早めに切ってしまう現状もあるという。
「弱い木は安いので手を出さず、いい木をちょっと早いけど青田買い。
すると弱い木ばかりが残り、10年後には生産性のない森になってしまいます。
だから、弱い木にバリューをつけて、お金にしていかなくてはなりません」
と始めたのがわりばしだ。
間伐で出てくる木は、通常、細かったり、曲がっていたり、
節が多かったりする。それらは建築などの木材としては適しておらず、
わりばしが有効な使い方なのだ。
「わりばしをつくろうとすると、大量のおがこ(おがくず)が出ます。
正直、おがこ製造機みたいなものです。
しかし逆に考えれば、良質で乾燥済みのおがこが、
同時に大量に生まれるわけです」という竹本さんは、
それをエネルギーとして利用できないかという発想を持っていた。
そんなとき、飛騨で木質ペレットをつくっている
「木質燃料株式会社」という会社と出合った。
飛騨は300万観光都市であり、そのうちいくつかの大規模な宿泊施設で、
木質ボイラーを導入している。
ペレットストーブなどの暖房機器は冬しか使用しないが、
ボイラーであれば給湯などで1年中使用する。
木質燃料株式会社では、ペレットをつくるのに大量の化石燃料で生木を乾燥させていたため、
コストがかかっていたが、
おがこを圧縮してペレットにすることで、大規模な宿泊施設にも提供することが可能となった。
まさに、おがこはウエルカムだったのだ。

木の種類によって微妙に異なるペレットが生まれる。

わりばしという小さな木工品が、つながりを生み出す。

そもそも飛騨高山は木工のまち。
木工の世界で飛騨を知らないひとはいないし、むしろ憧れられる土地のはず。
メーカーもあり、木工技術も優れていて、職人もいて、製材所もある。
「飛騨の製品や建築でも、実は飛騨の木材を使っている割合は
1割にも満たないと思います。これは飛騨に限らず、日本全国の現状です」
日本は国土の7割が森なのに、不思議な話。
「すべてが揃っていても、それぞれが独立して存在しているから、
森とのつながりが希薄になってしまったんですね。
地域でつらなっていないとやっていけなかったことが、
近代化のなかでスピード、質、量、すべて効率性が重視されて
つながりが絶たれてしまった。
森を起点にして、それらをもう一度つなげていきたいんです」と、
まさにわりばし事業を中心にして、
もともと飛騨に点としてあった産業を線で結んでいく。

間伐材のみでわりばしをつくっているのは、岡山県「西粟倉・森の学校」と、ここ飛騨製箸のみ。

トビムシは、岡山県西粟倉村での林業への取り組みも知られている。
しかし、西粟倉と飛騨では、まったくモデルが違う。
西粟倉には木材の出口がなかったが、飛騨にはあった。
木質ボイラーを使おうという社会システムがあるからペレットが作られていて、
そこにわりばしがピースとしてピタッとはまった。
既存のものを変えるのではなく、うまく結び直す必要がある。
それぞれの分野で特長的なことをしても、
循環して特性を生かせないと意味がない。
竹本さんは林業から、エネルギー、地域、雇用など
広く結ぶ方法を日々考えている。

「しっかり地元の木を使うことで、
飛騨に木があるというストーリーを再認識してもらいたいです。
家具や木工、古民家再生など、地元の木材を使っていくことが大事。
ただし、価値としてお金がつくと認識されないと、どうしてもむずかしいんです。
飛騨のわりばしが、飛騨の木質ペレットが、飛騨の家具が社会に評価されれば、
ゆっくりだけど、力強い運動にはなっていくと思っています」

板をどんどん裁断し、小さくしていく。わりばし、おがこ、ペレット。木のすべてを使い尽くす。

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YOSHITERU TAKEMOTO
竹本吉輝

株式会社トビムシ 代表取締役社長。ワリバシカンパニー株式会社 代表取締役社長。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。アーサーアンダーセン、ERM日本を経て、環境コンサルティング会社を設立、経営。その後、アミタ株式会社へ合流、同社経営戦略本部戦略統括を経て現職。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(規制)と起業(市場)で双方の現場を知る。2009年、株式会社トビムシを設立。同社代表取締役。10年にワリバシカンパニー株式会社設立、代表取締役就任。
株式会社トビムシ http://www.tobimushi.co.jp/
ワリバシカンパニー http://warebashi.com/

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