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未来を創るニッポンの現場
「岡山 美作」編 Part2
上山のエコツーリズム実現に向けて、
東さんが仕掛けたこと。

KAI presents EARTH RADIO
vol.010 StoryC-02

posted:2012.7.13  from:岡山県美作市上山地区  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  俳優・伊勢谷友介さんと放送作家・谷崎テトラさんが、
“未来を作る日本の現場”を求めて、さまざまな土地を巡ります。
コロカルでは、この「EARTH RADIO」を“読む”ための、連動連載をお届けします。

editor's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力

credit

撮影(メイン・プロフィール):
Suzu(fresco)

棚田deセグウェイ? 近未来の田んぼの姿。

伊勢谷友介さんと谷崎テトラさんによるウェブラジオプログラム
「KAI presents EARTH RADIO」。
岡山県美作市上山地区の棚田再生プロジェクトを伝える第2回は、
現地で活動する東大史さんに、具体的なプロセスを聞いた。

上山地区には8300枚、100ヘクタールに及ぶ
「上山千枚田」と呼ばれる棚田がある。
しかしそのほとんどが耕作放棄地。すべての田んぼが再生され、
水を湛えれば、さぞかし美しい風景になるのは間違いない。
それにはまず、棚田に水を供給する水路をメンテナンスしなくてはならない。
しかしこの水路は山の斜面に5kmほど張り巡らされていて、
高齢化が進んだ集落には、長い水路を維持することは大変だ。
そこで東さんは、負担に感じているその水路に対して、
経済的な価値を見いだせれば、
水路をメンテナンスするモチベーションにつながるはずと考えた。

「水路は、山のなかの自然豊かな場所を通っているので、
水路をめぐるエコツーリズムをやりたいと思ったんです。
ただ5kmもあるので、歩くと結構時間がかかってしまって大変。
そこで目をつけたのがセグウェイです。
アウトドア仕様のセグウェイなら坂道でもグイグイ登ってくれます。
音も静かなので話も聞こえるし、水の音や鳥のさえずりを邪魔しない。
里山を感じるにはいい乗り物です」

「棚田deセグウェイ」。キャッチーさもあるし、響きもいい。
さらに、セグウェイが電気で動くということに大きな意味があった。
中山間地域は自然エネルギーの宝庫で、
発電のポテンシャルがたくさんあるからだ。

「棚田に水を引いてくる水路を利用したマイクロ水力発電を利用します。
設備利用率が高く出力変動が少ないところがメリットです。
羽根が水のちからで螺旋に回る螺旋式などを使えば、
それほど大きな水量がなくても安定して発電できます。
太陽光やバイオマスに比べても24時間365日発電可能。
ここで発電した電気でセグウェイを動かそうと思っています」

現場で発電した電気を現場で使えば一石二鳥。
電気で駆動するセグウェイに乗って、
その電気の源である水路を見に行く。
そうして水路が整備されれば、棚田再生につながる。
完結したエコツーリズムの完成だ。

水路の最上部。かなり森の奥地にまで張り巡らされている。その分、自然が豊か。

エコツーリズムで上山にひとを呼びたい。

この集落にはガソリンスタンドなんてもちろんなく、
外から買ってくるか、まちまでかなり降りていかなくてはならない。
だから自然エネルギーを使って発電できれば、
中山間地域が救われることがある。

「例えば車を動かすのに、ガソリンから電気に移ってきていますが、
自然エネルギーで発電が可能になれば、
地域で電力自給できるようになります。
中山間地域はその可能性が高く、地域にお金が落ちるようになる。
特にこういった地域は移動手段が車しかないことが大きなネックなので、
早急に変えていきたいです」

さらに、中山間地域に限らず、農業機械はガソリンに依存している。
そこにも電化を推進してみる。
東さんの頭のなかは無限に未来が広がっているようだ。

「昔は、牛とか馬が当たり前に飼われていて、
それに農具をつけて畑を耕していましたよね。
それならば、その農具を電動のハイテクな機械にして牛にひかせてみる。
牛と電気の、新しいハイブリッド。
日本の伝統的な技を活かしながら、最先端の技術を活用する。
そういうネタをどんどん研究していきたいです」

このように、中山間地域が抱えているさまざまな問題。
そこに東さんは「棚田deセグウェイ」を広告塔として切り込む。
だからまずは上山のエコツーリズムの実現が急務だ。

「これからこの上山の棚田に遊びに来てもらいやすいように、
エコツーリズムセンターをつくろうと思います。
現在『いちょう庵』というカフェバーがありますが、
そこを拠点となるように整備したいと思います。
宿泊できる『農山村シェアハウス』をつくり、棚田で農作業体験、
地元住民との交流でおじいちゃんの知恵を受け継ぐ場所などを
提供したいですね。
大学の研究員なんかも泊まり込みで
フィールドワークできるようになるといいですね」

この取り組みをREBIRTH PROJECTの「元気玉プロジェクト」で
支援することになった。
まずはひとがたくさん来て、棚田の現状を知る。
棚田でセグウェイを走らせることに面白みを感じる人が集まれば、
この地域から未来へと続く展開が生まれそうだ。

ガソリンを使った機械で田植え。これが自然エネルギー化する日も近いか。

4〜10ワットの発電が可能な螺旋式ピコ水力発電機「ピコピカ」を使用してデモ発電中。

profile

TAISHI AZUMA
東 大史

「日本を環境立国として、世界のお手本にする」ことを目標として、日本のローカルに眠るさまざまな知恵や技術を現代の産業水準に合わせてルネッサンスし、海外の継続的な発展のために寄与していくことをライフワークとしている。現在は岡山県北部美作地域において地域活性化事業に従事しており、棚田再生を象徴とした農業振興、地域での生活基盤自給を目指した林業、雇用増加を志向する地域ビジネスの立案などを仕掛ける。
http://ueyama.shu-raku.jp/
https://www.facebook.com/taishibrian

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