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連載

佐渡島に古民家宿がオープン。
〈ぐるり竹とたらい湯の宿〉
が始まる。伝泊 vol.3

リノベのススメ
vol.150

posted:2017.7.29  from:新潟県佐渡市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。

writer profile

YASUHIRO YAMASHITA

山下保博

1960年鹿児島県奄美大島生まれ。芝浦工業大学大学院修了後、1991年に独立。都市の狭小住宅にてar+d世界新人賞グランプリ、英国LEAF Awards3部門最優秀賞、日本建築家協会賞、日事連建築賞、ARCASIA金賞受賞ほか多数。2013年に「一般社団法人 地域素材利活用協会」を設立し、さまざまな地域の素材や構法を再編集することにより仕事を生み出し、まちづくりに発展させる地域支援活動も行っている。2015年、多様な社会のニーズに応えるための奄美出身建築家のプラットフォームとなる「奄美設計集団」を設立。阪神淡路大震災、東日本大震災の復興を支援するNPO法人理事長、九州大学非常勤講師も務める。

『リノベのススメ』執筆陣はこちら。週替わりで担当していただきます!

こんにちは。一級建築士事務所アトリエ・天工人の山下保博です。
第1回目第2回目を読んでいただいた方には、
僕の故郷である奄美大島の魅力を十分にお伝えできたでしょうか?(笑)
伝統的、伝説的な古民家を探し出して、改修することで宿泊施設として蘇らせ、
さらに地域のコミュニティとして開放する仕組みを〈伝泊〉(でんぱく)と名づけて
活動しています。これまで奄美で5棟の古民家を宿泊施設としてオープンしました。

新潟・佐渡島で伝泊が始まった理由

今回オープンした伝泊・佐渡の〈ぐるり竹とたらい湯の宿〉の外観。どんな宿になったのかは記事後半で。

第3回では、スタートしたばかりの佐渡島の伝泊について、お話します。
新潟県の佐渡島は、沖縄本島を除くと日本で一番大きな島です。
面積は東京都23区がすっぽりと入ってしまうほどの大きさ、人口は約57000人です。

歴史的には流人の島として日蓮聖人や世阿弥などが足跡を残した地であり、
江戸時代からは金山が大いに栄えました。
日本の地形の縮図であるとも言われる豊かな自然、
能や民謡〈佐渡おけさ〉、郷土芸能〈鬼太鼓〉(おんでこ)など
多彩な伝統文化も伝わる島です。

僕が初めて佐渡を訪れたのは2016年の12月のこと。
真冬でしたから、「寒いところに来たなぁ……」という印象でした。

佐渡と言えば金山で有名。史跡〈佐渡金山〉。

伝泊・佐渡スタートのきっかけは、若い建築家の仲間、
〈andfujiizaki 一級建築士事務所〉(以下アンドフジイザキ)の
藤井千晶さん、井崎恵さんとの出会いです。

藤井さん、井崎さんは、東京に事務所を置く建築家ですが、以前から佐渡の空き家調査や、
廃校になった小学校の利活用プロジェクトで佐渡と東京を行き来していました。
すっかり佐渡に魅了されていたおふたりから、
佐渡でも空き家を活用した伝泊ができないかと相談されたのが始まりですね。
そして3人で、佐渡のいろいろな空き家のリサーチを始めたのが今年の2月でした。

アンドフジイザキのふたりと佐渡の空き家をリサーチして歩いた。(photo:2017 Morto Yoshida)

伝泊・佐渡 7つの条件

奄美の伝泊と同じく、コンセプトは50年以上経った佐渡島の伝統的な建築が対象です。
僕たちが考える佐渡島の伝統建築とは、どのようなものかを7つに分けて紹介いたします。

1 集落によって異なる建物配置

佐渡では、漁村部、農村部、町屋によって習慣や生活がさまざまであるが、
その違いが建物の配置に表れており集落ごとに特徴のある建物配置になっている。

2 オマエ(御前)のある平面構成

神棚があり、ハレの日などの宴会に使われた。囲炉裏や天井は
吹き抜けになっている場合が多く、家の中心にあたる。
普段は居間として使われている場合が多い。

3 地産材を大らかに使った骨組みと意匠

あてび、ケヤキ、地松などの佐渡の木材が多用されている。
大断面の大黒柱や貫が露出されているのも特徴のひとつ。

4 土間の空間

入口から裏口まで土間が続く通り土間。町屋の長屋にも多く見られる。

5 昔ながらの屋根葺き材

光沢を持つ黒い能登瓦、薄く割った木羽を何枚も重ね、
その上に石を置いた木羽葺石置屋根、そして茅葺きなどがある。

6 木張りの外壁と杉の根元部分の曲線を生かした破風

海風から家屋を守るため、多くの建物は、外壁は縦板張りである。
屋根の「へ」の字部分である破風(はふ)は木の根元部分を生かし、
棟にむかって太くなっているなどの特徴が見られる。

