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連載

未来を創るニッポンの現場
「岡山 美作」編 Part3
棚田の再生に取り組む仲間たち。

KAI presents EARTH RADIO
vol.011 StoryC-03

posted:2012.7.20  from:岡山県美作市上山地区  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力

credit

撮影(メイン・プロフィール):
Suzu(fresco)

みんなで集まって楽しく、「上山集楽」というつながり。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
岡山県美作市上山地区の棚田再生プロジェクトを伝える第3回。
棚田再生を目指して活動している東大史さんは、
もちろん1人で活動しているわけではない。
仲間がいて、現地でコミュニティを形成している。

まず2007年から大阪を中心に活動しているNPO法人「英田上山棚田団」が
棚田の再生に取り組みはじめた。そのメンバーの数人が2010年に、
総務省の「地域おこし協力隊」という制度によって
上山に移住してくることになる。東さんもこの制度を利用して上山に移住。
メンバーは現在では8名になり、あらたに農業生産法人
「MLAT(美作ローカルアクティベーションチーム)LLC」を立ち上げるなど、
仲間たちとともに、棚田再生に取り組んでいる。
こうした多様なメンバーのさまざまな動きを
「上山集楽」(“落”ではなく“楽”しいという漢字を使用)という集合体として、
有機的に結びつけて活動しているのが特徴だ。
彼らは、同じ目的のもと集まったとはいえ、
それぞれが個人の意志で全国各地から集まってきたメンバー。
ひとつのNPOとして地域おこしに関わるとか、
企業が参入しているわけではなく、もともとまったくの他人。
なんとなく自分の役割やポジションを見つけながら、運営を行なっている。

「もともと知りあいではないので、それぞれにやりたいことがあり、
ここでそれを実現しようと活動しています。
だからある意味、ひとクセあるひとたちばかり。
ときには熱い議論になることもありますよ」(東さん)

最年少の水柿大地さんは、なんと現役の大学生。
上山に住みながら、東京の大学に、週二日“通学”している。
「もともと大学で地域おこしを勉強していたんですが、
現場感覚を養いたいと思って、実際に上山に住むことにしました。
僕は一番若手ということもあり、地域に入って行きやすいので、
積極的に関わりを持つようにしています。
月1回、地元のひととコミュニケーションをとる場として
サロンを開催しています。
そこでは盆踊りを復活させようという話もでたりして、
おもしろいアイデアが生まれていますよ」(水柿さん)

井筒耕平さんは、もともと自然エネルギーを専門としていて、
上山地区にも組み込むべく奮闘している。
「棚田再生、林業など現場作業をしながら、自然エネルギー事業をしています。
仕事をつくって、地域が自立できるようにしたい。
地元の“おっちゃん”たちがやる気になれることを見いださないと。
だから真面目で正論の地域おこしだけではなく、
セグウェイなど斬新なことにもチャレンジしています」(井筒さん)

このように、それぞれが自分のやりたい目的を持ってこの上山にやってきて、
仲間たちと共闘している。そんな彼らの憩いの場が、
古民家をリノベーションしてカフェ&バーにした「いちょう庵」だ。
農具が置いてあったり、みんなのベースキャンプとなっていて、
夕方、作業を終えたころに、自然とみんなが集まってくる。
なかに入るといきなりビリヤード台。外の牧歌的な風景とのギャップに驚く。

「ここでいろりを囲んでへべれけになったり、
これからの上山や地域について議論をしたりすることもあります」(東さん)
という活発な場でありながら、
「最近テレビが導入されて、サッカー観戦に集まるようになりましたね。
みんな家にテレビがないので」(山下勉さん)と、
たまり場的な役割も果たしている。

右から西口和雄さん、井筒耕平さん、東大史さん、水柿大地さん、梅谷真慈さん、清田豊さん、能登大次さん、藤井裕也さんの8人が2012年のMLATメンバー。(写真提供:上山集楽)

いろりを囲んで、酒を飲みつつ膝をつきあわせれば、壮大な夢でも語りたくなるもの。

ゆるい連帯感でつながる、新しい仕事のかたち。

現在のMLATの隊長は水柿さん、前隊長は井筒さん。
しかしリーダーシップを発揮するわけではない。

「田んぼの状況に合わせてみんなが動いているので、担当制ではないですね。
マネージメントしない、不思議な感じ。
でも、マネージメントをしたらこの組織の良さが失われる気がするんです。
そんなことを気にせずにやるべきことに突っ込んでいく。
若いメンバーが多いこともあって、それでこそMLATの
爆発的な活動が生まれているんじゃないかなと思います」(山下勉さん)

山下さんは自分たちを“自立した個の群れ”と表現する。
ひとつの完成された組織が地域おこし全体を手がけるのもいいけど、
「実際に動いている個々が集まって、
後から必要に応じてNPOやLLPをつくっていけばいい」と山下さんもいう。
棚田再生というひとつのシンボルさえあれば、きっと問題ない。

しかし、彼らだけの活動に終わらせず、
中山間地域、耕作放棄地にひとが集まり、注目されるということが重要。
「人手のかかるような昔の作業を、あえてもう一度やっているんです。
これはひとの流れをつくり、ひとを呼びます。そういった仕掛けも大切です」
と、水柿さんもひとの集まりから生まれるさらなるチカラに期待する。

個々人でありながら、同じ目的のもとゆるやかなネットワークを形成し、
活動をともにする。
これからの時代の働き方の見本が、「上山集楽」ですでに始まっている。

いちょう庵のなかは、ひょうたんランプがたくさんぶら下がっていて、あたたかみのある雰囲気。

profile

TAISHI AZUMA
東 大史

「日本を環境立国として、世界のお手本にする」ことを目標として、日本のローカルに眠るさまざまな知恵や技術を現代の産業水準に合わせてルネッサンスし、海外の継続的な発展のために寄与していくことをライフワークとしている。現在は岡山県北部美作地域において地域活性化事業に従事しており、棚田再生を象徴とした農業振興、地域での生活基盤自給を目指した林業、雇用増加を志向する地域ビジネスの立案などを仕掛ける。
http://ueyama.shu-raku.jp/
https://www.facebook.com/taishibrian

KAI presents EARTH RADIO :  第3回 未来を創るニッポンの現場「岡山 美作」編

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