7 自然から耐える知恵(防風林、竹柵)

周囲を海に囲まれ、大佐渡小佐渡の山からの吹き下ろしの風も受ける佐渡島では、
防風林や竹柵が集落や家の周囲に備わっている場合が多い。

佐渡の南部には、宿根木(しゅくねぎ)という地域があって、
重要伝統的建造物群保存地区に指定されていて、独特の古いまち並みが保存されています。
しかし、そういった保存地区以外の家やまち並みも本当に美しいんです。
佐渡の人たちが、集落のなかで協力しながら大切に守ってきたのだなあということが、
非常によくわかりました。

宿根木のまち並み。

元衣料品店の空き家を改修

そうしたリサーチのなかで僕たちが心惹かれた場所のひとつに、
松ヶ崎という集落があります。「屋号の里」として知られていて、
それぞれの家は「源太郎」さん、「権右エ門」さんなどと今でも古い屋号で呼び合っています。

まち並み再生の取り組みにより統一感ある外観となっており、
家ごとに屋号の看板をつくったり、漁具や古民具などを玄関の外に飾ったりと、
住民が一体となってさまざまな取り組みが行われている集落のひとつです。

松ヶ崎の集落。

屋号の名前も看板の形も個性豊かで見応えがある。

今回の伝泊に選んだのは、築100年以上といわれる「カネモ」という屋号の民家で、
以前は衣料品店として使われたこともある建物です。内部は非常に状態が良く、
広さもプランも申し分ない。
お店屋さんらしく玄関横にはかわいらしいショーウィンドーが付いています。

空き家でもショーウィンドーに小物が飾られている。(photo:2017 Morto Yoshida)

何よりもすばらしいのは、カネモの建物の管理を任されている本行寺の住職さんをはじめ、
向かいの海産物加工販売〈菊池商店〉のご主人など集落の方々、
周辺に在住されている元地域おこし協力隊のメンバーや、行政の方も含めて、
多くの人たちが伝泊を歓迎してくれ、協力を申し出てくれたことです。

アンドフジイザキとアトリエ・天工人で共同で「カネモ」を借り、
伝泊として運営していくことが決まりました。

佐渡の竹を使った工芸ワークショップ

奄美の伝泊と同じように、建物をできるだけ元の姿に戻しながら、
水まわりなどは快適に使えるように清潔で
使い勝手の良いものに変えていくというポリシーのもとに改修が始まりました。

僕が全体のディレクションを行い、アンドフジイザキのふたりが、
女性らしい感性で細部まで気配りの行き届いた図面を描き、
何度も佐渡と東京を行き来して、僕たちと現地の間の調整もしてくれました。
工事中は、多くの集落の方がボランティアで作業を手伝ってくださったり、
毎日のように工事の様子を見に来てくださったり。

大工さんや左官屋さんと、ひと仕事終われば宴会になることも。

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大きな味噌樽が湯船に!?

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完成した宿の名前は、伝泊〈ぐるり竹とたらい湯の宿 カネモ〉。
実は、裏庭に露天風呂をつくったのです。
それが、名前の由来になった、ぐるり竹とたらい湯。
はじめは、佐渡の名物である「たらい舟」のたらいを湯船にできないかと、
ほうぼうを探したのですが、どうしても適切なものが見つからない。
そんなとき、松ヶ崎の集落の古くから醤油づくりをしていたという建物で
味噌樽が見つかり、それを譲り受けて湯船にしました。

宿の名前にもなっているたらい湯。集落内の廃業となった味噌屋さんに残っていた「味噌樽」を利活用してお風呂をつくります。

味噌樽は箍(たが)が古くなっていたので、宿根木の職人さんのもとに運ばれ、新しい箍がつけられています。箍も地元でとれた竹を割いてつくられます。

そして、ぐるり竹とは、湯船を囲む竹柵のことです。
佐渡では昔から良質な竹が取れ、塀やさまざまな加工品として利用されてきました。
しかし昨今では竹の利用が減り、竹林は荒れて問題となっているそうです。
それで、佐渡の竹を活用した竹柵を伝泊でも使おうというアイデアが生まれました。

改修工事が進む6月中旬、アンドフジイザキのふたりと
地元のボランティアの方が中心となって、竹柵づくりのワークショップを行いました。
地域の方々にも、宿づくりに関わっていただき、関心を持ってほしいとの思いからです。

講師は、佐渡バンブークラブのカルロス・エンヒケさん。
ブラジル出身で佐渡の竹に魅せられて、佐渡在住16年になるカルロスさんの指導のもと、
集落の竹林から竹を切り出し、炭で汚れを洗い、縦に割いて節を落とし、
大きな平面に編んでいきました。

竹ワークショップの講師、カルロス・エンヒケさん。

エンヒケさんの指導のもと、力を合わせて竹を編みます。

ワークショップ終了後に、大工さん、左官屋さんに、地域の人々と「ぐるり竹」のなかで。

佐渡の材料で、オリジナル漆喰壁

またワークショップでは、〈いごねり〉のかすを使った漆喰の壁塗りも行いました。
「いごねり」というのは、乾燥した海藻のイゴ草を煮溶かし、
よく練ったものを冷やして固めてつくられる佐渡の郷土料理です。
食べ方はところてんと似ています。
そのかすとして捨てられている残った部分を漆喰に混ぜてみたらどうなるだろう、
という実験的試みです。調べたところ、佐渡では昔はイゴ草を
壁の隙間などに埋める材料として使っていたそうなのです。
それで、島の海産物加工会社から、材料を提供してもらいました。

ワークショップでは、壁の新建材(木目調のプリント合板など)を剥がすところから。

いごねりのかすをミキサーで細かくし、漆喰に混ぜて塗ってみると、なんとも味わいのある風合いになった。

こうして、本当にさまざまな人の協力と応援を得て、
〈ぐるり竹とたらい湯の宿〉が完成しました。

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すてきな宿に大変身!

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食ドコロ・呑ドコロ。広々とした空間でゆっくりと過ごせる。

2階の廊下。呑ドコロから吹き抜けになっている。

広々とした寝ドコロ。2階にはベッドを置いたスペースもある。

読ドコロ。

脱ドコロに浴ドコロ。水まわり空間は清潔に、現代的に。

ぐるり竹とたらい湯も完成。

1階と2階をあわせて約150平米を一棟貸し。ゆったりと過ごせる。

古き良きまち並みを次の世代へつなげる

お披露目会には延べ100名ほどの方が見学に訪れ、
生まれ変わった「カネモ」の中も外もご覧いただきました。たらい湯に歓声があがり、

「あの空き家がこんなにすてきな宿になるとは」

と驚きの声がたくさん聞かれました。

お披露目見学の後は集落の路地散策を行い、
佐渡島最後の鍛冶屋と言われる〈重松〉さんや
日蓮聖人が腰かけたといわれる石などを巡り、
最後は宿に戻り、集落の皆さんとお祝いしました。

松ヶ崎は、順徳天皇や日蓮聖人、世阿弥がここから上陸したと伝えられる。

日蓮聖人がその下で一夜を過ごしたと伝えられる「おけやき」。松ヶ崎のまち並みの中程にある。

松ヶ崎の近くの海岸。このあたりは、前浜海岸と呼ばれる本州に面した海で、比較的穏やかと言われる。

お祝いの様子。

佐渡には、今年度中にもう1棟オープンしたいと思い、いま次の建物を調査中で、
最終的には佐渡島全域に5~6棟を目指しています。

新潟港から佐渡の両津港まで、佐渡汽船のカーフェリーで2時間半、高速船で約1時間、
両津港から伝泊・佐渡〈ぐるり竹とたらい湯の宿 カネモ〉までは、車で約50分。
東京からは、がんばって早起きして新幹線に乗れば、午前中には佐渡に着きます。

新潟港からジェットフォイル(高速船)で約1時間。

たくさんの人が佐渡を訪れて、伝泊で古き良き時代の雰囲気を味わいながら
ゆっくりとした時間を過ごしていただくことによって、
空き家が生き返り、島の魅力や伝統が次の世代につながっていくことが、
僕たちの願いです。

伝泊・佐渡の暖簾は、トキをイメージして朱鷺色に。

information

map

伝泊・佐渡「ぐるり竹とたらい湯の宿 カネモ」

住所:新潟県佐渡市松ヶ崎1006

ご予約はウェブサイトで受け付けています。

URL:http://den-paku.com/sado/

profile

andfujiizaki 一級建築士事務所 
藤井千晶/井崎恵

大学の同期2人で東京で建築設計事務所を営む。佐渡在住の友人に誘われ佐渡の増え続ける空き家調査に来島を続けている。「伝泊」活動を佐渡に呼び込み佐渡での展開を目指す。

http://andfujiizaki.jp/

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